6 / 85
誕生日で反抗期
しおりを挟む
屋敷を出て近くの茂みにしゃがみ小さく丸まり隠れる。
するとやはり追いかけてきたゼロは、周りを見渡しながら何処かに向かって走っていった。
あんなに必死な顔をして俺を探してくれるゼロを見て、出ていこうとした体を何とか抑えてゼロが見えなくなったところで茂みから顔を出す。
心の中でごめんなさいと謝りながらここでゼロの言う通り何もしないわけにはいかないと思った。
なにもしないで家に帰るわけにはいかず、なにか方法はないか街をぶらつく事にした。
ゼロに酷い事をしてしまった、その気持ちが俺の気分を沈ませる。
でも、俺は本気だとゼロに口で言うより分かってくれるかもしれない。
俺は誰がなんて言おうと、ゼロを助けたい気持ちは変わらない。
街の広場に入ると、騎士団の人が何人かいた。
騎士団は鍛えるには最適だろうが頼みたくはない。
ゼロが闇堕ちをした原因である、差別の象徴だからだ。
魔法使いを至極だと思い、人間は魔法使いの奴隷だと思っている酷い集団だ。
ただの人間も少ないが騎士団にはいるが、扱いは酷いものだ。
イジメが可愛く感じるほどの体罰が当たり前になって、死んでしまう騎士も珍しくはない。
ゼロでなくてもそんな騎士団に絶望する人はいるだろう。
でも、現実の話…騎士団と同じ考えの魔法使いがほとんどだから暴動が起きたりする事がなく、むしろ共感される。
虐げられている人間達も、小さな頃からこの世界を見ているからかそれが可笑しい事だなんて思わない。
俺はゲームで騎士団の酷い差別を知り、心が痛かったから可笑しい事は可笑しいと思う。
でも、もし俺に生前の記憶がなかったら酷い扱いを受け入れていたのかもしれない。
騎士団に人間だと気付かれたら何をされるか分からない。
見た目では魔法使いと変わりはないが、なにがきっかけで気付かれるのか分からない。
人間はこうしてビクビクしないと生きていけない世界なんだ。
人間は抵抗するのも許されない、魔法使いに頭を下げて生きていかないといけない。
そう考えたら俺は恵まれている、差別なくゼロに本当の家族のように大切にされている。
なのに……俺はゼロが心配してくれたのに家を飛び出した。
傍を見るとそこは最近オープンしたばかりのお洒落な外観のカフェだった。
ゼロと一緒に街に出かけた時、いつか一緒に行こうと約束していた事を思い出した。
ゼロは怒ってるかもしれないが、謝ろう…許してもらえるまで…
ゼロが闇堕ちするかもしれないと、焦っていた気持ちがあった。
焦ってもどうしようもない、ゼロだって俺にダメだと言うのはなにか考えがあっての事なのかもしれない。
だんだんと冷静さを取り戻して、俺は帰ろうと屋敷に足を向けた。
「エル様?」
「あ、庭師さん」
いきなり名前を呼ばれたからゼロかと焦ってしまったが、声の主を探していたら俺の目の前に庭師がいた。
もしかしてこの人も俺を探していたのだろうか、いろんな人に迷惑掛けてしまったと反省した。
俺、何やってんだろう…生前の何も出来ず死んでしまった自分を変えたかったから周りを見ていなかった。
庭師は落ち込み俯く俺の手を掴んで「お家に帰りましょう」と微笑んだ。
俺はこくんと小さく頷き、庭師と一緒に屋敷に向かって歩き出した。
そしてその異変にすぐに気が付いて足を止めて庭師を見つめた。
屋敷がある方向とは反対方向を歩いている気がする。
なんでだろう、反対方向だから近道というわけでもなさそうだ。
「俺の家、あっちなんだけど」
「ゼロ様のお屋敷には戻りません」
え?何?なんで?だって家に帰ろうって言っていたではないか。
俺の家はゼロが待ってくれるあの暖かい家だけなんだ。
いきなり庭師は俺の口を押さえつけて、まるで米俵を担ぐように担ぎ出した。
突然の浮いた感覚に怖くてじたばた暴れるが、すぐに人気のない裏路地に入った。
人目がつくところでこんな事をしても、誰も助けてはくれない…皆関わりたくないから見て見ぬふりだ。
人攫いなんて珍しくもない、それに攫うのはきっと人間の子供だ……そう冷めた瞳で一瞬目が合いすぐに逸らされた。
「ご安心下さいエル様、何不自由がない暮らしをお約束致します」
「んー!んん!!」
「聞くところによれば、エル様はゼロ様の実の兄弟ではないそうで…孤児だったと」
