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どうやっても離してくれないと諦めた俺はガイのもふもふから口を離し全身の力を抜いた。

「ヘラ…シオンを頼めるか?」

「シオン様は私のおそばに…どうしても無理な様でしたら申して下さい」

ガイから解放され自由の身になった俺はヘラの服の裾を掴んだ。子供っぽいとか思われてもいい。攻略対象者からなるべく距離を置きたい。おずおずと部屋の中に入り、1番遠いソファに腰掛けた。勿論、ヘラもそばに居てくれる。でも服の裾は掴んだままだ。

俺は現在、戦場で周りを敵に包囲された様に絶対絶命の大ピンチに陥っている。どうやって切り抜ければいいのか…。

「では、全員揃った事ですし、話を始めましょうか」

パンパンと手を叩き、皆の注目を集めるエリック。俺は目を見き開き、固唾を呑んで次の言葉を待った。

「シオン君が襲われた件に関して、今回も、前回も不審な点があります…」

自分の名前を呼ばれてビクついたが、どうやらお咎めではなさそうだな…。そこからエリックは分かりやすい様に説明してくれた。それはまるで、推理小説のクライマックスに謎を解き明かす名探偵の様だった。

まず、最初に俺がエロおやじに襲われた事件について、そもそも、俺を医者に診せる事を渋っていたのはガイらしい…。お前が診てもらった方が良いと言った言い出しっぺだろうが…。そして、苦渋の挙句、ホスト保健医に診てもらう事になった。勿論、極秘に…。一部の者しか知り得ない診察日を何故知っていたのか?何故、俺の部屋を知っていたのか?それは内通者が居たからだ。

次に、サド野郎に襲われた事件。サド野郎はずっと婚約者打診の件を渋って居たらしいが、急に色良い返事をしたそうだ。ガイが不審に思うのも当然。俺が記憶喪失である事は伏せられている。しかし、サド野郎は俺がガイと仲が良い事を知っていた様な口ぶりで、俺に何度も会いたいと言っていたらしい。つまり俺の情報が漏れている…。でもなぁ…俺結構な頻度でガイの部屋に通ってたし、お城の人なら気づきそうなもんだけどなー。

「この共通の内通者に関して…1人だけ思い当たる人物がいます」

エリックは人差し指をピンッと立て、メガネのフレームをくいと押し上げた。似合いすぎだろその仕草ッ!!カッコイイなおい!!謎解きはついに山場を迎えた。

「あぁ、俺にも心当たりがあるぞー。あの診察日はアイツのせいで遅れる羽目になったんだ」

ダルそうにソファに座るホスト保健医も犯人の目星を付けている発言をする。

「俺も心当たりがあるぜ。アイツが生徒会室で喚き散らしていたせいで、城に戻るのが遅れてシオンがあんな目に…」

ガイは悔しげな表情を露わにして握り拳を自分の膝に打ち付けた。

「私もシオン君の事を聞かれましたよ。何故学園に来ていないのかと…むしろ、どうして、シオン君の名前を知っているのか不思議でした。名前は公表されていませんからね」

「俺も同じだ。シオンを学園に連れてこいと何度も言ってたな…それに何度注意しても生徒会室に侵入しやがるし…俺達の会話を盗み聞きしてた可能性もある」

エリックとアレンはお互いに顔を見合わせ頷きあっている。えっ、じゃぁ、ソイツが犯人じゃん。手引きして俺をどうにかして陥れたいって事でしょ?なんの恨みがあるのか知らんけど。誰なんだ…ソイツは誰なんだ?!

「そう、それは…」

エリックの言葉を一言も聞き漏らさないように耳を研ぎ澄ます。緊張で手に汗が滲む。俺の自然と唇を噛み締めた。

「ロゼ以外にいない」

ロゼ…ロ…ゼ…。はっ?ロゼってゲームの主人公の名前じゃん。ロゼが俺を…?皆の口振りから犯人はロゼで間違いないだろう。俺を知っているって事は、つまり…ロゼは転生者…。くっそ!!なんて厄介な相手だ…。
ゲームを知っているからこそ、俺が学園に居ない事を不審に思った。俺が居なくて困ってるって事はだよ…ロゼはガイルートを選んだ…。あぁ、最悪の展開になってしまった。なんでよりによって…。


やっとガイと両想いになれたのに、こんなのあんまりじゃない?マジで恨むぞ主人公!!お前はいいよな、元からの好感度が普通スタートで。イベントをこなせば好感度が上がる仕様だし…俺なんか好感度マイナスのスタートなんだぞ?!それに選り取りみどりのイケメン攻略対象者…ガイの魅力に気付いたのは褒めてやるが…手に入れたいからって人様を陥れる様な事はしたらダメだろう。俺はエロいけどちゃんと常識も兼ね合わせているからな!!


ロゼの方がガイと過ごせる時間が多い…俺が会えるのは城でのみ…。会えない日だってある…。毎日ガイに会えるロゼの方が有利かもしれんが…。ガイと過ごす日を濃厚なものにすれば良い。


俺からガイを奪おうなんていい度胸してるじゃねぇか。絶対にロゼには渡さん。ってか誰にも渡さねぇ!!
人の恋路を邪魔する奴らはみんなまとめて馬に蹴られて飛んで行っちまえ!!


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