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.愛しき幸せ
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38※ゼロ視点※
今日も仕事で遅くなってしまい、もう真夜中の時間帯だ。
義賊の連中の動きが掴めずに、イライラしてムキになっていたのかもしれない。
エルはもう寝ただろうか……寂しい思いをさせてしまったな。
エルに付けていた探知機の魔導具はあちこち動き回っていた。
兵舎の中だからと油断出来ない、エルの事を嫌う奴がいるのは分かっている。
エルが気に入らないなら全員処分しても構わないが、それはヤマトに「騎士団長様が私情でどうこうしたら弟くんも尊敬してくれないよ」と言われたから止めた。
エルに尊敬されないのは嫌だ、でも対策を考える必要があるな。
俺の仕事場にエルを連れてきて一日中守りたいが、夜の見回りとか危険な事もしているから連れていけない。
エルに護衛を付ける…いや、それも屋敷での一件があるから誰も信用出来ない。
どうしようかずっと悩んでいたら部屋の前まで到着した。
ドアを開けるといつもと変わらないと思っていたリビングで見た光景に驚いた。
テーブルに並べられていたのは一度も手を付けていないであろう料理が、保温魔導具で鮮度を保たれていた。
ソファーには両手足をはみ出して、小さな寝息を立てるエルがいた。
俺が帰ってくるのをずっと待っていたのだろう、申し訳ないと思うのと同時に嬉しく思った。
会いたいと思う気持ちは一緒なのだろうと、ソファーに近付く。
「ただいま、エル…」
さらさらの前髪に触れて呟くと、エルの目蓋が微かに震えた。
どうやら起こしてしまったようで、眠い目蓋を擦りながらエルが目を覚ました。
「寝てていいぞ」と言ったが首を横に振って俺に抱きついてきた。
まだ寝ぼけているのか?と思いながらもしっかりと受け止めた。
あまり仕事漬けもいけないな、もっと時間に余裕が出来るようにしよう。
エルの小さな腹からは腹ペコだと悲鳴が聞こえて苦笑いした。
俺達はちょっと遅い夕飯を共にした、エルは半分寝ていたが…
食べ終わり、うつらうつらのエルの歯磨きを手伝い…横抱きして寝室に向かった。
寝言なのか「兄様…」と切ない声で俺を呼ぶエルに喉を鳴らす。
いや、ダメだ…寝ているエルにイタズラはしたくない、エルの反応が見れないから…
ベッドで寝かせてエルの寝顔を見つめていながら考えていた。
…今日のエルは何だか変だったな、屋上に行ったと思ったらあの研究室に行っていた。
映像も音声もないから何しに行ったのか分からない。
あんな危険な場所に何の用があって行ったんだろう。
エルが変な事に巻き込まていなければいいが、あの研究室は変態研究者の巣窟だからな。
エルの額に唇を落として、俺も寝ようと目蓋を閉じた。
チュンチュンと鳥の囀りで目を閉じたまま手探りで探す。
でも目当てのものがなくて目蓋を開けるとやはりそこには何もなかった。
「……エル?」
寝室を見渡したがエルがいなくて、急に不安が襲い慌てて寝室を出た。
するとキッチンの方からリズミカルな音が聞こえていいにおいがする。
キッチンを覗くと青色チェック柄のエプロンを身につけたエルが朝食を作っていた。
調味料に手を伸ばして俺に気付き「おはよう!もうちょっと待っててね」と眩しい笑顔を見せていた。
俺も先に仕事に出かけた時、こんなに不安だったんだな。
エルが大事だと言って不安にさせてたら意味ないな。
エルの後ろに回り、しっかりと抱き締めるとスープを作っていた手を止めた。
「今具材切ってるから危ないよ?」
「……ごめん、ごめんなエル」
「え?なにが?」
俺がずっとごめんごめん言っているからエルは何の事か分かっていないだろう。
でも今の俺は説明する余裕がなくてずっと謝っていた。
するとエルはなにかを察して、俺の頭を撫でてくれた。
それがとても心地よくて、名残惜しいがずっとエルの邪魔をしていられないと離れた。