庭師は口を吊り上げて嫌な笑みを向けながら話している。
俺が孤児だと知っているのはゼロだけだ、確かこの人は俺が来る前からいた庭師だ。
ゼロは俺のために庭を綺麗にしようとして、庭師に言ってあのバラの花も植えてくれたんだ。
ゼロが俺が孤児だと言いふらすとは思えないから、ゼロが俺を連れて帰ってきたところを見たごく一部の使用人の中の庭師だろう。
自分の身も守れなくて弱いくせに反抗して飛び出して、俺……本当にバカだよな…使用人だからって確認もしないで簡単に信用して…これじゃあゼロが心配するのも無理はない。
もう、会えなくなるのかな…あの優しくて大好きな人に…
「エル様はお屋敷に来てから一度も魔力の波動を感じませんでした、きっとただの人間なのでしょう…大丈夫ですよ…私が大切に育てますから」
「………」
「エル様はゼロ様よりかなり劣った容姿ですが、男を無意識に誘うすべすべの肌に一目で目を奪われ…純真無垢なそのお顔を私色に染めたいと思っていましたよ」
舐めるように俺を見つめる庭師に全身に鳥肌が立った。
なんでこんな変態に好かれてるんだ俺は!絶対嫌だ!
「私のお嫁さんになるんですよ」と鼻息荒く気持ちの悪い事を言っている男を見て死ぬ以外の地獄が待っていると感じた。
早く逃げないと、男としてのなにかを失う気がしてならない!
庭師は体格はひょろひょろしていて筋肉なんてなさそうなのに暴れても全然びくともしない。
せめて口の手を外せれば大声を出して誰かが助けてくれるかもしれないと思うが、両手で掴むが全然離れない。
「暴れないで下さい、もうすぐ新居に到着しますから」
「んんんんっ!!!」
「そこで何をしているの?」
誰かの声が後ろから聞こえてきて庭師は足を止めた。
俺からも後ろだから誰が声を掛けたのか分からなくて、見たくても庭師により首が動かせなかった。
するとやはり追いかけてきたゼロは、周りを見渡しながら何処かに向かって走っていった。
あんなに必死な顔をして俺を探してくれるゼロを見て、出ていこうとした体を何とか抑えてゼロが見えなくなったところで茂みから顔を出す。
心の中でごめんなさいと謝りながらここでゼロの言う通り何もしないわけにはいかないと思った。
なにもしないで家に帰るわけにはいかず、なにか方法はないか街をぶらつく事にした。
ゼロに酷い事をしてしまった、その気持ちが俺の気分を沈ませる。
でも、俺は本気だとゼロに口で言うより分かってくれるかもしれない。
俺は誰がなんて言おうと、ゼロを助けたい気持ちは変わらない。
街の広場に入ると、騎士団の人が何人かいた。
騎士団は鍛えるには最適だろうが頼みたくはない。
ゼロが闇堕ちをした原因である、差別の象徴だからだ。
魔法使いを至極だと思い、人間は魔法使いの奴隷だと思っている酷い集団だ。
ただの人間も少ないが騎士団にはいるが、扱いは酷いものだ。
イジメが可愛く感じるほどの体罰が当たり前になって、死んでしまう騎士も珍しくはない。
ゼロでなくてもそんな騎士団に絶望する人はいるだろう。
でも、現実の話…騎士団と同じ考えの魔法使いがほとんどだから暴動が起きたりする事がなく、むしろ共感される。
虐げられている人間達も、小さな頃からこの世界を見ているからかそれが可笑しい事だなんて思わない。
俺はゲームで騎士団の酷い差別を知り、心が痛かったから可笑しい事は可笑しいと思う。
でも、もし俺に生前の記憶がなかったら酷い扱いを受け入れていたのかもしれない。
騎士団に人間だと気付かれたら何をされるか分からない。
見た目では魔法使いと変わりはないが、なにがきっかけで気付かれるのか分からない。
人間はこうしてビクビクしないと生きていけない世界なんだ。
人間は抵抗するのも許されない、魔法使いに頭を下げて生きていかないといけない。
そう考えたら俺は恵まれている、差別なくゼロに本当の家族のように大切にされている。
なのに……俺はゼロが心配してくれたのに家を飛び出した。
傍を見るとそこは最近オープンしたばかりのお洒落な外観のカフェだった。
ゼロと一緒に街に出かけた時、いつか一緒に行こうと約束していた事を思い出した。
ゼロは怒ってるかもしれないが、謝ろう…許してもらえるまで…
ゼロが闇堕ちするかもしれないと、焦っていた気持ちがあった。
