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無属性
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「だから力を鍛えて、次こそは守りたいと思っていたんです」
「そうだったんだ」
「エル様には無属性の話をしようと思ったんです、この時代はあの時より殺伐としていないので」
目の前にいたのに守れなかった悔しい気持ち、俺も同じ立場だったら後悔してもしきれないだろう。
ゼロが目の前で死んでいくのを助けられないなんて、耐えられない。
俺のこの力は魔力を無効化に出来る、だったら俺もイーリスがしたようにゼロの力を抑える事が出来るかもしれない。
無効化の話を知っているのは青年と今知った俺だけだと言う。
まだまだ無属性について知らない事が多いから彼がいればきっと…
彼にお願いしたい事があると言うと「エル様のお願いならなんでも、私は貴方の僕ですから」と誇らしげに言っていた。
「俺、ゼロを助けたいんだ…この力で、協力してほしいんだ」
「…先ほどからゼロとは、いったいどなたの事なのですか?」
「ゼロは俺のたった一人の兄だよ」
ゼロには属性が二つあって、その一つの属性が危険だという事を話した。
青年は二つ属性がある事に驚いてしばらく考えていた。
確かグラディオも二つ属性があったんだよな、だから青年は複雑なのかもしれない。
グラディオはゼロの先祖だと俺からは言わない方がいいだろう。
こういう深い話はゼロの許可なく話すのはどうかと思った。
青年は「二つ属性のある魔法使いを手助け、あまり気は進みませんがエル様の頼みとあれば…お手伝いいたします」と言ってくれた。
断られたらどうしよう、と思っていたから良かった。
それにしてもさっきから様付けされているが、俺はそんな立派な身分じゃないから普通にしてほしい。
昔使用人がいた頃によく言われていたが、ゼロに使用人はそう呼ぶのが仕事だと言われていたから、仕事を奪うのも悪いと思いそのままにしていた。
だけど青年は使用人じゃないし、イーリスとは力以外に何の繋がりもないから様付けしなくてもいい。
「あのさ、エル様って呼ぶの止めない?」
「…気に入りませんか?ならば、姫と呼ばせて」
「いやいやいや!姫って女の子の呼び名でしょ!?俺、男!!」
「それでは王子と…」
「俺、平民出身だからそれも違うよ…」
「では、やはりエル様が一番ですね!」
またふりだしに戻ってしまい、諦めのため息を吐いた。
どうしても様付けは止めてくれないようだ、青年は俺の言う事を聞きそうに見えて一度決めた事は曲げないようだった。
そういえばあの時、密売集団によって青年はぐったりしていたが無事だったんだな…あの後どうなったんだろう。
それを聞いてみたら「エル様を助ける事しか頭になかったので何も覚えておりません」と微笑んでいた。
覚えてないなら仕方ない、でももうそろそろ現実に戻らないと先生が心配してしまう。
トラブルはあったが、まだ課外授業中だから騒ぎになってるかもしれない。
「そろそろ戻ろう、えーっと貴方の名前は…」
「名はありません」
「イーリス…様にはなんて言われてたの?」
「イーリス様は元の主、元の主の名付けた名は使わない決まりなのです…エル様がお好きにお呼びください」
「…え、えーっと…じゃあ…ノア!」
俺はとっさに頭の中で浮かび上がった名前を口にした。
ノアとは生前施設で飼っていたハムスターの名前だった。
ハムスターのノアも毛並みが真っ白で青年に似ていると感じた。
青年も気に入ってくれたのは嬉しそうにしてくれて「私の名は今日からノアです」と言ってくれた。
ノアが俺の手を握り、恐る恐る握り返すと視界が光ってもう目が覚めるのだと感じた。
目を閉じると、唇になにか柔らかいものが触れていた。
それはいつも感じているものだが、ここにはゼロはいなかった筈だけど…
不思議に思って目を開けようとしたらその前に目を手で覆われた。
