12 / 22
時代の始まり
11話
しおりを挟む
「え? なんですか?」
シルも身に覚えがないっぽい。
「あなた様は原初の《魔法使い》であらせられるシルエラ様ですよね?」
みんなは崇拝をやめない。
「おい、とうさ……じゃない。村長。どういうことだ?」
俺は長男にとうさんを呼ぶことを禁止されているのだ。今となってはどうでもいいが一応守ってやるとしよう。
「ユウト、お前は知らなかったか。何百年も前、《時渡》を完成させ、未来へ跳んだとされる《魔法使い》がいたのだ。その方こそがシルエラ様。どこかの未来にシルエラ様が現れた時、その存在を確かめられるようにと絵としてそのお姿は残されていたのだ。その絵の女性とこの方は瓜二つ。反応を見るに名前も一致しているようだ。なればこの方が原初の《魔法使い》であると断じるに足りると考えられる」
ふむ。
筋は通ってるな。
しかし、絵だと?
絵など決して精度の高いものではなく、このシルエラと瓜二つと言えるようなものができるとは思えないんだが……。
「その絵を見せてもらってもいいか?」
「信じられないのか?いいだろう。今持ってくる。シルエラ様、少々席を外させて頂きます」
そう言って村長は出て行った。
「いいんじゃないんですか? 確認しなくても。《時渡》に言及してるんですから私で間違いないですよ。それよりも今は何かあるんじゃないんですか?」
シルが止めてくるがそういうわけにもいかない。
もしそのような絵が発達していたならその時代のことがよりわかるかもしれない。
その情報の精査は重要だ。
「持ってきたぞ」
「あぁ、ありがとう」
村長が持ってきた絵を見る。
確かにシルが描かれている。
細部までこだわられており、まるでシル自身かのような……。
ん?
「シル、お前これに覚えはあるか?」
「い、いやー、なにぶん昔のことなので……」
お前にとってはすぐ前のことなんじゃないか?
「《残存魔力》」
今の俺なら数百年前のこの書き手を推測することすら可能だろう。
これほどの精度で絵が描けるものがこの絵になんの魔力も込めていないというのは考えにくいからな。
それを辿ればいいだろうと思ったのだが、この魔力パターンは……?
「シル、これお前が残しただろ」
「な、なんのことですかね?」
「答えろ」
「はい……」
《威圧》の効果は絶大だ。
「《複製》と《投影》の合わせ技だな?」
「その通りで……」
「なぜこんなことを?」
「だってちやほやされたいじゃないですか!」
はぁ?
「前はどこに行ってもーーー様、ユウト様の二番煎じみたいな扱いされて! 私だって実はすごいんですよ!? ならこれを残して跳んだ先でこれが残ってたならちやほやされると思ったんです! 実に目論見どおりですね!」
「いや《時渡》先に完成させたの俺……」
「いいじゃないですか、細かいことは!」
「シルエラ様! この村の子、キィラを救ってください!」
俺たちが言い争っていると、切羽詰まってきた大人たちがシルに頭を下げて、懇願してきた。
「子供たちはこの村の宝です。王国の腐敗に巻き込んではならない。しかし、私たちにはどうこうする力もない! どうか! どうか!!」
「わかりました! この私がなんとかしましょう!!」
なんで二つ返事で引き受けてんだよ。
2分後、腕試しという体で嫌がるシルを強引に決闘に持ち込み、叩き潰して君臨する俺の姿がそこにあった。
大人たちはあんぐりだ。
「勝てるわけ……ないじゃないですか……」
息も絶え絶えのシルが今さらながら文句を言ってくる。
「しょうがないだろ。こうでもしないと俺がお前より上だってわかってもらえないだろ」
《勇者》時代の《完全回復》をかけてやりながらシルを労う。
俺はみんなの方を振り返って笑う。
「さぁ、これからの話をしよう」
シルも身に覚えがないっぽい。
「あなた様は原初の《魔法使い》であらせられるシルエラ様ですよね?」
みんなは崇拝をやめない。
「おい、とうさ……じゃない。村長。どういうことだ?」
俺は長男にとうさんを呼ぶことを禁止されているのだ。今となってはどうでもいいが一応守ってやるとしよう。
「ユウト、お前は知らなかったか。何百年も前、《時渡》を完成させ、未来へ跳んだとされる《魔法使い》がいたのだ。その方こそがシルエラ様。どこかの未来にシルエラ様が現れた時、その存在を確かめられるようにと絵としてそのお姿は残されていたのだ。その絵の女性とこの方は瓜二つ。反応を見るに名前も一致しているようだ。なればこの方が原初の《魔法使い》であると断じるに足りると考えられる」
ふむ。
筋は通ってるな。
しかし、絵だと?
絵など決して精度の高いものではなく、このシルエラと瓜二つと言えるようなものができるとは思えないんだが……。
「その絵を見せてもらってもいいか?」
「信じられないのか?いいだろう。今持ってくる。シルエラ様、少々席を外させて頂きます」
そう言って村長は出て行った。
「いいんじゃないんですか? 確認しなくても。《時渡》に言及してるんですから私で間違いないですよ。それよりも今は何かあるんじゃないんですか?」
シルが止めてくるがそういうわけにもいかない。
もしそのような絵が発達していたならその時代のことがよりわかるかもしれない。
その情報の精査は重要だ。
「持ってきたぞ」
「あぁ、ありがとう」
村長が持ってきた絵を見る。
確かにシルが描かれている。
細部までこだわられており、まるでシル自身かのような……。
ん?
「シル、お前これに覚えはあるか?」
「い、いやー、なにぶん昔のことなので……」
お前にとってはすぐ前のことなんじゃないか?
「《残存魔力》」
今の俺なら数百年前のこの書き手を推測することすら可能だろう。
これほどの精度で絵が描けるものがこの絵になんの魔力も込めていないというのは考えにくいからな。
それを辿ればいいだろうと思ったのだが、この魔力パターンは……?
「シル、これお前が残しただろ」
「な、なんのことですかね?」
「答えろ」
「はい……」
《威圧》の効果は絶大だ。
「《複製》と《投影》の合わせ技だな?」
「その通りで……」
「なぜこんなことを?」
「だってちやほやされたいじゃないですか!」
はぁ?
「前はどこに行ってもーーー様、ユウト様の二番煎じみたいな扱いされて! 私だって実はすごいんですよ!? ならこれを残して跳んだ先でこれが残ってたならちやほやされると思ったんです! 実に目論見どおりですね!」
「いや《時渡》先に完成させたの俺……」
「いいじゃないですか、細かいことは!」
「シルエラ様! この村の子、キィラを救ってください!」
俺たちが言い争っていると、切羽詰まってきた大人たちがシルに頭を下げて、懇願してきた。
「子供たちはこの村の宝です。王国の腐敗に巻き込んではならない。しかし、私たちにはどうこうする力もない! どうか! どうか!!」
「わかりました! この私がなんとかしましょう!!」
なんで二つ返事で引き受けてんだよ。
2分後、腕試しという体で嫌がるシルを強引に決闘に持ち込み、叩き潰して君臨する俺の姿がそこにあった。
大人たちはあんぐりだ。
「勝てるわけ……ないじゃないですか……」
息も絶え絶えのシルが今さらながら文句を言ってくる。
「しょうがないだろ。こうでもしないと俺がお前より上だってわかってもらえないだろ」
《勇者》時代の《完全回復》をかけてやりながらシルを労う。
俺はみんなの方を振り返って笑う。
「さぁ、これからの話をしよう」
0
お気に入りに追加
19
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる