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しおりを挟む「あ~その~なんだ…泣くなって~なんかアイツらに弱味でも握られてるんだろ?…じゃぁさッ、俺の味方になって貰える様にブライアンの事を今から口説いても良い?残念だけど、俺、ガイ以外に体を許すつもりは無いんだ。だからブライアンに犯されると困るんだよね~」
頬に手を添え涙を拭ってやれば、ブライアンは目を丸くして呆然とした様子で俺を見た。口説く…ブライアンの小さな呟きに聞こえない振りをして俺は自分の思いを伝えた。ちょっと口説くって言い方はマズったかもしれんが…まぁいいか。俺のもふもふ愛をとくと聞け!!
「まぁ、後ろ盾もないし、なんなら孤立しけますけど第二王子だしね。キースよりかは俺の方がまだいいんじゃない?それにだ…俺はブライアンを醜いだなんて一度も思った事ないよ。寧ろ大きな体で羨ましい抱き着きたくなる素晴らしいフォルム。この体についた傷だって…強さの象徴って感じでカッコイイ。それに俺に対しても気遣いめっちゃしてくれるしね。確かに表情が読み取れないからなに考えてるのか分かんないけど、俺はそんなブライアンも好きだよ。完全獣人は嘘が通じないんだろ?どう?俺、嘘言ってた?」
微笑みながら、両手でブライアンの頬を挟めば、声を詰まらせ本格的に泣き出した。そもそも、ガイが選んだブライアンを俺が疑うなんて有り得ない。ガイの目は確かだし、ブライアンの事も短い間しか一緒に居てないけど信用している。
こんなに可愛いのにな…ブライアンの体には幾つもの傷があった。それは大きいものから小さいものまで…騎士団の訓練でついたのか、戦ってついたのか俺には分からない。確かに傷付いた場所はもふもふが失われてしまっているが…なんか味が出てるってか…カッコイイんだよなぁ…。頬から手を滑らせ、もふもふのない地肌を指でなぞると、大きな体は面白いくらいにビクッと跳ねた。
「へぇ~ここ弱いんだ?」
大発見!!新しいおもちゃを貰った子供の様に俺の目は輝いていたに違いない。
「シオン様ッ…お戯れはお止め下さい…ッ!!」
片手を大きな手に掴まれる。いいねぇ~そのセリフ。お代官様になった気分だわ。止めろと言われればもっとやりたくなるもの。特にブライアンにイタズラ出来る機会など滅多にない。いやこの先、一生ないかもしれん!!今出来るエロを最大限に楽しむ事が大切だ!!もう片方の手でピンク色の地肌部分に指先を何度も往復させれば、ビクビクとブライアンは反応し、んっ…と小さく喘ぎ声を漏らした。
「クソ可愛ぃ…これがギャップ萌…」
もうちょい踏み込んでイタズラしちゃうぞと、手をワキワキさせていると、おい、と注意する声が掛かった。
「シオン…何やってんだぁ?!あ゛ぁッ?!」
「ほんと…シオン様…何をしているんですか?」
「はっ?!」
顔だけを後ろに反らし、声の方を見ると思っていた通り、ガイとヘラが立っていた…。風で靡くカーテンが目に入る。えっ、ここ3階なんですけど…。2人とも流石ですね。なんつー格好良い登場…大好きだよチクショー!!ときめいちゃったよ!!と心が浮ついたのも束の間、ガイがとっても怒っていらっしゃる…。毛が逆立ち、あぁ、皺が…皺がいつもより深いよ!!俺は思わずめ目の前のもふもふを縋り付くように掴んだ。
「あぁ…ょッ、よう、奇遇だな。こんな場所で会えるなんて…」
「あぁ、本当にな」
「全くですね」
2人の後ろに黒いオーラが見えるのは俺の気のせいだろうか…。顔の引き攣る俺と、怒りを隠そうともしないガイ、絶対零度の目で見下すように俺を見るヘラ。そして未だに泣き止まない腹の上に跨るブライアン。あーこのまま白目剥いて意識を消失してしまいたい。あまりのタイミングの悪さに天を仰いだ。
