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第3章 乱戦乱舞!
0が持つ意味
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ゲンキが捨てた青の9に対し、次番の麻里先輩、青の3を捨てる。続いてのフラニー会長、手札を捨てずに山札引き。引いたカードは捨てず、手札にしまう。俺の番、ラッキーなことに数字合わせで手札を捨てられる。俺は緑の3を捨てる。これで残り2枚、赤の0と緑の1。色がバラバラなのが惜しいが、まぁいいか、とにもかくにも残り2! しかも、緑がない香は次番で出せるカードがない。自分の手札を減らしつつ香を妨害する、一石二鳥のおいしい展開!
俺が手札を捨てた直後、香が俺に文句を言う。
「ちょっと、虎ちゃん! 空気読んでよ!」
「あっ、馬鹿、そんなこと言ったら……」
先輩と会長、ほぼ同時に「ふふ……」と小さく笑う。それから少し遅れて、ゲンキが「あっ、そうか……」と言って、香の顔をちらっと見る。間違いない、今の言葉を聞いて、香の手札の中身を推理したんだ。
(そりゃそうだよなぁ……。色を変えられて文句を言うって、つまり、変えられる前の色が自分にとって有利だったからそう言うんだ。やっぱりこいつ、手札に青があるんだ。はぁ、言わなきゃまだバレない可能性があったものを……)
番がやってきた香、山札から1枚引いてそれを捨てる。緑の6。さて、お次はゲンキだ。彼は手札からカードを捨てる。
「緑のドロ2!」
麻里先輩、思わず不満の言葉をもらす。
「ゲンキくん、なんでここでそれなのよ……」
「すんません、でも、捨てるチャンスがなくて残っちゃって……」
うーむ、まだそんな高得点札を持っていたとは。なんだか雲行きが怪しいぞ? えぇい、とりあえず話を勝負に戻そう。先輩、ルールに従って2枚を山札から引く。彼女の手札はこれで残り6、言っちゃ悪いが、上がりは絶望的だ。続いての会長、「Oh dear...」なんて言いながら山札から1枚引く。
さて、俺の番。俺は涼しい顔で緑の1を捨てる。「ウノ!」。それを聞いた香、また文句を言う。
「虎ちゃん、まさかあたしより先に上がるつもりなの?」
「上がっちゃいかんの?」
「いかんでしょ」
「いいだろ別に」
「よくない!」
「会長、助けてくださいよ」
「ほらほら、夫婦漫才はもういいから! 香ちゃん、さっさと自分の番やって!」
俺、思わずツッコミを入れる。
「ちょっ、会長、夫婦漫才って!」
俺は香の顔を見る。もちろん抗議するよね? だが、俺の予想に反して、彼女は何もなかったかのように「はいはい、わかってますよ……」なんて言いながら手札を見ている。えぇ……。なんなんだよお前……。
俺は香の様子をうかがう。彼女の指が動く、手札の左端からカードを出し、それを捨てる。
「青の1、ウノ!」
Feck! ここにきてこれかよ! まったくコイツ、運だけはいいんだから! ヤバい、香の最後の1枚が青だとすると、このまま場が回れば香は上がる。えぇい、どうすれば!?
俺があわてている間にも場が進む、ゲンキの番になる。彼は手札から出せない、山札から1枚引いて手札にしまう。次は麻里先輩の番、彼女は手札からカードを引っ張り出す。
「みんな、そう簡単には上がらせないよ? フラニー、持ってるならお願い!」
先輩は青の0を捨てる。えっ、手札が6枚もあるのに、青の0? もっと高い点数のカードから捨てればいいのに、なんで青の0? ひょっとして、それしか捨てられなかったのか? それとも、何か作戦があるのか?
