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第17話 【豪運】のドッペル

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【Doppelgänger:4】


 
 俺の名はドッペル・ニコルソン。
 スキルは【豪運】。
 パーティーメンバーはカレンティーナという女ただ一人。
 ほんとうはもう一人、ジャクソンとかいう男がいたが、クビにしてやった。
 
 ジャクソンが抜けた代わりに、新しく別のパーティーメンバーをつのることにした。
 掲示板を使い、待ち合わせることになった相手はミシェルという名の女だ。
 ミシェルは【魔法】のスキルを持っているらしく、かなり使えそうな女だ。
 まあ少々契約金はかさむが、金なんか問題にならない。
 なにせ俺のスキルは【豪運】だからな。
 金なんかギャンブルでもやれば一発だ。

 俺はさっそく、冒険者ギルドでミシェルと待ち合わせた。
 時間になってしばらく待つと、そいつは現れた。

「あなたがドッペルさん?」
「そういうお前は、掲示板で約束したミシェルか」
「ええ、そうよ。よろしくね」
「ああ、ドッペル・ニコルソンだ。よろしくな。こっちはカレンティーナだ」
「まずは、契約金をもらおうかしら」
「ああ、そうだな」

 俺はミシェルに契約金を手渡した。
 それから、パーティーメンバー登録を済ませ、俺たちは馬車を借り、クエストを受ける。
 さっそくクエストの目的地である嘆きの森へ行こうとすると、ミシェルは俺たちを引き留めた。

「ちょっと待って、少しまだ街に用事があるの。先に行っててもらえる? すぐに追いつくから」
「そういうことなら、いいだろう。わかった。先に行って、近くの村で待っていよう」

 少し不思議にも思ったが、まあいいだろう。
 俺とカレンティーナは、ミシェルを街に残し、一足先に嘆きの森へ向かった。
 馬車を丸一日走らせ、俺たちは嘆きの森の最寄りの村へ着いた。
 モッコロ村は小さな村だが、冒険者のために、一通りの設備はそろっている。

「ミシェルが来るまで、酒場にでもいくか」
「そうね」

 俺とカレンティーナは酒場へと向かった。
 酒場に入ると、こんな辺境の村にも関わらず、中は多くの冒険者でにぎわっていた。
 酒場の店主は、俺たちの顔を見るやいなや。

「おお、また冒険者さんたちかい。今日はやけに冒険者さんが多いねえ。こんななんにもない村だってのに。どうしたってんだ」

 たしかに、酒場には合計で4組もの冒険者が待機していた。
 店主の言葉につられて、酒場にいた冒険者たちの視線が一気に俺に集まる。
 そのときだった。
 冒険者たちが一斉に、声を上げた。

「あーーーーー!? お、お前はドッペル……!? ドッペルじゃねえか!?」

 見知らぬ冒険者たちは異口同音に俺の名前を呼んだ。
 は……?
 どういうことだ?
 こいつらなんか見たこともねえんだが……。
 なんでこいつらは俺の名前を知っていやがる。
 いったいどういうことなんだ。
 まあ、俺も知らぬ間に有名冒険者になっていたってことなのか……?
 
 冒険者のうちの一人が、俺の目の前までやってきて、するどい目つきでガンを飛ばしてくる。
 いったいなんのつもりなんだろうな、こいつは。
 身の程しらずめ、この俺様がドッペル・ニコルソンだと知っておきながら、そんな態度をとるなんてな。
 
「おいてめえ、ドッペル。なんでお前がこんなところにいるんだよ」
「なんでと言われてもな……。俺はただ嘆きの森へクエストにやってきただけだが?」
「てめえごときが嘆きの森だぁ……? 俺に追い出されたショックで気でもふれたか?」

 さっきからいったいなんなんだこいつは……。
 礼儀というものを知らないようだな。

「おい、てめえこそなんなんだ。俺はお前なんか見たこともない。それなのに、いきなり突っかかってきやがって。死にてえのか? まず名を名乗れよ」

 俺は思い切りドスのきいた声で、そいつをにらみつける。
 するとそいつは困惑した感じで。

「はぁ……? てめえドッペルのくせに……! このバッカス様のことを忘れただとぉ……!?」
「忘れたもなにもバッカスなんていう馬鹿そうな名前のやつに覚えはないがな? そもそも初対面だろうが」
「この野郎ドッペルのくせに舐めた口ききやがって、死ねええええ!」

 バッカスと名乗ったそいつは、いきなり俺に殴りかかってきた。
 だが、俺はそいつを受け止め、逆に殴り返す。

 ――ドガ!!!!

「俺にかかってくるとはいい度胸だな」
「ぐはぁ……! この……ドッペルのくせにぃ……」
「死ねコラ!」

 俺はバッカスの腹を思い切り蹴り上げる。
 そして倒れたバッカスの頭をゴリゴリと踏みつけた。

「はっはっは! この豪運のドッペル様に敵うとでも思ったか間抜けめ!」

 俺は【豪運】スキルのおかげで、最強のステータスを持っている。
 もともと、俺は生まれつきステータスは低かった。
 俺のステータスは最初オール1で、それはレベルをあげても変わらなかった。
 しかし、【豪運】スキルによって手に入れたドロップアイテム『ステータスの種』を使えば、ステータスを上げることが出来たのだ。
 ステータスの種というのは、モンスターから手に入るドロップアイテムで、それを食べれば各ステータスが5アップするというもの。
 通常ならなかなか手に入らないレアドロップアイテムだが、俺は【豪運】のおかげで、それを何個も手に入れることができた。
 そのおかげで、俺はステータスを1001まで上げてある。
 なので、並みの冒険者が俺に肉弾戦で勝とうなど100年はやいのだ。
 
「ぐぅうう……ドッペルのくせにぃ……このバッカス様が負けるなんてぇ…………」

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