結局、立ったままでは話せないとガイが放った言葉をきっかけに、ガイ、ヘラ、ブライアンはソファに座り、俺は床に正座をさせられた。いや、絨毯敷いてあるから痛くはないけど…おかしくない?!俺、襲われた側じゃないですか?!寧ろブライアンと俺立場逆じゃない?!とは口が裂けても言えないけど…。俺の弁明タイムが始まる。
「あーあのですね、俺は決してブライアンを虐めてたわけでは無くてですね…」
「…」
「…」
「えーっと…泣いてるブライアンが可愛いくてついですね…出来心で…すみません!!許してください!!」
出来心からやり始めたイタズラが意外に大きくなってしまうなんてよくある話だろう…。そもそも出来心を芽生えさせるような事をしたのはブライアンなんですよ!!あのもふもふが俺を魅了したんですよ!!大丈夫、俺?痴漢した犯人みたいな事言ってない?誠意を見せなくてはッ!!土下座せんばかりの勢いで頭を下げると、はぁ~と長いため息が被って聞こえた。
やれやれといった表情のガイとヘラを交互に見る。一体この2人には俺がブライアンに何をしていた様に見えたんだ…。ってかブライアンが何で俺を襲ったかは聞かないんですかね?!完全獣人同士のテレパシーでもあるのかよ!!段々腹が立ってきた。顔に出ていたのか、あやす様に頭をトントンされ、ガイにぶらんと持ち上げられ膝の上に降ろされた。俺はご立腹中なんだ!!フイと顔を逸らす。
「シオン拗ねるな。最初からちゃんと教えてやるから」
そうしてガイの口から語られた真実に俺は耳を疑った。そう、俺がキースとロゼが一緒に居た事を告げた時、2人は既に関係を知っていたのだ。一件、繋がりの無いように思える2人は、実は完全獣人差別主義同盟とやらで繋がっていたらしい。どこにでも組織を作りたがるやつって居るんだな…。そこで出会った2人は俺の記憶を取り戻すという利害が一致し手を組んだ。キースは甘い蜜が吸いたい、ロゼはハーレムエンドでチヤホヤされたい。
そして、目を付けたのがブライアンだった。脅されていた内容は弟の縁談破棄。キース程の貴族ならば可能だろう。可愛い弟の幸せも守りたい、でも俺を裏切る事も出来ない…思い悩みガイに打ち明けた結果、今日俺が襲われる事を聞いて、言い逃れが出来ない現場を取り押さえる算段だったんだって~。へぇ~なんで当事者の俺が知らんの?教えてくれないの?疑問が顔に出ていたのか、ヘラにシオン様は顔に出やすいですからとバッサリ切り捨てられた。あっ、そう…。俺ってそんなに分かりやすい?別に除け者にされたとか思ってないしー。拗ねてないしー。
「シオン様、騙していて申し訳ありませんでした」
ブライアンの深い謝罪を横目で確認し、絨毯に視線を落とした。
「はぁ~別にー。俺は犯され無かったわけだし、ブライアンも辛い役回りだったと思うし、俺もブライアン泣かせちゃったからチャラって事で良いよ」
「う゛ぅ…シオンざまぁッ…なんとお優しぃ…ぐっ」
俺の言葉の何に心を打たれたのか、またもや泣き出すブライアン。今回、俺は何にもしてないからな!!全く世話が焼けるくまさんだ。かわい子ちゃんの涙には弱いんだよ…小さく呟き、ブライアンの頭を撫でてやると、頭上から、かわい子ちゃん?とハモった声が聞こえた。可愛い子に可愛いと言って何が悪い。2人からの視線をビシバシ感じるが無視だ無視。今はこの短髪もふもふを堪能するんだ!!
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