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第47話 5人目の仲間

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 そういえば、フェリスはどうしているだろうか。
 ここ三日ほど、学校を休んでいるようで気になっていた。
 フェリスをいじめていたガイアルはもういない。
 だとしたら、風邪か? なんにせよ心配だ。

 俺は放課後に、寮のほうへ寄ってみることにした。
 この学校の多くの生徒は、寮に住んでいる。
 寮にもランクがあり、貴族用の高級寮から、平民用の安い寮まで様々だ。
 たしか亜人のフェリスは平民寮だったはず……。

 平民の女子寮には、何人か肉体関係のある女生徒がいるから、すんなり入ることができる。
 なんなら、寮母さんも若くてキレイだから何度か関係を持った。
 フェリスの部屋にいくのはこれが初めてだな。
 彼女の部屋を訪ねると、そこにはなにやら荷物をまとめるフェリスの姿があった。

「おいどうしたんだフェリス。学校に来ないから心配してきてみたが……これはどういうことだ……?」
「あ、レルギアくん……。って、ここ女子寮ですよ!?」
「女子とは仲がいいからな。俺は顔パスで入れるんだ。それより、この荷物はいったい……」
「えぇ……そんなセキュリティでいいのかな……。これは……その……うん」

 フェリスは言いにくそうな顔で、うつむいた。
 なにか事情があるらしい。

「実は……お金がなくて……学校をやめて実家に帰ろうかと……」
「そんな……」
「なんとかギリギリの学費で通っていたんですけど、実家の家業が倒産しかけていて……」
「なんとかならないのか……?」
「いろいろ事務局にもかけあってみたんですけど、これ以上は学費も待ってもらえなくって……」
「そうなのか……」

 亜人種は基本、あまり裕福ではないらしい。それには根深い差別意識なども関係しているとか。
 当然、フェリスも貴族ではなく、平民としてなんとかこの学校に通ってるうちの一人だった。
 平民は成績優秀だと、かなり学費も免除されるはずなんだがな。それに、寮の生活費も学校持ちなはず。
 それでもなお厳しいということは、かなり経済的に困窮しているのだろう。実家が倒産しかかっているということは、そうとうな厳しい状況に違いない。
 だがせっかく知り合ったツラのいい美人が、一人学校からいなくなってしまうのは残念だな。まだフェリスとはなにもイチャイチャしていないというのに……。
 それだけじゃない、純粋に俺は、この理不尽を許せなかった。

「よし、俺がなんとかしよう」
「な、なんとかって……そんななんとかできることじゃないと思います……」
「大丈夫だ、俺に任せておけ」

 俺はひとまず寮を離れ、理事長室に向かった。
 そして理事長と話をしたあと、再びフェリスの元へ。

「おいフェリス、なんとかなったぞ」
「れ、レルギアくん!? はやかったですね……。な、なんとかなったって……!?」
「理事長に言ってやったんだ。剣武祭で勝ったら、フェリスの学費を免除しろってな」
「け、剣武祭で勝ったら……!? そ、そんなの無理ですよ!」
「大丈夫だ。俺のチームに入れ。ちょうど5人目を探していたんだ」
「い、いくらなんでも剣武祭で勝つだなんて……」

 フェリスはまだ不安そうだったが、とりあえずこれで剣武祭までは学費を待ってもらえることになった。
 俺としても、ちょうどメンバーがそろったのでうれしい限りだ。
 だが、剣武祭で勝つといっても、俺が戦ったのではこれまた意味がない。
 これはフェリスの学費のことだから、あくまでフェリスが勝ってこそだと思うのだ。
 だから例によって、ライゼと同じようにフェリスも鍛えてやることにする。
 フェリスの力で勝てば、フェリスが学費を免除されることになんの問題もないからな。

「任せておけフェリス。俺が剣武祭までにお前を最強にしてやるから」
「あ、ありがとうございますレルギアくん……。ほんと、レルギアくんはなんでもできるんですね……」
「なんでもはできないさ。俺は俺にできることをやっているまでだ」

 その日はそのまま、フェリスの寮の部屋で一夜を共にした。
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