18 / 22
時代の始まり
17話
しおりを挟む
「さて、私の相手はあなた方ですか」
上級悪魔のヒルデスハイムも指示された場所で戦闘を開始しようとしていた。
彼のスキルは《鑑定》。
ありふれたスキルではあるが、永い時を過ごす悪魔の《鑑定》は物の良しあしを見分けるだけに留まらない。
戦う相手の情報を読み取り、戦力判断ができる。
彼は個人としての強さは悪魔の中では高い方ではないのだが、そのスキルによって戦う相手を選び、生き続けているのであった。
ただし、そうやって培った戦闘能力は人間に太刀打ちできるものではない。
「(そのはずなのですがね……)」
ランドールを従えているあの人間。あれは別格だ。
自分の《鑑定》スキルを全てはじいてしまった。
彼はいままでどんな強大な相手でもその強さの一端くらいは理解することが出来た。
それによって逃げたりしていたのだから。
「(しかし、あれは無理でしょうね)」
それほどまでにユウトの存在は埒外であった。
「悪魔め!我らが討伐してくれるわ!」
ヒルデスハイムは自らの前に立ちはだかる人間たちを一瞥し、すぐに興味を失う。
「敵」と呼ぶにはあまりにも弱かったからだ。
それもそのはず。
ユウトは戦闘が得意ではないヒルデスハイムを訓練生のいるところに送っていたのだから。
「(こちらのことは筒抜けですか……。いやはや、一体何者なのやら……)」
訓練生の攻撃をするすると避けながらさらに考えを巡らせる。
「(複数のスキルを持っているようだというところまでは察しがつきますが、さて。どういった絡繰りなのでしょう?)」
本来、スキルは一個人に一つである。
それは人間も悪魔も例外ではない。
「くそっ! なぜ攻撃が当たらない!」
その間も攻撃をし続けていた訓練生たちはほぼ全員息があがっている。
息のあがっていない数人は実力があるが故に既に諦めて静観している者たちだ。
《鑑定》を極めると次に相手が何をしようとするのかが筋肉の動きなどを見ればわかるようになる。魔法も口の筋肉の動きで予想できる。
洗練されていない予備動作だらけの訓練生の攻撃ではヒルデスハイムに一撃も加えることはできない。
「そろそろですかね」
考えを打ち切り、訓練生に向き直る。
「お疲れさまでした。《眠りの歌》」
対象者にしか聞こえない悪魔の歌が辺りに響く。
彼は魔法も得意というわけではないので、相手を消耗させてからこういった状態異常を引き起こす魔法を使うことが多い。
相手が悪魔という極限状態で戦っていた訓練生たちは次々に眠りに落ちていく。
まぁ、ヒルデスハイムにしてみれば戦闘をしているとすら感じていなかったのだが。
「さて、これ以上の危害をあなた方に加えるつもりはございませんよ」
初めから諦めていた見どころのある数人に声をかける。
「ユウト様は情報をお求めのようですからね。この国のことを色々と教えていただきましょうか?」
彼は戦いもせず、持ち場を制圧したのだった。
上級悪魔のヒルデスハイムも指示された場所で戦闘を開始しようとしていた。
彼のスキルは《鑑定》。
ありふれたスキルではあるが、永い時を過ごす悪魔の《鑑定》は物の良しあしを見分けるだけに留まらない。
戦う相手の情報を読み取り、戦力判断ができる。
彼は個人としての強さは悪魔の中では高い方ではないのだが、そのスキルによって戦う相手を選び、生き続けているのであった。
ただし、そうやって培った戦闘能力は人間に太刀打ちできるものではない。
「(そのはずなのですがね……)」
ランドールを従えているあの人間。あれは別格だ。
自分の《鑑定》スキルを全てはじいてしまった。
彼はいままでどんな強大な相手でもその強さの一端くらいは理解することが出来た。
それによって逃げたりしていたのだから。
「(しかし、あれは無理でしょうね)」
それほどまでにユウトの存在は埒外であった。
「悪魔め!我らが討伐してくれるわ!」
ヒルデスハイムは自らの前に立ちはだかる人間たちを一瞥し、すぐに興味を失う。
「敵」と呼ぶにはあまりにも弱かったからだ。
それもそのはず。
ユウトは戦闘が得意ではないヒルデスハイムを訓練生のいるところに送っていたのだから。
「(こちらのことは筒抜けですか……。いやはや、一体何者なのやら……)」
訓練生の攻撃をするすると避けながらさらに考えを巡らせる。
「(複数のスキルを持っているようだというところまでは察しがつきますが、さて。どういった絡繰りなのでしょう?)」
本来、スキルは一個人に一つである。
それは人間も悪魔も例外ではない。
「くそっ! なぜ攻撃が当たらない!」
その間も攻撃をし続けていた訓練生たちはほぼ全員息があがっている。
息のあがっていない数人は実力があるが故に既に諦めて静観している者たちだ。
《鑑定》を極めると次に相手が何をしようとするのかが筋肉の動きなどを見ればわかるようになる。魔法も口の筋肉の動きで予想できる。
洗練されていない予備動作だらけの訓練生の攻撃ではヒルデスハイムに一撃も加えることはできない。
