ミニュモンの魔女

【ミニュモンの魔女】序章

3話

 ホームで配られる気休め程度の配給。

 味も素っ気も無いパン二つに、湯のようなスープをジャムはガタガタのテーブルに置くと、先程の親分の台詞せりふを思い出していた。

「……話しって何なんだ？」

 うんうん唸うなりながらカチカチのパンを手に取ったその時、かん高い二つの声がした。

「ジャミーの兄貴あにきぃぃぃぃっ！」

「あいきぃぃぃっ！」

 小汚いモップのようなモジャモジャの髪に、ズタ袋を被かぶったようななりの小さな子供達が連れだってジャムの元へと駆かけてくる。

「んー？プムにルヤンじゃねぇか。どうしたよ、そんな慌てて」

 プムと呼ばれた少年は、物凄ものすごい勢いでジャムの腕を揺さぶる。

 真似するように三つくらいにしか見えないルヤンがジャムの足にしがみつく。

「どーしたもこーしたもねぇやっ！聞いてくれよ兄貴っ！」

「わーっ」

「わーかったっ、分かったから引っ付くなおいっ！」

「今日の分の飯っ！」

「飯ぃぃー？？」

「そうだよっ！飯だよっ！ザラッツの奴おれ達の分まで取って食いやがったんだっ！」

「とあれたーっ」

「ザラッツか……」

「なあ兄貴っ、おれ許せねぇっ！あの野郎ちょっと体がでかいからって何でもかんでも自分のもんにしちまうんだっ！」

「ゆうせねぇっ！」

「ま、確かにな」

「だろぉっ！兄貴もそう思うだろぉっ！なあジャミーの兄貴ぃっ、ザラッツの奴をブッ飛ばしてくれよっ！」

「くえよーっ」

「んー……………………分かった」

「兄貴っ！」

「あいきっ」

 ゴツンッ

『きゅ～っ』

 ジャムは幼い二人に容赦なくゲンコツを叩き込む。

「ぐおーっ、何すっだよぉっ！」

「ぅあ～んっ」

「ばっきゃーろぅっ、お前らっ！ここを一体どこだと思っていやがんだっ！」

「はぁ？ホームに決まってんじゃんっ」

「ちっがーうっ！ここはっ、ガイゼトだっ！ここじゃあなあっ、食うか食われるかしかねぇんだよっ！」

「で、でもようっ」

「うるせえっ！泣き言ほざいてる暇ひまがあんなら、今度はお前らがザラッツから飯を奪うばいとってきやがれっ！」

「そんなん無理だよっ！一回りもでかい奴なんだぜっ？」

「無理じゃあねぇっ！つーか……やる前から無理とか言ってんなっ！そんなんで生きて行けると思ってんのかっ！」

「ううぅぅー……わ、分かったよぅ」

「ん～……」

「おいっ」

 シュンとなっている二人に、ジャムは自分のカチカチパンを投げてやる。

「？……兄貴？」

「今日はそれ食ってろ」

「え、でも……」

「二人でそれ食って、鋭気えいきを養え。……明日は負けんじゃねーぞっ！」

「………………おうっっ！」

「おーっ」

 勢いよく駆けて行く二人を見送ると、ジャムはガタンと立ち上がり親分の元に向かった。

「……はぁっ……そう言う俺もほんっと、クソ甘いに違いねぇぜ」