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第一王子のガイ。何でよりによって…。こいつは真っ白なオオカミだ。アニメでしか見た事ないような純白。美しい毛並みに、毛艶も最高だ。俺の頭2つ分ぐらいデカい。服の隙間からはみ出るチョイもふ。まさしく布の下はもふもふパラダイス。こんな素敵な子見たことないわ…。うっとりと見惚れていたのも束の間、グルルッと聞こえた唸りに俺の顔は引き攣った。そうだった…。俺、コイツの事嫌いなんだった。

「……」
「……」

今までの俺ならば出会い頭に罵声を浴びせただろうが、今の俺には出来ない。こんな素敵な子を前に悪口なんて言えるわけないでしょ!!クッソ!!俺がもう少し早く成り代わって居たなら…抱いて貰えたかもしれないのに!!俺のバカヤロー!!悔しさで奥歯を噛み締め手を握り締めた。

「……」
「……」

無言で見つめ合い、一応兄弟だからと軽く会釈だけして通り過ぎた。先程のアレン同様、目を見開き俺を凝視している。無。俺は無だ。念仏のように心で唱えやり過ごした。

何処をどうやって歩いてきたのかは全然覚えていないが、気付けば噴水がある広場の様な場所に出ていた。

「はぁー。辛い。お城の居心地最悪なんじゃねぇ?すれ違う人は皆俺の事避けるし、腫れ物みたいな扱いするしさ?ハーレム?何それ美味しいの状態」

むしろ欲求不満耐性つくんじゃね?噴水のヘリに腰掛けボヤく。やっぱ、差別発言のせいだよな。でも言っちゃったもんは取り消せないし…。どうしよっかなー。どれぐらいの時間そこに居たのだろうか。気付けば何も良い案が浮かんでこないまま日が暮れていた。

「シオン様。そろそろお部屋にお戻り下さい」

急に現れた影に視線を上げると、そこにはこれまた珍しい完全獣人が居た。この独特な模様…もしや豹かな?また綺麗な毛並みな事で…。ちょっと触らせてくれないかな。ってかその前に、

「君、誰?」

率直な疑問をぶつける。なんかさ~ゲームの事は覚えてるんだけど、それ以外のシオンに関することが霧がかったように思い出せないんだよな。

「ぐっ…お戯れを…」

苦虫を噛み潰したような顔で吐き出すように言われた。戯れるのなら是非ともベッドの上でお願いしたい。

「いや、ほんとに名前知らねーし。ってか思い出せないって言い方が正しいかな?」

「そんなに…そんなに私の事がお嫌いですか…嘘まで…名前さえ呼びたくないと…」

豹の完全獣人はしっぽをだらりと垂れ下げ悲しさを全面に押し出し耐えていた。
あぁーなんとなく察しちゃったよ。あれでしょ?俺はどうせこの子にも酷い差別発言してたんでしょ?その上、今のお前誰だよ発言。

自分よりも一回り大きいもふもふした手を両手で取り自分の胸に引き寄せた。お触りも忘れない。うほ、もふもふ堪らん。この滑らかな毛並み最高かよ!!

「ごめん。悲しませちゃって。意地悪したいわけじゃないんだ。本当に記憶が断片的にしか残ってなくて…もしかしたらお風呂場で頭を打ったせいかもしれない」

真面目な顔でしれっと嘘を言う。嘘に少しの本当を混ぜると本当の事に聞こえるらしい。頭を打ったことは嘘、でも記憶が断片的なのは本当。つまり、今の俺は完全獣人に対して差別発言をした事を全く覚えてない。そう、軽い記憶喪失の振りをする事にした。これなら完全獣人ともワンチャンあるかもしれないしね!!いいじゃん、いいじゃん!!我ながらナイスアイデア。

「えっ、手…それより、記憶を…」

「なーんか、ボヤーってしてて覚えてないんだよな。って訳で、悪いけどもう1回名前教えてくれる?」

苦笑いでもう一度尋ねた。勿論手は離さない。

「わっ、私はシオン様にお仕えさせていだいております、従者のヘラと申します…」

「ヘラ、ヘラね。改めてよろしく。いきなりなんだけど、俺の部屋まで案内してくれない?適当に歩いてきたら道わかんなくてさー」

「はぁ…構いませんが…」

ヘラはポカンと口を開けマヌケ顔で答えた。何それ可愛すぎなんですけど。そしてチラ見えの牙が凄い!!興奮しちゃう!!


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