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第9話 芸術は爆発だ
しおりを挟む俺たちはダンジョンへとやってきた。
さっそくスキルの組み合わせを試してみるためだ。
「それで、なんのクエストを受けたんだ?」
拡大が俺にきいてくる。
「これだ。ハムゴーレムの討伐……。適当に選んだからな……」
ハムゴーレムというのは、その肉体がハムでできているゴーレムのことだ。
身体の外殻は通常のゴーレムと同じく、硬い岩でできている。
だが、その外殻をはがすと、中にはジューシーなハムが詰まっているという生き物だ。
「ちょっと待ってよ! ハムゴーレム!? そんなの絶対無理だよ!」
爆発が大声を上げて、今にも泣き出しそうな顔をする。
「おい、あきらめるな。まだなにも始まっちゃいない」
「だ、だってハムゴーレムだよ!? 僕たちろくなスキルももってないのに! せ、せめてゴブリンとかならまだましだけど……。僕たち全員ステータス1で、しかもゴミスキルなんだよ!? 死んじゃうよ!」
「おい、俺のくせにびびりすぎだぞ。大丈夫だ。俺たち三人ならな。力を合わせよう」
「なにを根拠に……!」
「俺と拡大は、二人でチーズギューを5頭も討伐している。三人でかかれば、ハムゴーレムも余裕だ」
「うぇぇぇ……信じられないよぉ……僕もう帰りたいんだけど……」
「まあ任せておけ」
俺たちはダンジョンの中を進んだ。
すると、目の前にゴブリンの群れが現れた。
「ゴブゴブ……!」
「うぇえええええんゴブリンだあああああ! 絶対僕たちじゃ無理だよ! 逃げようよーーーーー!」
爆発がなにやら騒がしい。
ここは爆発を安心させるためにも、俺と拡大でなんとかしよう。
「よし、いけるな? 拡大」
「もちろんだ」
「おりゃ!」
俺はゴブリンの群れに向かって投石を放った。
ゴブリンたちは、一瞬警戒をしたものの、俺が投げたのがただの小石だとわかると――
「ゴブゴブ……くぷぷ……」
ゴブリンたちは笑いを漏らして、余裕の表情だ。
これは完全に俺たちのことをなめているな。
ゴブリンは知能がそこそこ高く、相手の強さをはかることにも長けている。
俺たちに対して、ステータス的に勝っていることを自覚しているのだろう。
小石なんかでダメージを負うはずはないということも理解している。
だから、それゆえに、ゴブリンたちは小石を避けない――。
ゴブリンたちは余裕の表情で、俺たちをあざ笑うように、突っ立っている。
完全に舐めきっているから、反撃してこようともしない。
ただ飛んでくる小石を見て笑みを浮かべているだけだ。
「馬鹿め」
ゴブリンたちの目の前に、小石が飛んでくる。
小石がゴブリンたちに直撃するその瞬間――。
「拡大――!!!!」
拡大が、拡大を放つ。
小石は、一瞬にして巨大な岩に変身した。
「ゴブ……!?」
「……!?」
ゴブリンたちはいきなり目の前に大岩があらわれて、ものすごく驚いている。
焦りの表情を浮かべるゴブリンたち。
ゴブリンたちはなんとか逃げようと思うが、もはやそんな猶予はない。
逃げられないなら防御を……と思い、ゴブリンたちは腕を前にやる。
しかし、防御をしても、迫りくる大きな岩の前では無意味だ。
ゴブリンたちは大きな岩につぶされてしまう。
――ズドーン!
――ズチャ!
「ふぅ……よし、ゴブリン討伐完了!」
「す、すごい……」
ほうけた顔で驚く爆発。
俺と拡大はハイタッチだ。
「な? ゴブリン程度なら余裕だろ? ここにお前の爆発も加われば、ハムゴーレムくらいへっちゃらさ」
「うぅ……確かにそうかもしれないけど……不安だなぁ……」
「まあ、出番が来たらいうから、それまでは俺たちに任せておけ」
俺たちは順調にダンジョンを進んだ。
現れるモンスターは、俺が投石して、拡大して、蹴散らした。
そしてついに、ダンジョンの奥地にて、ハムゴーレムが現れた!
