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冒険者編
冒険者編36 聖騎士・クリター
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なんてことを考えながら報告書を書いていると、気づけば外は夜になっていた。
テントの外に顔を出すとミールが大きい鍋でスープを避難民の人たちに配っているのが見えた。
俺も手伝いに行こう、とテントの中から出た時。先ほどあった騎士に声をかけられた。
「お疲れ様です。しっかり報告書を書いていたようですね。」
「あぁ。今からご飯を食いに行こうとしていたんだ。」
「それなら、ご一緒しても?互いに聞きたいことがあるはずです。」
「…分かった。テントの中で話そう。」
俺はそういって、ミールから二つのスープを貰って自分のテントに戻り、座っている騎士にそのスープを差し出した。
「ありがとうございます。」
「聞きたいこと一つめだ。お前は誰だ?」
「ははっ、なかなかに図々しいですね。……はい、まずは自己紹介をしましょう。
…私は王都騎士・四聖騎士が一人、永遠たる剣聖、クリター・ゼウス。聖剣の担い手となる聖騎士です。」
「な!?は、聖騎士?なんでこんなところにいるんだよ。」
「カルナ君に言われましてね。シータに面白いやつがいる、と。
…行こう行こうと思っていたんですが、忙しすぎてこうやってシータに来ることができたのはカルナ君に言われてから三年後になってしまったわけです。」
「そうか、聖騎士ってことはカルナと知り合いなのか。」
「もちろん。きっとカルナ君の言っていたおもしろいやつというのはあなたのことでしょうね。一目見てわかりました。それで、あなたの名前は?」
「あぁ、そうだな。俺の名前はキリアス・ルドルーファ。ただの冒険者だ。
それで、この状況はいったいどういうことなんだ?けが人があまりにも少なすぎると思うんだが、……」
「……私だってこの状況のことを深く理解してるわけじゃありません。けが人が少ないということに関しては、私が治療魔術を使ったからです。この町全体に治癒魔術を使いましたので、……」
俺が気絶する前に見たあの魔力はこいつの魔術だったのか。あれほどの魔術を行使するとは、聖騎士のくせに魔力量もいかれてる…、と。
「そうか、助かった。お前が治癒魔術を使ってなかったら大勢の人が死んでいたはずだ。」
「本当にびっくりしましたよ。初めてのシータを楽しもうと向かっていたら見えてきたのはほとんどの建物が半壊している、崩壊した町だったのですから。とっさに範囲治癒をしました。その後に町を散策して状況を何となく理解したので、こうやってたくさんの人と一緒に街を復興しています。」
「聖騎士様にこんなことをさせて悪いな。それに、クリター・ゼウスってことはあんた王族だろ?」
「………………。驚かないんですね。私が王族でも、」
「俺はカルナと友達だぞ。聖騎士がどういうものかは何となく分かってるつもりだ。それに王族とか貴族とかで態度を変えたくない。めんどいし。」
クリターはぽかんという顔を一瞬した後、ふっと笑い話し出した。
「確かに、あなたは面白いですね。私の名前を聞いた瞬間に態度を急変してくる人はたくさんいるのに、あなたはそうじゃない。……目上の人への態度がなってないというとそれまでですが。……それで、私もあなたに聞きたいことがあります。あの竜人を倒したのはあなたですね?」
状況を理解したってのはそういうことか。竜人の死体を見たんだな。それで竜人がこの町で暴れたことを理解した、と。特にうそをつく必要はないだろう。
「あぁ、俺だ。というか、竜人のことを知ってるのか?発見されたのは初めてらしいが、…」
「そこに関してはミールさんに教えてもらいました。そして、私が聞きたいのはどうやって竜人を倒したのか、ということです。
この町に近づいていた時からとんでもない魔力を持った者同士が戦っているのは分かりました。しかし、あなたからその魔力は感じない。本当に微力な魔力しか感じない。
…それだけではありません。あの竜人の皮膚はなかなかのものでした。相当な実力者、剣聖と呼ばれる者の本気の一撃クラスでないとあの皮膚を切ることは不可能。あれほど硬質なものは私も見たことがないです。それにその切断面は通常のものには見えませんでした。それらすべてを説明してください。」
なぜか、急に多くの質問をしてきた。声のトーンも、顔の表情もさっきまでと同じだったが、俺を見る目だけが俺を疑う目に代わっているのが分かった。
「あぁ、説明がめんどくさいな。聞かれた順に答えていくぞ。
まず、あの竜人と戦っていたのは俺の精霊だ。最後、竜人を倒すときはアーティファクトを使って俺の魔力を底上げしていたから魔力量が多くなっていた。
で次、あの竜人を倒す方法に関してだが、俺は普通の人間が持っていない特別な魔術を持っている。切断面がどうなのかは見てないからわからん。
……どうだ?俺からできる説明はこれだけ。嘘は一つもついていない。もう、俺を疑うような目を向けるな。」
俺の言葉を無視してクリターは俺の目を凝視した。
そのまま数秒たった後に、
「……本当に、嘘はついていないようですね。なかなか信用しがたい証言でしたが、ミールさんのあなたに対して信用度がとても高い以上、私から言えることはありませんね。あなたのことを信用しましょう。
……最後にもう一つ質問してもいいですか?」
「お前はどれだけ俺のことを信用できないんだ。」
「すいませんね、昔からこんなやつなのです。……キリアスさん、邪剣というものをご存じですか?」
邪剣?聖剣ではなく邪剣。
「聞いたことがないな。なんなんだ、それは?」
「そうですか。いえいえ、気にしないでください。すいませんね、もうあなたに対する質問はありません。あなたのことを信用しましょう。」
そういうと、固い表情は笑顔になり、俺を疑うような目は一気に変わった。
不思議だ。人を疑うことは誰にだってある。ただし、こんなに早く人を信用することはあるのだろうか?さっきまでは俺をすぐにでも死刑台に送ってやりたいくらいの目を向けていたのに。……死刑台は言いすぎか。
「なんでそんなにすぐに信用するんだ?疑われていた俺が言うのは何なんだが信用するのが早すぎるんじゃ……?」
「…人のウソというのは、少ないですが瘴気を孕んでいます。聖なる神の加護を受けているものならばそういうものを見分けることも可能。もちろん、期間を要しますがね。
…私は聖騎士になって長い。聖なる神の加護を受けて何年もたっています。嘘をつかれた回数なんて数え切れません。人の瘴気を見分け、嘘を見抜くことはもはや私の特技の一つです。あなたの目には一片の瘴気もなかった。それなら疑う理由はありません。」
何度も嘘をつかれた……か。きっとクリターには嫌な思い出が多いんだろう。本家の王族ならばそういうことも多いはずだ。
そして、俺はさっきの説明の中で不思議に感じたことを聞いた。
「だとしたら、最初から俺に質問をする必要なんてなかったんじゃないのか?今言ってたことが正しいなら俺が嘘をついていなかったことはもうわかってたんだろ。」
「ははっ、それに関してはまた別の事情です。あなたがどういう人間なのかはもうわかりました。どうやら、あなたは良い人間らしい。身の上話でも話しながらご飯を食べようではありませんか。明日からも働いてもらいますので、気力精力をつけなければ。」
そうして、俺たちはスープを食いながら互いのこれまでを語り合った。と、言ってもどちらも語れないことが多いらしい。身の上話の中のほとんどが人に話したくないことなのだ。
なので、俺はクリターからカルナの話を聞いていた。
そうして話していると、途中でミールもテントの中に入ってきて、三人でいろいろな話をした。
何といえばいいのか。初めて見た時の熟練の老騎士という直感はどうやら正しかったらしい。町の人たちが俺のことを孫のように接するようにクリターもそういう態度で俺たちに接してくれているのだ。
王都騎士の愚痴だったり、ほかの冒険者の面白い話など、どうやらクリターの人生経験は多いらしい。身の上話は話したがらないのにそういう話はできるのか。
そうして、夜は過ぎていった。あんな壮絶な戦いがあった夜とは思えないほど、俺たちは笑いあった。
その日以降も夜になるとクリターは俺たちに面白い話を聞かせてくれた。たまには俺たちの話も聞かせて、この一週間でとても仲良くなったように感じる。
そんな一週間が過ぎると、クリターは王都に帰った。もう少し、復興を手伝いたいが、もともと一週間の予定だったから一度王都に帰り、王都に報告。王都騎士団の応援をシータに向かわせるということを約束してくれた。
そして、数日後。実際に王都騎士がシータに来て、復興を手伝ってもらった。王都騎士の中には知り合いも何人かいた。ドンキと一緒に訓練しに行った時に知り合ったのだ。そういうやつらと笑いあいながら仕事をするのは楽しいものだった。
テントの外に顔を出すとミールが大きい鍋でスープを避難民の人たちに配っているのが見えた。
俺も手伝いに行こう、とテントの中から出た時。先ほどあった騎士に声をかけられた。
「お疲れ様です。しっかり報告書を書いていたようですね。」
「あぁ。今からご飯を食いに行こうとしていたんだ。」
「それなら、ご一緒しても?互いに聞きたいことがあるはずです。」
「…分かった。テントの中で話そう。」
俺はそういって、ミールから二つのスープを貰って自分のテントに戻り、座っている騎士にそのスープを差し出した。
「ありがとうございます。」
「聞きたいこと一つめだ。お前は誰だ?」
「ははっ、なかなかに図々しいですね。……はい、まずは自己紹介をしましょう。
…私は王都騎士・四聖騎士が一人、永遠たる剣聖、クリター・ゼウス。聖剣の担い手となる聖騎士です。」
「な!?は、聖騎士?なんでこんなところにいるんだよ。」
「カルナ君に言われましてね。シータに面白いやつがいる、と。
…行こう行こうと思っていたんですが、忙しすぎてこうやってシータに来ることができたのはカルナ君に言われてから三年後になってしまったわけです。」
「そうか、聖騎士ってことはカルナと知り合いなのか。」
「もちろん。きっとカルナ君の言っていたおもしろいやつというのはあなたのことでしょうね。一目見てわかりました。それで、あなたの名前は?」
「あぁ、そうだな。俺の名前はキリアス・ルドルーファ。ただの冒険者だ。
それで、この状況はいったいどういうことなんだ?けが人があまりにも少なすぎると思うんだが、……」
「……私だってこの状況のことを深く理解してるわけじゃありません。けが人が少ないということに関しては、私が治療魔術を使ったからです。この町全体に治癒魔術を使いましたので、……」
俺が気絶する前に見たあの魔力はこいつの魔術だったのか。あれほどの魔術を行使するとは、聖騎士のくせに魔力量もいかれてる…、と。
「そうか、助かった。お前が治癒魔術を使ってなかったら大勢の人が死んでいたはずだ。」
「本当にびっくりしましたよ。初めてのシータを楽しもうと向かっていたら見えてきたのはほとんどの建物が半壊している、崩壊した町だったのですから。とっさに範囲治癒をしました。その後に町を散策して状況を何となく理解したので、こうやってたくさんの人と一緒に街を復興しています。」
「聖騎士様にこんなことをさせて悪いな。それに、クリター・ゼウスってことはあんた王族だろ?」
「………………。驚かないんですね。私が王族でも、」
「俺はカルナと友達だぞ。聖騎士がどういうものかは何となく分かってるつもりだ。それに王族とか貴族とかで態度を変えたくない。めんどいし。」
クリターはぽかんという顔を一瞬した後、ふっと笑い話し出した。
「確かに、あなたは面白いですね。私の名前を聞いた瞬間に態度を急変してくる人はたくさんいるのに、あなたはそうじゃない。……目上の人への態度がなってないというとそれまでですが。……それで、私もあなたに聞きたいことがあります。あの竜人を倒したのはあなたですね?」
状況を理解したってのはそういうことか。竜人の死体を見たんだな。それで竜人がこの町で暴れたことを理解した、と。特にうそをつく必要はないだろう。
「あぁ、俺だ。というか、竜人のことを知ってるのか?発見されたのは初めてらしいが、…」
「そこに関してはミールさんに教えてもらいました。そして、私が聞きたいのはどうやって竜人を倒したのか、ということです。
この町に近づいていた時からとんでもない魔力を持った者同士が戦っているのは分かりました。しかし、あなたからその魔力は感じない。本当に微力な魔力しか感じない。
…それだけではありません。あの竜人の皮膚はなかなかのものでした。相当な実力者、剣聖と呼ばれる者の本気の一撃クラスでないとあの皮膚を切ることは不可能。あれほど硬質なものは私も見たことがないです。それにその切断面は通常のものには見えませんでした。それらすべてを説明してください。」
なぜか、急に多くの質問をしてきた。声のトーンも、顔の表情もさっきまでと同じだったが、俺を見る目だけが俺を疑う目に代わっているのが分かった。
「あぁ、説明がめんどくさいな。聞かれた順に答えていくぞ。