今日はどんなに忙しくても根性で終わらせてエルとちゃんと夕飯を食べようと思った。
今日も仕事で遅くなってしまい、もう真夜中の時間帯だ。
義賊の連中の動きが掴めずに、イライラしてムキになっていたのかもしれない。
エルはもう寝ただろうか……寂しい思いをさせてしまったな。
エルに付けていた探知機の魔導具はあちこち動き回っていた。
兵舎の中だからと油断出来ない、エルの事を嫌う奴がいるのは分かっている。
エルが気に入らないなら全員処分しても構わないが、それはヤマトに「騎士団長様が私情でどうこうしたら弟くんも尊敬してくれないよ」と言われたから止めた。
エルに尊敬されないのは嫌だ、でも対策を考える必要があるな。
俺の仕事場にエルを連れてきて一日中守りたいが、夜の見回りとか危険な事もしているから連れていけない。
エルに護衛を付ける…いや、それも屋敷での一件があるから誰も信用出来ない。
どうしようかずっと悩んでいたら部屋の前まで到着した。
ドアを開けるといつもと変わらないと思っていたリビングで見た光景に驚いた。
テーブルに並べられていたのは一度も手を付けていないであろう料理が、保温魔導具で鮮度を保たれていた。
ソファーには両手足をはみ出して、小さな寝息を立てるエルがいた。
俺が帰ってくるのをずっと待っていたのだろう、申し訳ないと思うのと同時に嬉しく思った。
会いたいと思う気持ちは一緒なのだろうと、ソファーに近付く。
「ただいま、エル…」
さらさらの前髪に触れて呟くと、エルの目蓋が微かに震えた。
どうやら起こしてしまったようで、眠い目蓋を擦りながらエルが目を覚ました。
「寝てていいぞ」と言ったが首を横に振って俺に抱きついてきた。
まだ寝ぼけているのか?と思いながらもしっかりと受け止めた。
あまり仕事漬けもいけないな、もっと時間に余裕が出来るようにしよう。
エルの小さな腹からは腹ペコだと悲鳴が聞こえて苦笑いした。
俺達はちょっと遅い夕飯を共にした、エルは半分寝ていたが…
食べ終わり、うつらうつらのエルの歯磨きを手伝い…横抱きして寝室に向かった。
寝言なのか「兄様…」と切ない声で俺を呼ぶエルに喉を鳴らす。
いや、ダメだ…寝ているエルにイタズラはしたくない、エルの反応が見れないから…
ベッドで寝かせてエルの寝顔を見つめていながら考えていた。
…今日のエルは何だか変だったな、屋上に行ったと思ったらあの研究室に行っていた。
映像も音声もないから何しに行ったのか分からない。
あんな危険な場所に何の用があって行ったんだろう。
エルが変な事に巻き込まていなければいいが、あの研究室は変態研究者の巣窟だからな。
エルの額に唇を落として、俺も寝ようと目蓋を閉じた。
チュンチュンと鳥の囀りで目を閉じたまま手探りで探す。
でも目当てのものがなくて目蓋を開けるとやはりそこには何もなかった。
「……エル?」
寝室を見渡したがエルがいなくて、急に不安が襲い慌てて寝室を出た。
するとキッチンの方からリズミカルな音が聞こえていいにおいがする。
キッチンを覗くと青色チェック柄のエプロンを身につけたエルが朝食を作っていた。
調味料に手を伸ばして俺に気付き「おはよう!もうちょっと待っててね」と眩しい笑顔を見せていた。
俺も先に仕事に出かけた時、こんなに不安だったんだな。
エルが大事だと言って不安にさせてたら意味ないな。
エルの後ろに回り、しっかりと抱き締めるとスープを作っていた手を止めた。
「今具材切ってるから危ないよ?」
「……ごめん、ごめんなエル」
「え?なにが?」
俺がずっとごめんごめん言っているからエルは何の事か分かっていないだろう。
でも今の俺は説明する余裕がなくてずっと謝っていた。
するとエルはなにかを察して、俺の頭を撫でてくれた。
それがとても心地よくて、名残惜しいがずっとエルの邪魔をしていられないと離れた。
今日はどんなに忙しくても根性で終わらせてエルとちゃんと夕飯を食べようと思った。
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