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俺、奪われる
しおりを挟む「僕ね、悲しい出来事があってね…どうしても乗り越えられないんだ…何もやる気が起きなくてね…全部どーでもよくなっちゃって…適当にお仕事して、適当に性欲満たして…紛らわして…ダメだって思うんだけどね…どうにもならなくて…」
少し俯きげに悲しそうな笑顔で話し出した。んー残念ながら、俺はミストさんのキャラ設定わかんないのよ!だからどんな悲しい事があったのか知らないんだよなー。とりあえず自分に置き換えてみよう!!
俺が悲しくて立ち直れない事…ゲームだな…。昔大好きだったゲーム。学校から帰り、意気揚々と電源を入れる。”ぼうけんのしょがきえました”との表示が…絶望。もう絶望以外にないよね?悲しみを押し殺しもう一度やり直す。
やっとデータが消えた所まで来た!!が、ゲーム機に不注意でぶつかってしまう。フリーズする画面…。絶望です。恐る恐る、もう一度電源を入れる…”ぼうけんのしょがきえました”涙が止まらない…。俺の…俺の努力が…。大切な時間が…。
でも大好きなゲームなんだ。例えデータが消える悲しみを何回味わおうとも…好きなんだ!!クリアしたいんだ!!この悲しみもゲームのうちだ!と自分を奮い立たせて、なんとかクリアまで漕ぎ着けた。
つまりミストさんは、データが消えた絶望から立ち直る事が出来てないって感じかな?わかる!わかるよその気持ち!!
「俺は大したことは言えませんが…その…その悲しい出来事をひっくるめて、好きになってもらえば問題ないのでは?」
俺のアドバイス合ってるかな?ミストさんの悲しい出来事も含めて、ミストさんを好きになってくれる人が現れたらいいんでしょ?つまり神子様でしょ?どやッ!!解決したよ!!解放して!!ミストさんに笑顔で微笑みかける。
あっ、王子様がアホ面を晒してる…。
「あの…」
「そうだね…そっか…悲しい出来事をひっくるめてか…考えた事なかったな…」
「別に忘れる必要はないと思います」
ってか忘れられないよね!!いつも頭にはデータが消え去った悲しみがありましたよ…クリアした時は感無量だったなー。
「ありがとう」
満面の王子様スマイルだ…。水色の髪が太陽に反射して光輝いている。おまけに、ミストさんの周りにキラキラとした華やかなエフェクトが…ひぃ────!!眩しい!!目が潰れる!!ギュッと思わず目を瞑る。
チュッ
唇に触れる柔らかい感覚。はっ?
「お礼だよ。お城まで送るね。一番近い図書館でいいかな?」
なんと俺は、ミストさんのテレポートで再び図書館まで戻って来てしまった。
「カーラ様ッ!!」
「探しましたよッ!!」
またもや半泣きの過保護な護衛二人組。俺のせいですゴメンなさい。でも、サンドイッチみたいに二人で俺を挟むのは止めて下さい。苦しいです。前が見えません。
「カーラって名前なんだね。僕はミスト。またね」
いえ、二度とお会いすることはございません!!俺の…俺の…俺のファーストキスを返しやがれぇぇ!!こんな訳ありチャラ男に…どうせなら…もっとロマンチックなシチュエーションが良かったぁ────!!バッキャロォォォ────!!
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