焦ってもどうしようもない、ゼロだって俺にダメだと言うのはなにか考えがあっての事なのかもしれない。
だんだんと冷静さを取り戻して、俺は帰ろうと屋敷に足を向けた。
「エル様?」
「あ、庭師さん」
いきなり名前を呼ばれたからゼロかと焦ってしまったが、声の主を探していたら俺の目の前に庭師がいた。
もしかしてこの人も俺を探していたのだろうか、いろんな人に迷惑掛けてしまったと反省した。
俺、何やってんだろう…生前の何も出来ず死んでしまった自分を変えたかったから周りを見ていなかった。
庭師は落ち込み俯く俺の手を掴んで「お家に帰りましょう」と微笑んだ。
俺はこくんと小さく頷き、庭師と一緒に屋敷に向かって歩き出した。
そしてその異変にすぐに気が付いて足を止めて庭師を見つめた。
屋敷がある方向とは反対方向を歩いている気がする。
なんでだろう、反対方向だから近道というわけでもなさそうだ。
「俺の家、あっちなんだけど」
「ゼロ様のお屋敷には戻りません」
え?何?なんで?だって家に帰ろうって言っていたではないか。
俺の家はゼロが待ってくれるあの暖かい家だけなんだ。
いきなり庭師は俺の口を押さえつけて、まるで米俵を担ぐように担ぎ出した。
突然の浮いた感覚に怖くてじたばた暴れるが、すぐに人気のない裏路地に入った。
人目がつくところでこんな事をしても、誰も助けてはくれない…皆関わりたくないから見て見ぬふりだ。
人攫いなんて珍しくもない、それに攫うのはきっと人間の子供だ……そう冷めた瞳で一瞬目が合いすぐに逸らされた。
「ご安心下さいエル様、何不自由がない暮らしをお約束致します」
「んー!んん!!」
「聞くところによれば、エル様はゼロ様の実の兄弟ではないそうで…孤児だったと」
庭師は口を吊り上げて嫌な笑みを向けながら話している。
俺が孤児だと知っているのはゼロだけだ、確かこの人は俺が来る前からいた庭師だ。
ゼロは俺のために庭を綺麗にしようとして、庭師に言ってあのバラの花も植えてくれたんだ。
ゼロが俺が孤児だと言いふらすとは思えないから、ゼロが俺を連れて帰ってきたところを見たごく一部の使用人の中の庭師だろう。
自分の身も守れなくて弱いくせに反抗して飛び出して、俺……本当にバカだよな…使用人だからって確認もしないで簡単に信用して…これじゃあゼロが心配するのも無理はない。
もう、会えなくなるのかな…あの優しくて大好きな人に…
「エル様はお屋敷に来てから一度も魔力の波動を感じませんでした、きっとただの人間なのでしょう…大丈夫ですよ…私が大切に育てますから」
「………」
「エル様はゼロ様よりかなり劣った容姿ですが、男を無意識に誘うすべすべの肌に一目で目を奪われ…純真無垢なそのお顔を私色に染めたいと思っていましたよ」
舐めるように俺を見つめる庭師に全身に鳥肌が立った。
なんでこんな変態に好かれてるんだ俺は!絶対嫌だ!
「私のお嫁さんになるんですよ」と鼻息荒く気持ちの悪い事を言っている男を見て死ぬ以外の地獄が待っていると感じた。
早く逃げないと、男としてのなにかを失う気がしてならない!
庭師は体格はひょろひょろしていて筋肉なんてなさそうなのに暴れても全然びくともしない。
せめて口の手を外せれば大声を出して誰かが助けてくれるかもしれないと思うが、両手で掴むが全然離れない。
「暴れないで下さい、もうすぐ新居に到着しますから」
「んんんんっ!!!」
「そこで何をしているの?」
誰かの声が後ろから聞こえてきて庭師は足を止めた。
俺からも後ろだから誰が声を掛けたのか分からなくて、見たくても庭師により首が動かせなかった。
10
お気に入りに追加
1,672
あなたにおすすめの小説
異世界転生してハーレム作れる能力を手に入れたのに男しかいない世界だった
藤いろ
BL
好きなキャラが男の娘でショック死した主人公。転生の時に貰った能力は皆が自分を愛し何でも言う事を喜んで聞く「ハーレム」。しかし転生した異世界は男しかいない世界だった。
毎週水曜に更新予定です。
宜しければご感想など頂けたら参考にも励みにもなりますのでよろしくお願いいたします。
悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m
転生したらBLゲームの攻略キャラになってたんですけど!