「ゴゴゴゴゴゴゴ!!!!」
「きたぞ、あいつだ!」
「ひえええええええ! 僕もうやだよぉ……!」
ハムゴーレムの体内はジューシーなハムが詰まっている。
だがハムゴーレムの表皮はゴツゴツとした岩の塊だ。
もしかしたら、爆発スキルでなんとかなるんじゃないか?
「なあ爆発よ、ゴーレムって岩でできてるよな? ゴーレムの肉体を爆発させたりはできないのか?」
「残念だけど、それは無理だね。生きて動いている生物は爆発できないんだ。まあ、ゴーレムが生物かどうかは疑問だけどね。学者にはゴーレムは非生物だっていう人も多いし……。だけどとにかく、ゴーレムを直接爆発はできないね」
「そうか、じゃあ。アレをするしかないな」
俺は投石スキルで小石を生成した。
そして、それをゴーレム向かって投げつける……!
「よし拡大だ!」
「おう!」
投げつけた小石を、拡大が拡大スキルで拡大する。
小石は空中で、巨大な岩に変身した。
そして巨石がゴーレムに向かって飛んでいく。
巨石はゴーレムに直撃する――!
だが、ゴーレムの外骨格もまた、巨大な岩でできている。
しかもゴーレムの外殻は特殊な素材らしく、かなりの堅さだ。
――ガキン!
岩はゴーレムの表皮に直撃したが、致命傷にはならない。
ゴーレムの表面を少し削り取っただけだ。
やはり、爆発が必要だ。
「おい爆発、次はお前のスキルで岩を爆発させてくれ。岩がゴーレムにぶちあたったその瞬間をねらって、爆発させるんだ。いいな?」
「う、うん……わかった。やってみるよ」
「よし……! えい……!」
俺はもう一度投石を放つ。
そして拡大が石を岩に変える。
大きな岩は、再びゴーレムめがけて飛んでいく。
「今だ!」
「えい! 爆発!」
爆発が空中に向かって手をかざす――
すると、
――ドカーン!!!!
大きな岩はゴーレムにぶつかると同時に、爆発した!
それなりに巨大な岩が爆発すると、かなりの威力だ。
爆風がダンジョンの中に吹き荒れる。
爆発した岩の破片がゴーレムに突き刺さる!
見事に、爆発のおかげで、ゴーレムに大ダメージを与えた!
ゴーレムの外骨格は一部が剥がれ落ちて、中にあるハムが見えてしまっている。
くぅ~ジューシーでおいしそうだ。
「よし! もっといくぞ!」
俺はさらに投石をつづけた。
今度は3連続で投石だ!
「拡大!」
「爆発!」
三連続で爆発する巨石が、ゴーレムに降り注ぐ。
――ドーン!
――ドーン!
――ドーン!
「ゴオオオオオオオ!!!!」
ゴーレムは爆発に飲まれて、そのまま絶命して、地面に倒れた。
「やったぁ……!」
「すごい、本当に僕たちだけでゴーレムを……」
「さすが『俺』だな」
それから、三人でハムを切り取って、ダンジョンの外へ運び出した。
ゴーレムの外骨格は冒険者ギルドが買い取ってくれた。
余ったハムは、みんなでぽんぽこ堂に持っていって、またみんなに振舞った。
ジューシーなとれたてのハムは絶品だった。
以前のチーズギューのときにとれたチーズが余っていたので、それと一緒にいただいた。
チーズとハムを堪能した俺たちは、食堂を後にする。
すると、見覚えのある顔の人物が歩いているのを見かけた。
ていうか、俺だ。
そう、なんとさっそく4人目の俺を発見したのだった。
「おい、あれ……あきらかに俺だよな?」
「ああ、あいつもドッペル・ニコルソンだろうな」
「話しかけるか? あいつも仲間に入れよう」
「だけどおい、なんか変だぞ……?」
「変……?」
「あいつ、俺のくせに女を連れて歩いていやがる…………ありえない…………」
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