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第43話 忠臣

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 その後の話をしよう。
 あれから、当然ながらアルテミス王国とイデオット王国は崩壊した。
 どちらも国のトップは戦争犯罪者として捕まり、裁判にかけられ、正式に処刑が決まった。
 だが処刑までにいろいろと供述をしてもらったりしないといけないので、今はローゼンベルクの地下牢に拘束されている状態だ。
 それぞれの国民は、その土地に残るものや、他国に亡命するものにわかれた。
 当面の間、両国はローゼンベルクの傀儡国として扱われる。
 俺は、戦争をこちらの被害ゼロでおさめたことで、ローゼンベルク王から称賛を受けた。

「さすがは大賢者レルギア殿、みごとな働きぶりであった。おかげでこの国は救われましたな」
「いや、俺は当然のことをしたまでだ。ライゼの国が無事でなによりだ」
「そこでひとつ相談なのじゃが……」
「なんだ……?」
「実は、傀儡国とした二国だが、正直、統治をするのはイデオット王国だけで限界なのだ」
「まさか……」
「そう、ぜひアルテミス王国を、レルギア殿の統治下においてもらいたいという話だ」
「まじか……俺が、王……?」

 どうやら話はそういうことらしい。まあたしかに、いきなり2カ国ぶんの領地と民が増えても、統治するほうも困るというわけか。元の国のトップは全員処刑されるわけだしな。
 人員が足りないのも当たり前の話だろう。

「レルギア殿にはなにか褒美をと考えておったのだ。どうだろうか。アルテミス王国は大魔境からのアクセスも悪くない。レルギア殿にとっても、悪い話ではないだろう?」
「ああ……そうだな……」

 まあ、褒美といいつつ、体よく俺に押し付けたいというわけだな。
 だが、確かに俺にとっても悪くない話だ。
 国を治める立場となれば、当然、いろんなことができるようになる。
 まずは国中の女を孕ませるとか。
 国をつかって、大規模な研究や捜索ができるのも魅力だ。アイリをさがすきっかけになるかもしれない。
 だが、いろいろしがらみもあって面倒そうでもある。

「なあ、俺の国になるのはいいが、統治を他の者に任せたりするのはかまわないか?」
「もちろんだ。それに、国の名前もレルギアーノ王国に変えてもらってかまわない」
「よし、ならこの話を受けよう。今日からアルテミス王国はレルギアーノ王国だ」
「では、これで対等な立場となったわけだ。同じ王としてよろしく頼む。ライゼと婚約するということで、レルギア殿はすでに親戚のようなものだからな」
「ああ、国同士、いい関係を築いていこう」

 俺はローゼンベルク王と握手した。レルギアーノ王国国王として、最初の仕事だ。



◆◆◆



 だがもちろん、俺はまだ学生の身だ。普段は学校に通ったり、アイリを探したり、女を口説いたり、やることがたくさんある。
 とてもじゃないが、普段から王として統治をするのは無理だ。
 そこで、俺はかわりの人材を立てることにした。

「ロゼ!」
「わうん! なんでございましょう、主殿」

 俺が抜擢したのは、飼い犬のロゼだ。ロゼは犬でありながら、アイリのように人型になることもできる。
 確かフェンリル種もそういったことができるはずだ。まあ、ただの犬であるロゼにもできるんだから当然か。
 人型になったロゼは、長い白髪の、整った顔の中性的な男性だ。
 ロゼは頭も非常によくて、こういったことにはぴったりだ。

「じゃあ、あとはこの国のことをたのむ」
「承知しました」

 ロゼだけだと、いろいろ大変だから、補佐もつけることにする。

「トカゲ1号!」
「な、なんでございましょう! 竜王さま」
「世界の半分をやる」
「はい……?」
「冗談だ。国の半分だ。お前には、ロゼの補佐を頼みたい」
「か、かしこまりました! 自分でよければ、いくらでも!」

 もちろん、トカゲ1号も人型になるくらいならできる。人型になったトカゲは、緑の髪の細目の男性だ。
 しかしこうなると、いつまでもトカゲ1号じゃ不自然だな。

「おい、お前名前は?」
「滅相もございません。私などはただのトカゲ。名前など、恐れ多くもレルギア様のまえでは……」
「そうか、じゃあ名前をやろう。お前は今日からラクーンと名乗れ」
「ありがたき幸せ……!」

 ラクーンは跪いて、俺に忠誠を誓うポーズをとった。一瞬、ラクーンの身体が光ったような気がした。
 ラクーンも、ロゼほどではないが、非常に頭がいい。
 彼らに任せておけば、まず間違いないだろう。
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