「そろそろですかね」
考えを打ち切り、訓練生に向き直る。
「お疲れさまでした。《眠りの歌》」
対象者にしか聞こえない悪魔の歌が辺りに響く。
彼は魔法も得意というわけではないので、相手を消耗させてからこういった状態異常を引き起こす魔法を使うことが多い。
相手が悪魔という極限状態で戦っていた訓練生たちは次々に眠りに落ちていく。
まぁ、ヒルデスハイムにしてみれば戦闘をしているとすら感じていなかったのだが。
「さて、これ以上の危害をあなた方に加えるつもりはございませんよ」
初めから諦めていた見どころのある数人に声をかける。
「ユウト様は情報をお求めのようですからね。この国のことを色々と教えていただきましょうか?」
彼は戦いもせず、持ち場を制圧したのだった。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
パーティーから追放され婚約者を寝取られ家から勘当、の三拍子揃った元貴族は、いずれ竜をも倒す大英雄へ ~もはやマイナスからの成り上がり英雄譚~
一条おかゆ
ファンタジー
貴族の青年、イオは冒険者パーティーの中衛。
彼はレベルの低さゆえにパーティーを追放され、さらに婚約者を寝取られ、家からも追放されてしまう。
全てを失って悲しみに打ちひしがれるイオだったが、騎士学校時代の同級生、ベガに拾われる。
「──イオを勧誘しにきたんだ」
ベガと二人で新たなパーティーを組んだイオ。
ダンジョンへと向かい、そこで自身の本当の才能──『対人能力』に気が付いた。
そして心機一転。
「前よりも強いパーティーを作って、前よりも良い婚約者を貰って、前よりも格の高い家の者となる」
今までの全てを見返すことを目標に、彼は成り上がることを決意する。
これは、そんな英雄譚。
悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました
葉月キツネ
ファンタジー
目が覚めると昔やり込んだ乙女ゲーム「白銀の騎士物語」の悪役令嬢フランソワになっていた!
本来ならメインヒロインの引き立て役になるはずの私…だけどせっかくこんな乙女ゲームのキャラになれたのなら思うがままにしないと勿体ないわ!
推しを含めたイケメン近衛騎士で私を囲ってもらって第二の人生楽しみます
実の妹が前世の嫁だったらしいのだが(困惑)
七三 一二十
ファンタジー
ある朝、俺は突然、前世で異世界の勇者だったことを思い出した。
勇者には聖女の恋人がいた。たおやかで美しい彼女の面影を思い浮かべるほど、現世でもみかけた気がしてくる俺。
頭を抱えているとドタドタ足音をたてて、妹が部屋に駆け込んできた。
「にいちゃんっ!」
翡翠色の瞳に輝くような金髪、これまで意識しなかったけど超整った顔立ち…俺の懸念は的中した。妹は前世の恋人、”光の聖女”の転生体だったのだ。しかも俺と同時に、前世の記憶を取り戻していた。
気まずさに懊悩する俺をよそに、アホアホな妹は躊躇なく俺にキスを迫ってくる!
「せっかく記憶が戻ったんだから、ちいさいこと気にするのはなしにしよーよ。ギブミーキース、ギブミーキース…」
「戦後か!」
前世の恋人兼聖女の妹から、元勇者な俺は貞節とモラルと世間体を守れるのだろうか…というか記憶が戻った途端、妹が可愛くみえてしょうがねーな、ちくしょー!(血涙)
※不定期更新となります。どうかご了承のほどを。
※本作は小説家になろう様にも掲載しております。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
勇者のハーレムパーティを追放された男が『実は別にヒロインが居るから気にしないで生活する』ような物語(仮)
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが
別に気にも留めていなかった。
元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、彼には時期的にやりたい事があったからだ。
リヒトのやりたかった事、それは、元勇者のレイラが奴隷オークションに出されると聞き、それに参加する事だった。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
そんな二人がどうやって生きていくか…それがテーマです。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公になれない筈の二人が主人公、そんな物語です。
最近、感想欄から『人間臭さ』について書いて下さった方がいました。
確かに自分の原点はそこの様な気がしますので書き始めました。
タイトルが実はしっくりこないので、途中で代えるかも知れません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる