クレハンの涙

藤枝ゆみ太

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【クレハンの涙】第二章

123話

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「頼むからまだやっていてくれよー」

 空が段々と暗くなる中、ようやっと着いた薬問屋に転がり込む。

「ぜぇ……はぁ……ま、まにあっ……ぜぇ……」

 息を切らせつつも、各種薬草、すり鉢、天秤、その他必要な品物を買い占めた。

 フェグが店主の前に抱えた品物をドサリと置くと「兄ちゃん開業でもするのかい?」などと驚かれてしまった。

 宿屋に帰る道はもう大分暗くなってきてきた。

 あちこちの家から漂う夕食の匂いに反応し、フェグの腹が盛大に鳴り出す。

「はぁー、そう言えば、飲まず食わずだった」

 空腹の中、屋台で夕食と、ラビに食べられてしまった旅の食料も買い込む。

 屋台の女将さんがフェグにウインクを送り、これでもかと言うほどサービスしてくれる。

  フェグが思わず微笑むと、「私も私もっ」と周りの奥様方が色んな物を差し出してくれ、宿屋に着く頃にはどうにもならない程の大荷物になってしまった。

「ラビー……帰ったぞー」

「フェグッ!一体どこ行ってたのよーっ!心配したのよー……って、何そのとんでもない量の荷物っ!」

「はぁ……っはぁ……薬とか……はぁ……食料とか……はぁ……はぁ……何か分からんが色々貰い物とか……はぁー……つ、疲れた~」

 ラビと交代するように、今度はフェグがベッドに倒れこんだ。

「お、お前……何か元気じゃないか?」

「ずーっと寝てたらお腹痛いのも治っちゃった。それよりお腹減ったよう」

「はぁ~……何てことだ」

 ラビから貰った水を一気に飲み干し、ベッドの上で息を整える。

「だ、大丈夫?」

「……あぁ……夕食なら……買ってきたから……適度に食え。……て、適度にだぞ?」

「うん」

 まだゼィゼィと苦しそうなフェグの横で、ラビは荷物を漁り始めた。

「はぁ……はぁ…………はぁー、大分楽になってきたー……ふぅー」

「ねー、この荷物どうするの?」

「……どうするかー」

「……」

「……」

 ラビのもしゃもしゃ食べる音を聞きながら、フェグは「どうするかー……」と呟きつつ、結局朝まで起きることが出来なかった。




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