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番外編⑻

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「シオン、そこに居るんだろう?」

明らかな確信を持っての問いかけ。先程とは違う冷静な声…。俺は騙されないぞ!!大丈夫怒ってないよ?と見せかけてからの大噴火だろう?無言でやり過ごし、ガイが諦めて部屋から立ち去るのを待つのが安全策か…くぅー、長期戦になりそうだ…。ディルドを握り締めながらお山座りでペタと床に腰を下ろした。冷たくて硬い床のタイルがダイレクトにおしりに当たる。お腹冷えちゃうし、おしり痛くなりそう、いやこれは腰まで痛くなるやつだな、お風呂場の床シート買おうかな?そしたら1人エッチの時のシチュエーションも広がるんじゃ…とさっそく現実から意識を飛ばし始めた。

どれぐらい時間が経ったのだろう。気分的には何時間も経過してるんだけど…。妄想大好きっ子な俺には余裕で過ごせてしまうが、時間の無駄遣いが嫌いそうなガイの事だ流石に諦めて出て行っただろう。ってか居なくなっててくれ!丸出しの俺の可愛いおしりはすっかり冷えてしまったよ…。パンツが無いことがこんなにも心細いとは…いま逢いに行くよパンツ君!!

足音を殺し扉にそっと耳を近づけるが、物音一つない。

ガチャ

優しく鍵を回す。息を殺し、音を立てないようにゆっくりゆっくり慎重に扉を開け、隙間から外の様子を確認する。
よし!よし!異常なし!!

素早く大きく扉を開き、壁に背を添わせた。心臓がドキドキと煩い。恐る恐る顔だけを器用にだしベッドの部屋の様子を窺う。ガイらしき人物は見当たらない。小さな安堵のため息が自然と漏れた。ガイの大きさだとベッドの下に潜り込む事も出来ないだろうしな。隠れるにしてもどこかしら可愛いもふもふを発見出来そうだし…。

足音を殺したままラブグッズの散乱しているベッドに近づく。壊された形跡も無い…てっきり粉砕されてるかと心配したのに。

「ぁー、良かったぁ…」

胸を撫で下ろし、少し掠れた声が漏れた。

「何が良かったんだ?シオン」

「そりゃ~俺の大切なラブグッズが無事な
…こ、、、とぉッ?!」

背後からとても嫌な声が聞こえ、俺は猫ジャンプのように大きくベット側に飛び退いた。

大きく弧を描いた口、腕を組み仁王立ちするガイが目に入り、俺は限界まで目を見開らく。嘘だろ…おいおいおい、話が違うじゃないの?!追い詰められた犯人のようにじりじりと後ずさりする俺。

ドンッ

何かに遮られ俺の足は止まった。少し後ろに視線を落とす。あぁ、万事休すか…。

ゆっくりと視線を前に戻すと、ガイは腕組みを解き、目を細め、もふもふの腕を俺の方に伸ばした。

軽い衝撃と共に俺の身体はベットに沈み込む。俺の周りには赤い薔薇の花びらデコレーションならぬ、ラブグッズデコレーションが…。いや、エロ大好きな俺のとっては夢のようなシチュエーションなんですけどね。どんな状況でも妄想は大切。

だか、俺の意識は直ぐにベットが大きく沈んだ事によって現実に引き戻された。大きな体が俺に覆いかぶさり、両手をベットに縫い付ける。

ゴクリと自分が唾を飲み込む音がやけに大きく耳に響いた。

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