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第9章 この社会を革命するために 前編
第146話 利用規約に基づく正しい行い JUSTICE 2022年11月25日
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ドレが叫んだ。
「出てこい! そこにいるんだろう!?」
連中は、隠れていても無駄と考えたのだろう、すぐに俺たちの眼前に現れた。
その気持ち悪い容姿に驚いたパティが「わぁ……」と小さな悲鳴をもらす。
ざっといえばワンピース型のメイド服を着た白人メイド3人だ。もっとも、どう見てもロボットだから「3人」ではなく「3体」と表現すべきだが。
なぜ見ただけでロボットと判断できるか、その理由については簡単だ。奴らの体の皮膚はあちこちが剥がれ落ちていて、機械の部分が露出しているのだ。
顔の左半分は白いが右半分は金属の銅色なんて怪物を想像してみればいい。それでも顔はまだマシで、左腕や右足はすっかり皮膚が剥げて金属むき出しだ。
メイド服も同じくズタボロ。スカートはあちこちが千切れているし、エプロンは汚れだらけ。ひどいなぁ……。そう思った時、彼女たちはニタリと笑って叫んだ。
「オイデマセ!」
奴らの両腕が持ち上がり、こっちへ真っ直ぐ突き出される。映画で見たキョンシーの格好だな。
そのまま手の平が曲がって掌底を打つ時のような状態となる。手首の個所でなにかが光る……ドレが怒鳴った。
「来るぞ!」
手首から多くの弾丸が撃ち出される。そういうカラクリかよ! 負けてたまるかとパティがステアー TMPを構え、応戦を始める。
「倒れろッ!」
ドレも「いくぞ!」と言って撃ち始める。慌てて俺も撃つ。こうして始まった両者ノー・ガードの銃撃戦は、メイドたちの全滅という結果に終わった。
死体が消えてドロップが出現する。それを目で確認して俺は言った。
「これで終わり?」
パティが答えた。
「しょせんザコなんてこんなものでしょ。お楽しみはまだまだこれから……」
「と、いうと?」
「まぁ行けばわかる、行きましょ」
彼女はドロップに向かってスタスタと歩いていく。よく分からんが、どうやらまだ何かが未来に待ち構えているらしい。とりあえず後を追いかけよう。
パティが案内したのは屋敷の地下だった。そこはまるでほら穴で、庭で見たのと同じような彫刻がたくさん置かれている。
もっとも、庭の作品群はどれもが完成品だったが、ここのは作りかけばかりだ。自然と疑問が思い浮かび、それを口にする。
「ひょっとしてさ。ここは芸術家のアトリエみたいなところじゃないか?」
パティは「そうかもね」と返し、次にこう続けた。
「ここはホット・スポットになってるから、一歩でも進むとモンスターが襲ってくる。シルバー、準備はいい?」
先ほどの戦闘で消費したグロック18の残弾は、今やすっかり全回復している。いつでも戦えるさ。俺は「OK」と答えた。それを受けて彼女は静かに言う。
「突入……!」
俺たちは前方の広大な空間に向かって歩き出す。途端、そこかしこの彫刻の陰からモンスターたちが飛び出てくる。鋭くドレが言った。
「スネイク・ドッグだ!」
クソッ、これまた気持ち悪いのが来やがった。こいつは上半身が犬で下半身が蛇という姿をしていて、体長は1メートル程度、立ち上がると結構な大きさだ。
集団戦法で襲ってくるからモタモタしてると袋叩きにされる。そうなる前に倒す、全員いっせいに撃ち始める。
スネイク・ドッグたちは悲鳴と共に倒れていく。
「ギャァッ!」「ギャォーッ!」「ギャッ!」
いいぞ、この調子だ! そう思った時、後方から若い男たちが怒鳴り声と共に乱入してきた。
「邪魔だ、カスども!」「どけッ!」「ヒャッホー!!」
なんだ!? 俺はいったん攻撃をやめ、そいつらへ振り向いて正体を確認する。驚きの声をもらしてしまう。
「ゴーエン!?」
それだけではない。彼の横にはサンドマンとモヒカン頭を含む男たち数人が立っている。ゴーエンが指示する。
「撃て、とにかく撃て! 敵はみんな俺たちのものだ!」
奴らのすさまじい弾幕がスネイク・ドッグたちを殺していき、十秒と経たずに全滅させる。モヒカンの嬉しそうな声が響く。
「イェェェェェェェェイ! やったぜぇぇぇぇぇぇぇ!」
彼の周囲の男たちも「よっしゃ!」「ちょろいちょろい!」などどはしゃいで歓声を上げる。それとは対照的に怒り心頭のドレが突っかかる。