俺の疑問は何も解決しないまま、フラニー会長の番になる。彼女は手札から1枚を取り出し、それを右手の指の間に挟んでから喋る。
「ふっふっふっ……。やっぱり麻里は頼りになるなぁ」
香が返事をする。「どうしたんですか、会長?」
「ねぇ、香ちゃん。普通は、高い点数のカードから捨てていくでしょ」
「そりゃそうですよ!」
「これを別の角度から考えるとね、低い点数のカードは終盤まで捨てられない可能性が高い。さらに、0のカードは上がられても相手の得点にならない、そこを考えると、0は最後の最後まで温存されるから手札に残りやすい……」
「えーと……?」
香は何だかよく分からないという顔をしている。しかし、会長は香に構わず話を続ける。
「手札がこんなにあればねぇ、持ってるに決まってるでしょ! はい、緑の0!」
緑の0が捨てられる。まだ会長は喋る。
「これであんたたちは手詰まり。虎くんはともかく、香ちゃんの手札に緑はないんだから、上がれないでしょ?」
「えっ、会長、なんであたしの手札が分かるんですか?」
(香、お前って本当……)
「ほら、虎くん! さっさと自分の番をやって!」
俺は手札をながめる。緑の0。確かに、会長が言ったとおりだ。0のカードは最後まで残りやすい。俺はそれを捨てて、静かに宣言する。
「上がりです……」
決着がつく時なんて、まぁ、こんなもんだよね。
俺が手札を捨てた直後、香が俺に文句を言う。
「ちょっと、虎ちゃん! 空気読んでよ!」
「あっ、馬鹿、そんなこと言ったら……」
先輩と会長、ほぼ同時に「ふふ……」と小さく笑う。それから少し遅れて、ゲンキが「あっ、そうか……」と言って、香の顔をちらっと見る。間違いない、今の言葉を聞いて、香の手札の中身を推理したんだ。
(そりゃそうだよなぁ……。色を変えられて文句を言うって、つまり、変えられる前の色が自分にとって有利だったからそう言うんだ。やっぱりこいつ、手札に青があるんだ。はぁ、言わなきゃまだバレない可能性があったものを……)
番がやってきた香、山札から1枚引いてそれを捨てる。緑の6。さて、お次はゲンキだ。彼は手札からカードを捨てる。
「緑のドロ2!」
麻里先輩、思わず不満の言葉をもらす。
「ゲンキくん、なんでここでそれなのよ……」
「すんません、でも、捨てるチャンスがなくて残っちゃって……」
うーむ、まだそんな高得点札を持っていたとは。なんだか雲行きが怪しいぞ? えぇい、とりあえず話を勝負に戻そう。先輩、ルールに従って2枚を山札から引く。彼女の手札はこれで残り6、言っちゃ悪いが、上がりは絶望的だ。続いての会長、「Oh dear...」なんて言いながら山札から1枚引く。
さて、俺の番。俺は涼しい顔で緑の1を捨てる。「ウノ!」。それを聞いた香、また文句を言う。
「虎ちゃん、まさかあたしより先に上がるつもりなの?」
「上がっちゃいかんの?」
「いかんでしょ」
「いいだろ別に」
「よくない!」
「会長、助けてくださいよ」
「ほらほら、夫婦漫才はもういいから! 香ちゃん、さっさと自分の番やって!」
俺、思わずツッコミを入れる。
「ちょっ、会長、夫婦漫才って!」
俺は香の顔を見る。もちろん抗議するよね? だが、俺の予想に反して、彼女は何もなかったかのように「はいはい、わかってますよ……」なんて言いながら手札を見ている。えぇ……。なんなんだよお前……。
俺は香の様子をうかがう。彼女の指が動く、手札の左端からカードを出し、それを捨てる。
「青の1、ウノ!」
Feck! ここにきてこれかよ! まったくコイツ、運だけはいいんだから! ヤバい、香の最後の1枚が青だとすると、このまま場が回れば香は上がる。えぇい、どうすれば!?
俺があわてている間にも場が進む、ゲンキの番になる。彼は手札から出せない、山札から1枚引いて手札にしまう。次は麻里先輩の番、彼女は手札からカードを引っ張り出す。
「みんな、そう簡単には上がらせないよ? フラニー、持ってるならお願い!」
先輩は青の0を捨てる。えっ、手札が6枚もあるのに、青の0? もっと高い点数のカードから捨てればいいのに、なんで青の0? ひょっとして、それしか捨てられなかったのか? それとも、何か作戦があるのか?
俺の疑問は何も解決しないまま、フラニー会長の番になる。彼女は手札から1枚を取り出し、それを右手の指の間に挟んでから喋る。
「ふっふっふっ……。やっぱり麻里は頼りになるなぁ」
香が返事をする。「どうしたんですか、会長?」
「ねぇ、香ちゃん。普通は、高い点数のカードから捨てていくでしょ」
「そりゃそうですよ!」
「これを別の角度から考えるとね、低い点数のカードは終盤まで捨てられない可能性が高い。さらに、0のカードは上がられても相手の得点にならない、そこを考えると、0は最後の最後まで温存されるから手札に残りやすい……」
「えーと……?」
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「手札がこんなにあればねぇ、持ってるに決まってるでしょ! はい、緑の0!」
緑の0が捨てられる。まだ会長は喋る。
「これであんたたちは手詰まり。虎くんはともかく、香ちゃんの手札に緑はないんだから、上がれないでしょ?」
「えっ、会長、なんであたしの手札が分かるんですか?」
(香、お前って本当……)
「ほら、虎くん! さっさと自分の番をやって!」
俺は手札をながめる。緑の0。確かに、会長が言ったとおりだ。0のカードは最後まで残りやすい。俺はそれを捨てて、静かに宣言する。
「上がりです……」
決着がつく時なんて、まぁ、こんなもんだよね。
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