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密売集団.

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2マジマジと足を見つめていても何も変哲もない足だ。
ずっと同じ体勢だったから足を伸ばしていたら、カタカタと揺れている音が聞こえた。
目の前を見ると揺れに合わせて、中のぬいぐるみが激しく動いて檻にぶつかっていた。

ぬいぐるみがぶつかる度に檻全体が強い電気に覆われていた。
防犯用の魔法だろうか、でも俺が触った時は何ともなかった。
恐る恐る檻に触ってもやはり普通の鉄だった。

よく分からないが、電気がビリビリしないなら好都合だろう。

ぬいぐるみを助けようと檻を持ち上げてみる。
しかし、何処にも扉らしき扉がなくてどうやって入れたのか不思議だ。
あまり動かすと、またぬいぐるみがビリビリ痺れてしまう。

檻を思いっきり引っ張ってもびくとしない、俺が怪力になったわけではなかったか。
他になにか方法があるだろうかと考えていたら、ぬいぐるみの耳が微かに震えているように見えた。

今のぬいぐるみって生きてるような動きが出来るのかな。

『見つけた…』

「えっ」

脳内に直接響くような不思議な声が聞こえたから周りを見渡すと誰もいなかった。
いるのは俺と大量の荷物と、ぬいぐるみだけだった。
ずっと座っていたぬいぐるみが突然ゆっくりと立ち上がった。

今時のぬいぐるみって高性能なんだなぁ~と自分の足を払うぬいぐるみを見つめる。
二足歩行になったぬいぐるみの瞳が俺を写していた。

ぬいぐるみは檻には電流が流れていて近付けないからからか、少し離れていた。

「君、喋れるの?」

『…私は、使い魔なので』

使い魔、じゃあただのぬいぐるみじゃなかったのか。
いくらアンティークのぬいぐるみでも俺が見た時、ボロボロだったし…電流が流れる檻に入れるわけないか。

耳がピクピクと震えている、不安げな瞳が揺れている…怯えているようだ。
こんな状況だから怖いと感じるのは当たり前だ。

それに俺…ぬいぐるみだと思ってこの子に大変な事をしなかっただろうか。
後ろの切れ目に指を突っ込んで中から紐を引っ張った。

「さっきはごめんね!背中に手を入れて」

『少しくすぐったかっただけ、です』

手を頬に当てて照れてるような仕草で、何だか可愛くみえた。
彼は使い魔なのだろう密売されようとしている、もしかしたらこの前ゼロと言った非公認のお店で売られてしまうのだろうか。

この子に飼い主がいたら、今頃探し回っているのかもしれない。

早くゼロ、来ないかな……今何処にいるんだろう、不安になってきた。

しかし、ゼロが到着する前に突然馬車が急ブレーキを掛けて馬車が大きく傾いて布を越えて外に投げ出された。
すぐ近くで使い魔の子の檻が落ちる音が聞こえて痛む体を必死に動かして檻に向かう。

「大丈夫?」

『…えぇ、なんとか』

使い魔の子ははぁはぁと苦しそうに息を荒げていた。
さっき散々電流が当たっていたから弱っているのかもしれない。
ヤマトの薬があればなんとかなるけど、今の俺は治療が出来ない。

落ちた衝撃で檻が歪んでいるのを見つめていたら目の前に影が落ちる。

馬車から三人の柄が悪い男達がニヤニヤ笑いながら俺と使い魔の子を見つめていた。
手に持っているのは切れ味が良さそうな小型のナイフだ。
使い魔の子を守るように自分の後ろに隠して男達を睨む。

三人の男達の後ろから誰かが歩いて来ているのが見えた。

「ほぅ、その子供が…」

「あぁ、まだ若いからアンタの変態趣味に付き合う体力はあるだろ」

成金風の大柄の男が品定めをするようにジロジロと体を見られて嫌になる。
いやらしい目で舌舐めずりされて、ゾワッと鳥肌が立った。
腕を掴まれて逃げる選択肢を失ってしまった。

使い魔の子がうろうろと檻の中を回っていた。

キレやすいチビデブが舌打ちをして、檻に近付いていく。
さっき触っただけであんなに怒るほど大切にされていたんだ、手荒な真似はしないよね。
不安げに見ていたら、俺の不安は嫌なカタチで的中した。

「テメェが起きてると、商売しにくいんだよ!寝てろ!!」

ガンッと檻を蹴り飛ばして、大きな音を立てて檻が転がった。
バチバチと檻から電流が流れていて、またぬいぐるみのように動かなくてまるで死んでしまったように感じて血の気が引いた。
すぐに駆け寄ろうとするが、グッと腕を引かれて動きを止められる。

ナイフを俺の顔に近付けるその人物は人を殺した事がある犯罪者の顔で、少しでも俺が抵抗すれば殺されてしまう。
でもこのまま見てる事しか出来なくてされるがままなんて嫌だ!

目の前でナイフをちらつかせて俺に恐怖を与えていた。

でもゼロが来るのを待っていられない、早くあの子を病院に運ばなくては…
先生がいる場所まで戻れば、医者もいたから治せる筈だ。

俺がいなくなって騒ぎになってるかもしれないし、ここを抜け出して何処かに行けば誰かしら会えるだろう。

だからナイフを持つ男の腕を狙い、拳を突き出した。
手応えを感じた、小さく呻き声を上げて指先に力が入らずナイフが地面に落ちた。
男の腕を思いっきり前に引いて背負い投げした。

これならイケる、もう一人俺の腕を掴んでいる成金風の男をどうにかすれば使い魔の子を連れて逃げられる。
そう思っていた俺はとても甘かったのだとすぐに気付いた。

学校でいじめっ子を撃退出来たとしても、ここはそんな甘いところじゃない。
本物の犯罪者が目の前にいるんだ…生ぬるい攻撃じゃどうにかなるわけがない。

大きな銃声と共に足に広がる熱と痛みを感じながら、地面に倒れた。
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