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第14話 【アラン側のお話】
しおりを挟む僕はいつかジャスティスに「ざまぁみろ!」と言ってやりたかった。
あのジャスティスが、僕に嫉妬して、追放したことを後悔するところが見たい。
そのためには、僕の有能さを、世界に見せつけることが必要だ。
今までの僕だったら、アイテムボックスしかスキルもないし、そんなことはできなかった。
でも、今の僕には、ジャスティスから奪ったこの、勇者の剣がある!
これなら僕でも、ジャスティスに匹敵するくらいの強さを得られるぞ!
いつまでも街にいては、罪人の僕は追いかけられてしまう。
一応、念のために、変装をしておこう。
ジャスティスから奪ったレアアイテムの中には、変装用のアイテムがあったはずだ。
【魔女の変装マント】――これは特級レアアイテムの一つで、被るだけで僕の正体をある程度まで誤魔化せる便利なアイテムだ。
ある程度、というのは、直接身体を触られて、念入りに調べられたりしたらバレてしまうくらいだ。
まあ、普通にギルドなんかを利用するには問題ないだろう。
身分証を見せるわけにはいかないから、飛び入りでのクエスト受注になってしまう。
そのため、報酬などは減ってしまうが……。
でも、僕はアイテムボックスにたくさん蓄えがあるし、お金なんかはいらなかった。
僕に必要なのは名声だ。
そう、ジャスティスをぎゃふんと言わせるくらいの、大きな手柄をたてるんだ!
英雄的な行為をすれば、きっと僕の罪も無罪になるはずだ。
それに、王にでも認められれば、僕の言い分を聞いてもらえるかもしれない。
そうしたら、逆にジャスティスを牢屋送りにしてやれる。
「ふっふっふ……! 見ていろジャスティス! 僕は本当は、すごい人間なんだからな……!」
僕はさっそく、ドラゴンを倒しに、ドラゴンマウンテンへやって来た。
冒険者にとって、最も手っ取り早く手柄を立てる方法は、ドラゴン退治だ。
ドラゴン退治なんて、まだジャスティスですら成し遂げていないことだ。
基本的にドラゴンは、よほどのことがない限り、人間を襲ったりはしないのだが……。
ドラゴンの素材は、その希少性から高値で取引されている。
そのため、冒険者ギルドのクエストボードには、常にドラゴンの素材募集のクエストが貼ってある。
たった一人でドラゴンに挑もうなんて、無茶な話だけど……。
でも、今の僕にはそのくらいしないと、ジャスティスを見返す方法は思いつかなかった。
それに、この勇者の剣さえあれば、きっとドラゴンだって倒せると思ったのだ。
そのくらい、この剣は、不思議なくらい僕の手に馴染む。
僕のスキルで手に入れたレアアイテムも使っているから、負ける気なんて全然しない。
回復アイテムも、アイテムボックスにたくさんあるから、僕一人でも冒険はスムーズに進む。
ひたすらにダンジョンの中を突き進んだ。
「グオオオオオオ!!!!」
ついにドラゴンのお出ましだ。
以前にもドラゴンと対峙したことはある。
でもそのときは、あのジャスティスでもドラゴンを倒すことなんてできなかったんだ……!
だけど、今の僕なら……!
覚醒した僕は、《禁呪の霊薬》で身体強化して、もはや人類最強と言ってもいいくらいのパワーを手に入れていた。
《禁断の鎧》は僕をドラゴンの熱いブレスから守ってくれるし。
《禁じられた魔導書》に書かれている呪文をとなえれば、僕でも最強の魔術師だ。
そんな僕が、ただのドラゴンに負けるはずがない……!
もはや僕は、ジャスティスだけじゃなく、世界中の冒険者の誰にも負けないんじゃないのか……!?
「うおおおおおおおおおおお!!!!」
僕はドラゴンに斬りかかる。
緑色の、分厚い鱗を持つドラゴン。
二足歩行タイプで、羽の付け根には小さな手がついている。
ドラゴンは身体を起立させ、僕に向かって火のブレスを吐いた!
しかし、《禁断の鎧》を身に着けている僕には傷一つつかない!
――ズシャアアア!!!!
僕の勇者の剣が、ドラゴンの分厚い肉を鱗ごと切り裂く!
ドラゴンの乾いたパサパサの肉から、血が肉汁のようにドバっと吹きだす。
「グオオオオオオン!!!!」
ドラゴンはまるで人間の泣き声のような断末魔を上げた。
そして、ドサっと地面に大きな振動とともに崩れ落ちる。
「ふぅ……」
初めてのドラゴン退治、あっけなかったな。
まあ、それほど大きなドラゴンでもなかったし、今の僕なら余裕だ。
とりあえず、ドラゴンをアイテムボックスにしまおう。
死んだドラゴンを丸ごと持ち帰れるのも、僕のアイテムボックスのスキルがあってこそだ。
僕はそんじょそこらの特殊スキルとは全然違うんだ。
この便利なスキルのおかげで、僕はこれから一人でもやっていけそうだ。
「ふっふっふ……このドラゴン討伐のニュースを聞いたら、みんなびっくりするぞ……! 謎の有能冒険者が現れたってね……!」
そして、頃合いを見計らって僕がその冒険者だと、ジャスティスたちにばらすんだ!
みんな、きっと僕を見返すし、僕をないがしろにしたことを後悔するぞ……!
僕はそのドラゴンを収納して、冒険者ギルドへと帰還する。
――ガルルルルル……!
「ん…………?」
なんだか後ろから殺気のようなものを感じたけど……。
振り返ってもなにもいない。
まあ、もう用は済んだし、どうでもいいか。
僕は気にせず、ダンジョンを後にするのだった。
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