まず、あの竜人と戦っていたのは俺の精霊だ。最後、竜人を倒すときはアーティファクトを使って俺の魔力を底上げしていたから魔力量が多くなっていた。
で次、あの竜人を倒す方法に関してだが、俺は普通の人間が持っていない特別な魔術を持っている。切断面がどうなのかは見てないからわからん。
……どうだ?俺からできる説明はこれだけ。嘘は一つもついていない。もう、俺を疑うような目を向けるな。」
俺の言葉を無視してクリターは俺の目を凝視した。
そのまま数秒たった後に、
「……本当に、嘘はついていないようですね。なかなか信用しがたい証言でしたが、ミールさんのあなたに対して信用度がとても高い以上、私から言えることはありませんね。あなたのことを信用しましょう。
……最後にもう一つ質問してもいいですか?」
「お前はどれだけ俺のことを信用できないんだ。」
「すいませんね、昔からこんなやつなのです。……キリアスさん、邪剣というものをご存じですか?」
邪剣?聖剣ではなく邪剣。
「聞いたことがないな。なんなんだ、それは?」
「そうですか。いえいえ、気にしないでください。すいませんね、もうあなたに対する質問はありません。あなたのことを信用しましょう。」
そういうと、固い表情は笑顔になり、俺を疑うような目は一気に変わった。
不思議だ。人を疑うことは誰にだってある。ただし、こんなに早く人を信用することはあるのだろうか?さっきまでは俺をすぐにでも死刑台に送ってやりたいくらいの目を向けていたのに。……死刑台は言いすぎか。
「なんでそんなにすぐに信用するんだ?疑われていた俺が言うのは何なんだが信用するのが早すぎるんじゃ……?」
「…人のウソというのは、少ないですが瘴気を孕んでいます。聖なる神の加護を受けているものならばそういうものを見分けることも可能。もちろん、期間を要しますがね。
…私は聖騎士になって長い。聖なる神の加護を受けて何年もたっています。嘘をつかれた回数なんて数え切れません。人の瘴気を見分け、嘘を見抜くことはもはや私の特技の一つです。あなたの目には一片の瘴気もなかった。それなら疑う理由はありません。」
何度も嘘をつかれた……か。きっとクリターには嫌な思い出が多いんだろう。本家の王族ならばそういうことも多いはずだ。
そして、俺はさっきの説明の中で不思議に感じたことを聞いた。
「だとしたら、最初から俺に質問をする必要なんてなかったんじゃないのか?今言ってたことが正しいなら俺が嘘をついていなかったことはもうわかってたんだろ。」
「ははっ、それに関してはまた別の事情です。あなたがどういう人間なのかはもうわかりました。どうやら、あなたは良い人間らしい。身の上話でも話しながらご飯を食べようではありませんか。明日からも働いてもらいますので、気力精力をつけなければ。」
そうして、俺たちはスープを食いながら互いのこれまでを語り合った。と、言ってもどちらも語れないことが多いらしい。身の上話の中のほとんどが人に話したくないことなのだ。
なので、俺はクリターからカルナの話を聞いていた。
そうして話していると、途中でミールもテントの中に入ってきて、三人でいろいろな話をした。
何といえばいいのか。初めて見た時の熟練の老騎士という直感はどうやら正しかったらしい。町の人たちが俺のことを孫のように接するようにクリターもそういう態度で俺たちに接してくれているのだ。
王都騎士の愚痴だったり、ほかの冒険者の面白い話など、どうやらクリターの人生経験は多いらしい。身の上話は話したがらないのにそういう話はできるのか。
そうして、夜は過ぎていった。あんな壮絶な戦いがあった夜とは思えないほど、俺たちは笑いあった。
その日以降も夜になるとクリターは俺たちに面白い話を聞かせてくれた。たまには俺たちの話も聞かせて、この一週間でとても仲良くなったように感じる。
そんな一週間が過ぎると、クリターは王都に帰った。もう少し、復興を手伝いたいが、もともと一週間の予定だったから一度王都に帰り、王都に報告。王都騎士団の応援をシータに向かわせるということを約束してくれた。
そして、数日後。実際に王都騎士がシータに来て、復興を手伝ってもらった。王都騎士の中には知り合いも何人かいた。ドンキと一緒に訓練しに行った時に知り合ったのだ。そういうやつらと笑いあいながら仕事をするのは楽しいものだった。
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