「おい、なんだ、これは!」
得意満面のゴーエンが返した。
「俺の知り合いが、あんたらがこのダンジョンにいるって教えてくれてね。慌てて追いかけて、こうして助太刀してやったわけさ」
「そういうことを聞いてるんじゃない! スネイク・ドックは私たちが先に見つけて戦い始めた、すなわち私たちの獲物だ! それを横取りするなんて……!」
「横取りィ? おいおい、冗談はやめろよ。さっきも言った通りこれは助太刀だ、人助けだ!」
「インチキな主張はやめろ! どうみても横取りだろうが!」
ゴーエンにかわってサンドマンが言った。
「仮に横取りだとしてよぉ、やっちゃ悪いのか?」
パティが「当たり前でしょう!」と怒鳴る。かなりの剣幕だが、そんなことまるで意に介さないって顔でサンドマンはのたまう。
「だが、利用規約には「横取りしちゃ駄目」なんて一言も書かれてねぇぜ? 禁止されてないんだからやったって別に何の問題もねぇだろ?」
「でも一般的なマナーとして横取りは……」
「うるせぇ!」
サンドマンがその手のショットガンを天井へぶっ放す。ドォンという轟音が響き、驚いたパティは黙ってしまう。サンドマンは銃口を彼女の顔面へ突きつけて言った。
「うるせぇんだよ、微課金のクズのザコどもがよぉ……。これは復讐だ! そこのクソボケのソリッド・シルバーが俺たちを殺したことへの報復だ!」
そういうことかよ、クソッ! 俺は思いっきりサンドマンをにらんで抗議する。
「自分勝手な理屈を言いやがって、そんなん無茶苦茶だろうが! とにかく謝れ、横取りしたら謝るのが常識ってもんだろう!」
モヒカンがペッと唾を吐き、ナメくさった顔で言った。
「謝るのはてめぇらド畜生のほうだ。こないだの件でどれだけ俺たちが不愉快になったか、わかってんのか?
いいか、お前らが謝るまで、こうやっていつまでも復讐してやる! それだけじゃねぇ、てめぇらの仲間にも同じことをしてやる! 何ならMPKで殺してやるよ!
くたばれくたばれくたばれくたばれ! 身の程をわきまえるまでとことんぶっ潰す!」
言い捨ててモヒカンは姿を消す。ワープで街に帰りやがったんだ。彼だけでなく他の奴らも次々に消えていく。
後には呆然となった俺とドレとパティだけが残された。
まさかこんなことになるなんて……。
「出てこい! そこにいるんだろう!?」
連中は、隠れていても無駄と考えたのだろう、すぐに俺たちの眼前に現れた。
その気持ち悪い容姿に驚いたパティが「わぁ……」と小さな悲鳴をもらす。
ざっといえばワンピース型のメイド服を着た白人メイド3人だ。もっとも、どう見てもロボットだから「3人」ではなく「3体」と表現すべきだが。
なぜ見ただけでロボットと判断できるか、その理由については簡単だ。奴らの体の皮膚はあちこちが剥がれ落ちていて、機械の部分が露出しているのだ。
顔の左半分は白いが右半分は金属の銅色なんて怪物を想像してみればいい。それでも顔はまだマシで、左腕や右足はすっかり皮膚が剥げて金属むき出しだ。
メイド服も同じくズタボロ。スカートはあちこちが千切れているし、エプロンは汚れだらけ。ひどいなぁ……。そう思った時、彼女たちはニタリと笑って叫んだ。
「オイデマセ!」
奴らの両腕が持ち上がり、こっちへ真っ直ぐ突き出される。映画で見たキョンシーの格好だな。
そのまま手の平が曲がって掌底を打つ時のような状態となる。手首の個所でなにかが光る……ドレが怒鳴った。
「来るぞ!」
手首から多くの弾丸が撃ち出される。そういうカラクリかよ! 負けてたまるかとパティがステアー TMPを構え、応戦を始める。
「倒れろッ!」
ドレも「いくぞ!」と言って撃ち始める。慌てて俺も撃つ。こうして始まった両者ノー・ガードの銃撃戦は、メイドたちの全滅という結果に終わった。
死体が消えてドロップが出現する。それを目で確認して俺は言った。
「これで終わり?」
パティが答えた。
「しょせんザコなんてこんなものでしょ。お楽しみはまだまだこれから……」
「と、いうと?」
「まぁ行けばわかる、行きましょ」
彼女はドロップに向かってスタスタと歩いていく。よく分からんが、どうやらまだ何かが未来に待ち構えているらしい。とりあえず後を追いかけよう。
パティが案内したのは屋敷の地下だった。そこはまるでほら穴で、庭で見たのと同じような彫刻がたくさん置かれている。
もっとも、庭の作品群はどれもが完成品だったが、ここのは作りかけばかりだ。自然と疑問が思い浮かび、それを口にする。
「ひょっとしてさ。ここは芸術家のアトリエみたいなところじゃないか?」
パティは「そうかもね」と返し、次にこう続けた。
「ここはホット・スポットになってるから、一歩でも進むとモンスターが襲ってくる。シルバー、準備はいい?」
先ほどの戦闘で消費したグロック18の残弾は、今やすっかり全回復している。いつでも戦えるさ。俺は「OK」と答えた。それを受けて彼女は静かに言う。
「突入……!」
俺たちは前方の広大な空間に向かって歩き出す。途端、そこかしこの彫刻の陰からモンスターたちが飛び出てくる。鋭くドレが言った。
「スネイク・ドッグだ!」
クソッ、これまた気持ち悪いのが来やがった。こいつは上半身が犬で下半身が蛇という姿をしていて、体長は1メートル程度、立ち上がると結構な大きさだ。
集団戦法で襲ってくるからモタモタしてると袋叩きにされる。そうなる前に倒す、全員いっせいに撃ち始める。
スネイク・ドッグたちは悲鳴と共に倒れていく。
「ギャァッ!」「ギャォーッ!」「ギャッ!」
いいぞ、この調子だ! そう思った時、後方から若い男たちが怒鳴り声と共に乱入してきた。
「邪魔だ、カスども!」「どけッ!」「ヒャッホー!!」
なんだ!? 俺はいったん攻撃をやめ、そいつらへ振り向いて正体を確認する。驚きの声をもらしてしまう。
「ゴーエン!?」
それだけではない。彼の横にはサンドマンとモヒカン頭を含む男たち数人が立っている。ゴーエンが指示する。
「撃て、とにかく撃て! 敵はみんな俺たちのものだ!」
奴らのすさまじい弾幕がスネイク・ドッグたちを殺していき、十秒と経たずに全滅させる。モヒカンの嬉しそうな声が響く。
「イェェェェェェェェイ! やったぜぇぇぇぇぇぇぇ!」
彼の周囲の男たちも「よっしゃ!」「ちょろいちょろい!」などどはしゃいで歓声を上げる。それとは対照的に怒り心頭のドレが突っかかる。
「おい、なんだ、これは!」
得意満面のゴーエンが返した。
「俺の知り合いが、あんたらがこのダンジョンにいるって教えてくれてね。慌てて追いかけて、こうして助太刀してやったわけさ」
「そういうことを聞いてるんじゃない! スネイク・ドックは私たちが先に見つけて戦い始めた、すなわち私たちの獲物だ! それを横取りするなんて……!」
「横取りィ? おいおい、冗談はやめろよ。さっきも言った通りこれは助太刀だ、人助けだ!」
「インチキな主張はやめろ! どうみても横取りだろうが!」
ゴーエンにかわってサンドマンが言った。
「仮に横取りだとしてよぉ、やっちゃ悪いのか?」
パティが「当たり前でしょう!」と怒鳴る。かなりの剣幕だが、そんなことまるで意に介さないって顔でサンドマンはのたまう。
「だが、利用規約には「横取りしちゃ駄目」なんて一言も書かれてねぇぜ? 禁止されてないんだからやったって別に何の問題もねぇだろ?」
「でも一般的なマナーとして横取りは……」
「うるせぇ!」
サンドマンがその手のショットガンを天井へぶっ放す。ドォンという轟音が響き、驚いたパティは黙ってしまう。サンドマンは銃口を彼女の顔面へ突きつけて言った。
「うるせぇんだよ、微課金のクズのザコどもがよぉ……。これは復讐だ! そこのクソボケのソリッド・シルバーが俺たちを殺したことへの報復だ!」
そういうことかよ、クソッ! 俺は思いっきりサンドマンをにらんで抗議する。
「自分勝手な理屈を言いやがって、そんなん無茶苦茶だろうが! とにかく謝れ、横取りしたら謝るのが常識ってもんだろう!」
モヒカンがペッと唾を吐き、ナメくさった顔で言った。
「謝るのはてめぇらド畜生のほうだ。こないだの件でどれだけ俺たちが不愉快になったか、わかってんのか?
いいか、お前らが謝るまで、こうやっていつまでも復讐してやる! それだけじゃねぇ、てめぇらの仲間にも同じことをしてやる! 何ならMPKで殺してやるよ!
くたばれくたばれくたばれくたばれ! 身の程をわきまえるまでとことんぶっ潰す!」
言い捨ててモヒカンは姿を消す。ワープで街に帰りやがったんだ。彼だけでなく他の奴らも次々に消えていく。
後には呆然となった俺とドレとパティだけが残された。
まさかこんなことになるなんて……。
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