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第二十八話「パーティー」

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 それはとあるイベントがきっかけだった。
 
「交流パーティー?」

 メイリーからその単語を聞いて思わず復唱した。

「うん。ほんとは交流訓練の後にするんだけどあんなことがあったから延期されてたんだ。それが開催日が決まったんだー。先輩との交流の場なんだけど、要は訓練のお疲れ様会だよ」

「はーなるほど。で、具体的に何するの?」

「ドレス着て、お食事したりお話したりダンスしたりでいわゆるパーティーなんだけど……」

「なんだけど?」

「とあるジンクスがあってね。ダンスの時間、最後に踊った相手は生涯のパートナーになるんだって」

「ほぇ~」

「……ほぇ~って、それだけ?」

「え、うん。あっ、そうか! あたしドレス持ってない!」

「そこじゃなくてね……。まーいっか。サラちゃん、ドレスは言ったら学園で用意してくれるから心配ないよ」

「それなら良かった」

 さすがにそういう場で一人だけ制服って言うのも場違い感が凄い。
 まだ委員会の給金は貰えないからドレスを買う余裕もない。

 とりあえず一安心とホッと胸を撫で下ろすと、ドタバタと騒がしい足音が近づいてきた。

「サラ!」

 ドンと走ってきたリーナがあたしの前の机に紙を叩きつける。
 それはさっきまで話題に上がっていた交流パーティーのものだ。

「白黒はっきりさせる時が来たわね。勝負よ! このパーティーのダンスでどちらがアリシア姉様と最後に踊るのか!」

「勝負って?」

「簡単よ。ダンスの時間、曲は三回流れる。つまりは三人と踊るのが通例よ。つまり、ワタシとアンタが最後の曲で同時にアリシア姉様をダンスに誘う。そこで選ばれた方が勝ちよ」

「でもアリシアってこの学園じゃ有名なんでしょ? あたし達以外が選ばれるかもしれないじゃん。交流訓練で一緒だったメイリーかもしれないし」

「メイリー、アリシア姉様とパートナーになったの!?」

「サラちゃん……」

 メイリーが溜息を吐いた。
 おそらく黙っていたんだろう。
 ごめん、メイリー。

「あれはサラちゃんがクレアさんと組んだからで深い意味はないよ。ほら、日ごろの訓練ではアリシアさんもトリプル生徒のシースと組んでるだろうし」

「それもそうね」

 あっさりと納得したリーナ。
 それもそうか。
 リーナはアリシアと組んでる人を全員目の敵にしてるわけじゃない。
 あたしの場合、ペタル試験での周囲にアリシアのパートナー=サラという強い印象を与えてしまったことと、シングル生徒の中でもアリシアと特に親密だったことが、リーナの嫉妬心を買った理由だ。

「まぁでも、サラの言う通り他の子が選ばれる可能性も十分あるわ。その場合、アリシア姉様がワタシ達より他の子を選んだ。ただそれだけの事よ」

 リーナは正々堂々をモットーとしてるから、仮に他の子が選ばれたとしてもライバル候補としてリストアップされるだけということなんだろう。
 ダンスの誘いすらさせないとか、アリシアの評価を落として選ばせないようにするとか、そんなことをする子じゃない。


 そんなことをする子じゃないんだ――――リーナだけは。


 視界に入ったのは教室の端。
 こちらを見て何やら話している生徒がいるようだけど、この時のあたしは気にも留めていなかった。
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