クレハンの涙

藤枝ゆみ太

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【クレハンの涙】第二章

86話

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 旅に入り用な品物を蹴散けちらし財布を探すが、旅の資金が入った袋はどこにも無かった。

「無いな」

「無いーっ」

「そう言えば、金はどこらへんに入れていたのだ?」

「たぶん背中のリュックの中だったと思う」

「……そうか……これは、やられたかもな」

「?」

「人混みの中でスリ盗られた可能性がある、と言うことだ」

「そんな……」

 血の気の引いたラビの顔を見ながら、フェグは散らばった荷物を元に戻すと、スッと立ち上がりドアへ向かって歩き出す。

「どこに行くの?」

「とにかく一旦ここを出る。宿屋の主人の視線が痛くて堪らんわい」

「……」

 一文無しのラビとフェグ。

 二人は万一と希望を託して、人通りの少なくなった道をあちこち探したが、結局財布を見つける事も、今日の宿を取る事も出来なかった。

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