耳元で「私はいつでも貴方を見守っています」というノアの声が聞こえて意識が遠くなる。
「そうだったんだ」
「エル様には無属性の話をしようと思ったんです、この時代はあの時より殺伐としていないので」
目の前にいたのに守れなかった悔しい気持ち、俺も同じ立場だったら後悔してもしきれないだろう。
ゼロが目の前で死んでいくのを助けられないなんて、耐えられない。
俺のこの力は魔力を無効化に出来る、だったら俺もイーリスがしたようにゼロの力を抑える事が出来るかもしれない。
無効化の話を知っているのは青年と今知った俺だけだと言う。
まだまだ無属性について知らない事が多いから彼がいればきっと…
彼にお願いしたい事があると言うと「エル様のお願いならなんでも、私は貴方の僕ですから」と誇らしげに言っていた。
「俺、ゼロを助けたいんだ…この力で、協力してほしいんだ」
「…先ほどからゼロとは、いったいどなたの事なのですか?」
「ゼロは俺のたった一人の兄だよ」
ゼロには属性が二つあって、その一つの属性が危険だという事を話した。
青年は二つ属性がある事に驚いてしばらく考えていた。
確かグラディオも二つ属性があったんだよな、だから青年は複雑なのかもしれない。
グラディオはゼロの先祖だと俺からは言わない方がいいだろう。
こういう深い話はゼロの許可なく話すのはどうかと思った。
青年は「二つ属性のある魔法使いを手助け、あまり気は進みませんがエル様の頼みとあれば…お手伝いいたします」と言ってくれた。
断られたらどうしよう、と思っていたから良かった。
それにしてもさっきから様付けされているが、俺はそんな立派な身分じゃないから普通にしてほしい。
昔使用人がいた頃によく言われていたが、ゼロに使用人はそう呼ぶのが仕事だと言われていたから、仕事を奪うのも悪いと思いそのままにしていた。
だけど青年は使用人じゃないし、イーリスとは力以外に何の繋がりもないから様付けしなくてもいい。
「あのさ、エル様って呼ぶの止めない?」
「…気に入りませんか?ならば、姫と呼ばせて」
「いやいやいや!姫って女の子の呼び名でしょ!?俺、男!!」
「それでは王子と…」
「俺、平民出身だからそれも違うよ…」
「では、やはりエル様が一番ですね!」
またふりだしに戻ってしまい、諦めのため息を吐いた。
どうしても様付けは止めてくれないようだ、青年は俺の言う事を聞きそうに見えて一度決めた事は曲げないようだった。
そういえばあの時、密売集団によって青年はぐったりしていたが無事だったんだな…あの後どうなったんだろう。
それを聞いてみたら「エル様を助ける事しか頭になかったので何も覚えておりません」と微笑んでいた。
覚えてないなら仕方ない、でももうそろそろ現実に戻らないと先生が心配してしまう。
トラブルはあったが、まだ課外授業中だから騒ぎになってるかもしれない。
「そろそろ戻ろう、えーっと貴方の名前は…」
「名はありません」
「イーリス…様にはなんて言われてたの?」
「イーリス様は元の主、元の主の名付けた名は使わない決まりなのです…エル様がお好きにお呼びください」
「…え、えーっと…じゃあ…ノア!」
俺はとっさに頭の中で浮かび上がった名前を口にした。
ノアとは生前施設で飼っていたハムスターの名前だった。
ハムスターのノアも毛並みが真っ白で青年に似ていると感じた。
青年も気に入ってくれたのは嬉しそうにしてくれて「私の名は今日からノアです」と言ってくれた。
ノアが俺の手を握り、恐る恐る握り返すと視界が光ってもう目が覚めるのだと感じた。
目を閉じると、唇になにか柔らかいものが触れていた。
それはいつも感じているものだが、ここにはゼロはいなかった筈だけど…
不思議に思って目を開けようとしたらその前に目を手で覆われた。
耳元で「私はいつでも貴方を見守っています」というノアの声が聞こえて意識が遠くなる。
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