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勇者の独白 外伝ってことらしいダイジェスト

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 コレは勇者の敗北の物語だ。

 勇者とは異世界から召喚された戦士に与えられる名前である。

 大きな魔力を持ち、魔王を倒すことが出来る希望として勇者は召喚される。

 助けるべきは、魔王によって苦しめられる人々だ。

 召喚された勇者は、それが絶対の正義だと信じていた。

 しかし与えられた使命で得た、わずかばかりの力で何かをなそうとしても何も出来ない。

 勇者は正義だったのか。

 悪だったのか。

 本当のところ答えもない。

 ただ勇者は魔王と戦い、勝利しようが敗北しようが、そのどちらでもひどく後悔が残ると気がついたのはいつからだっただろう?

 それでも別の答えを探しながら、勇者は魔王の前に立つ。

 聖剣を握り締め、苦楽を共にした仲間達と肩を並べて。

 決して勝てない相手に戦いを挑んだ。

 そこにいたるまで選べる選択肢などほとんどなかったのだと気がついた時にはもう何もかもが手遅れだった。

 それなのに同郷のある魔法使いは、とんでもない方法で新しい選択肢を用意した。

 魔法使いは普通では決して作り出せない未来の形をぽんと放って勇者に見せたのだ。

 そんなありえない物に手を伸ばした時、勇者は勇者でなくなった。

 根元ががたがただった心はすっかり折れて、すがって手を伸ばした。

 この時勇者は完全に敗北した。

 崩れる時は一気に崩れるもので、勇者がこの世界で手に入れた物は、勇者の名前と一緒にすべて跡形も無くなった。

 後悔はあったが、どうしようもなかった。

 ただその代償か、魔法使いはいなくなってしまった。

 事故の様なものだった。一瞬ですべてが変わってしまい。勇者にはどうしようもなかった。

 道しるべだと思っていたものはすぐになくなってしまう。

 この世界はどこまで厳しいのかと勇者は絶望した。

 だが同時に、絶望の中で世界が語りかけているような気がする。

 誰かの思惑であろうと無かろうと、結局はすべて自分で決めるしかないのだと。

 勇者は、今ある物を確認して、みっともなくてもやれるだけのことをやることにした。

 勇者をやっているうちに抱いた希望と、魔法使いから不意に手渡された力と手段。

 あるものを全部使って出来るだけのことをしてみようと。

 コレもまた他人の思惑に乗っているだけかもしれないと思わなかったわけではない。

 それでも最善だと考えたのは魔法使いは少なくとも、騙そうとだけはしていなかったはずだと勇者自身が感じたからだった。

 勇者は敗北し、異世界で勇者からただの少年に戻った。

 少年は自分の道を探し始めた。
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