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第20話 列車で行こう
しおりを挟む「では、ルキアール王国へ線路をひいて行きます」
私は何人かの作業員(主にゴブリンたち)を中央の広場に集めました。
今頃ルキアール王国では、リシアンさんたちがこの森に向かって線路をひき始めているころでしょう。
こちらもぼやぼやしていられません。
「エルキアさま、我らにお任せください! すぐにルキアール王国まで開通させてみせますよ!」
ゴブリン現場監督のゴブマッソが威勢よく言います。
頼もしいですね。
今ではゴブリンたちは優秀な労働力です。
「まずは線路を作っていきますね」
木材や鉄の調達は、既にルキアール王国でやった時と同じ方法で進めています。
アイアンスライムの養殖場も作りました。
アイアンスライムの管理は、モフモフさんたちに任せてあります。
農業のネオエルフ。
工業のゴブリン。
畜産のモフモフさん。
バランスのいい国作りができていますね。
「作成台・設置!」
作成台には、大量の木材と鉄の入った無限収納庫を繋ぎます。
「これで、レシピを線路に設定して……っと」
あとは自動的に線路が生成されます。
ですが線路を並べていくのには人手がいります。
「ではゴブリンさんたち、ルキアール王国へ向けて線路を敷いていってください!」
「了解です! よし、お前たち……出発!」
ゴブマッソの掛け声で、ゴブリンたちは統率のとれた手早い動きで働き始めます。
これは思ったよりも時間がかからないかもですね……。
私は私で、その間にやることがあるので、あとは任せましょう。
◇
そろそろ森の中に空き地が無くなってきました。
なので森自体を広げて、世界樹のまわりに空き地をつくろうと思います。
「お願いできますか? ユシル」
「ママのお願いなら、なんでもやりますよ!」
私はユシルを抱っこし、空中浮遊で宙に浮きます。
そして森の一番外側の木から順に、場所を移動してもらえるように頼んでいくのです。
ユシルは世界樹の精霊ですからね、木の妖精に働きかけることができます。
私が木の妖精に語り掛けるのとは、さすがに効力が違います。
「ママ、みんな快く聞き入れてくれましたよ!」
「それはよかったです、ありがとうユシル」
この調子で森を広げていけば、十分な国土を確保できるでしょう。
あとは追加の住居ですね。
ルキアール王国から沢山人がやってくるので、それに備える必要があります。
以前やった要領で、家を沢山建てていきます。
それから、ホテルや市場のような主要施設も……。
あとは追加の農場も。
そんなことをしていると、あっという間に時間が経ち……。
いよいよ線路が開通しました。
これで列車を使って、両国間をすぐに行き来できるようになります。
◇
「リシアンさん、お久しぶりです」
「シルヴィ……え、エルキアさん。お久しぶりです」
さっそく列車を使って、リシアンさんにエルムンドキアまで来てもらいました。
他にも何人か視察に、そしてこちらからはいくらかの物資を進呈しました。
「どうですか、乗り心地は」
「快適です。さすがエルキアさんです」
「そうですか。ではさっそく、希望者をエルムンドキアに移住させる手配を」
その日のうちに、数百人規模での移民が到着しました。
これで、ルキアール王国の食糧事情もだいぶ改善しそうです。
「では、彼らにはこちらで作物を作ってもらい、それをルキアール王国にお送りする、という形で」
「ええ、それで結構です。よろしくお願いします」
こうして我がエルムンドキアはさらなる人民を獲得し、国力の増強に成功しました。
一方でルキアール王国は増えすぎた国民を減らし、さらには貿易路を会得することで、食糧事情の改善と、国力の回復に向けて歩き出しました。
私も、ルキアール王国の進歩を喜ばしく思います。
リシアンさんは、これによってさらに忙しくなりそうなので、しばらくは会えそうにないですね。
私もやることがまだまだあるので、これからはしばらく、お互いに頑張る日々が続きそうです。
◇
ルキアール王国から列車で到着した移民たちは、エルムンドキアの姿を見て驚きました。
「なんだここは……森の中にこんな王国が……」
「ゴブリンにエルフ、さらには羊人間までいるぞ! 凄いな……」
「ありがたい。こんなに広大な緑の大地を拝める日が来るなんて……!」
みなさん上手くやっていけるといいのですが……。
幸い、ゴブリンたちに嫌悪感などはなさそうです。
かなり人間と変わりない見た目をしているからでしょうか。
最初驚きこそすれど、すぐに打ち解けました。
そして数週間後には最初の作物が収穫でき、ルキアール王国に送ることができました。
「よかった……これで祖国の人々が飢えずにすむ」
「エルキアさまには感謝しかないな……」
「俺はもう祖国に帰らずにこの森に骨を埋めることにするよ。なんたって、居心地がよすぎる」
移民のみなさんにもこの森を気に入ってもらえて、私も嬉しいです。
これで一度軌道に乗ったので、しばらくこの国は安泰ですね。
まあ、不意に大きな問題が起こらなければ、ですが――。
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