朝比奈歩
BL
ーーある日目覚めたら、おれはおれの『最推し』になっていた?!
腐男子だった主人公は、生まれ変わったら生前プレイしていたBLゲームの「攻略対象」に転生してしまった。
そのBLゲームとは、本来人気ダンスヴォーカルグループのマネージャーになってメンバーと恋愛していく『君は最推し!』。
主人公、凛は色々な問題に巻き込まれながらも、メンバー皆に愛されながらその問題に立ち向かっていく!
表紙イラストは入相むみ様に描いていただきました!
R-18作品は別で分けてあります。
※この物語はフィクションです。
えっと、先日まで留学していたのに、どうやってその方を虐めるんですか?
水垣するめ
恋愛
公爵令嬢のローズ・ブライトはレイ・ブラウン王子と婚約していた。
婚約していた当初は仲が良かった。
しかし年月を重ねるに連れ、会う時間が少なくなり、パーティー会場でしか顔を合わさないようになった。
そして学園に上がると、レイはとある男爵令嬢に恋心を抱くようになった。
これまでレイのために厳しい王妃教育に耐えていたのに裏切られたローズはレイへの恋心も冷めた。
そして留学を決意する。
しかし帰ってきた瞬間、レイはローズに婚約破棄を叩きつけた。
「ローズ・ブライト! ナタリーを虐めた罪でお前との婚約を破棄する!」
えっと、先日まで留学していたのに、どうやってその方を虐めるんですか?
悪役令嬢はヒロインを虐めている場合ではない
四宮 あか
恋愛
書籍発売中です。
書籍化のため、1章6月30日をもちまして非公開といたしました。
これまで読んでくださりありがとうございました!
悪役令嬢に転生してしまったけれど、ヒロインを虐めてる場合ではない。
悪役にされては損である、婚約者のことは潔く諦めて別のことを楽しむとしましょう。
そう、まずはカフェでお茶を飲みながら……のはずが、厄介事にどんどん巻き込まれて……。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
錬金術師カレンはもう妥協しません
山梨ネコ
ファンタジー
「おまえとの婚約は破棄させてもらう」
前は病弱だったものの今は現在エリート街道を驀進中の婚約者に捨てられた、Fランク錬金術師のカレン。
病弱な頃、支えてあげたのは誰だと思っているのか。
自棄酒に溺れたカレンは、弾みでとんでもない条件を付けてとある依頼を受けてしまう。
それは『血筋の祝福』という、受け継いだ膨大な魔力によって苦しむ呪いにかかった甥っ子を救ってほしいという貴族からの依頼だった。
依頼内容はともかくとして問題は、報酬は思いのままというその依頼に、達成報酬としてカレンが依頼人との結婚を望んでしまったことだった。
王都で今一番結婚したい男、ユリウス・エーレルト。
前世も今世も妥協して付き合ったはずの男に振られたカレンは、もう妥協はするまいと、美しく強く家柄がいいという、三国一の男を所望してしまったのだった。
ともかくは依頼達成のため、錬金術師としてカレンはポーションを作り出す。
仕事を通じて様々な人々と関わりながら、カレンの心境に変化が訪れていく。
錬金術師カレンの新しい人生が幕を開ける。
※小説家になろうにも投稿中。
貴方へ愛を伝え続けてきましたが、もう限界です。
あおい
恋愛
貴方に愛を伝えてもほぼ無意味だと私は気づきました。婚約相手は学園に入ってから、ずっと沢山の女性と遊んでばかり。それに加えて、私に沢山の暴言を仰った。政略婚約は母を見て大変だと知っていたので、愛のある結婚をしようと努力したつもりでしたが、貴方には届きませんでしたね。もう、諦めますわ。
貴方の為に着飾る事も、髪を伸ばす事も、止めます。私も自由にしたいので貴方も好きにおやりになって。
…あの、今更謝るなんてどういうつもりなんです?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる