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第2部 闇に死す
第3話 コーメルキムの街
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数日後、ギンたちはコーメルキムの街に到着した。
コーメルキム、そこは商業の街である。多くの豪商が本拠地をここに定めて活動し、その豪商たちと取り引きをするため、中小規模の商人や貴族、冒険者たちが集まる。そういった流れの中で発展を遂げている街である。
また、この街は学術の街でもある。商人が集まること、それは、様々なアイテムが集まることとほぼ同じ。そしてアイテムの中には、素人には価値がわからない珍品や、学術的な価値のみを持つものなどがある。
そういったアイテムを目当てに、アイテムの鑑定や研究をする学者たちが集まり、学者が集まれば学校が設立される。こういうわけで、コーメルキムには富と知識の両方があふれかえっているのだ。
街に着いたギンたちは、あたりをキョロキョロ見ながら大通りを歩いている。レーヴが楽しそうに言う。
「うわぁ、ほんとすごい、ここ! こんな都会、初めて来たよー!」
キャンディスが答える。
「素敵なところですよね! お洒落な服を着ている人が大勢いて……」
リッチーがたしなめるように言う。
「おいおい、お前ら、そんな調子じゃあ田舎者だと思われるぞ。ギンもよそ見してねぇで、しっかりしろよ」
「ごめんごめん。でも本当、すごいよね。ほら、あそこなんて……」
その時、やせた男がギンの前方から走って来きた。その男の後方には若い男性がいて、やせた男を追いかけながら叫んでいる。
「待てっ、おい、待てぇーっ! 泥棒、待てぇーっ!」
泥棒と呼ばれた男は、どんどんギンたちへ接近してくる。リッチーが動く。
「おらよっ!」
泥棒と交差する瞬間、リッチーは足払いをかける。泥棒は姿勢を崩し、地面に手を着いて倒れる。そこへ追い打ちをかけるリッチー、泥棒に蹴りを叩きこんで大きなダメージを与える。泥棒の悲鳴。
「ぐおっ!」
リッチーのさらなる追撃、泥棒の上から圧しかかって、身動きできないようにする。そんな場面が発生したすぐ後、息を切らせながら若い男性が走りこんでくる。彼は言う。
「みなさん、すみません、ありがとうございます! こいつ、うちの店の商品、くすねやがって!」
気がつけば、リッチーたちのまわりには人だかりができている。リッチーは人々の視線を感じながら言う。
「おい、あんた。これ、お礼はしてもらえるんだろな?」
「はい!」
「よし、OKだ」
リッチーの視界の奥に、こちらへ向かってくる警備隊の面々の姿が見える。彼らが到着すれば、この騒ぎにひと段落がつくだろう。
場所は変わって、ここは大衆向けの料理店。先ほどの若い男性とギンたちは、屋外にあるテーブルの周りに陣取り、今は食事をしている。テーブルの上には黒いパンや揚げた白身魚、チップス(chips, 揚げた長方形のイモ)などが並び、それらはいかにも安そうである。
レーヴがもぐもぐとチップスを食べながら言う。
「おいしー!」
先ほどの若い男性が笑いながら答える。
「ここはちゃんとしたお店だからね。そりゃ、美味しいさ。この街には、観光客に不味いのをぼったくりで売りつける店があるけど、ここは違うんだ。信頼できるよ」
炭酸水が入ったコップを手にしながら、ギンが若い男性に話しかける。
「すみません、オジーさん。こんなたくさん、ご馳走してもらって」
「いいんだ、いいんだ、気にしないでくれ。君たちのおかげで、何万もの稼ぎが助かったんだ。食事をおごるくらい、それに比べりゃ大したことないよ」
「なんか本当、すみません」
「はは、ギンくんは真面目だなぁ」
「それにしても、何で泥棒にやられたんですか?」
「最近、街の治安が悪くてね。ちょっと油断した隙にこれさ。君たちも気をつけたほうがいい、僕なんてこの程度ですんだが、強盗に店員を殺された店だってあるんだからね」
リッチーが会話に参加する。
「それでよ、オジーさん。あんた、冒険者相手に道具屋をやってんだろ? ちょっと見て欲しいものがあるんだが、正体、わからねぇか?」
リッチーはバッグから例の金属板を出し、オジーと呼ばれた若い男性に見せる。オジーは言う。
「ん? これ、どこで手に入れたんだい?」
「セラの街のダンジョンさ」
「へぇ……。実はね、僕も似たようなものを持ってるんだ」
オジーは懐から小さな袋を出し、そこから何かを取り出す。それは、例の金属板によく似たアイテム。リッチーは少し驚きながら言う。
「それは!」
「ある取引で手に入れてね。でも、まるで価値がわからなくてさ。いろいろ調べたけど駄目だった」
「それ、よかったら譲ってもらえねぇか?」
「構わないけど……。いいのかい?」
「あぁ、問題ねぇ。俺たちのやつと、あんたのやつと、ここで二つがそろった。これはきっと、何かの運命。すべての板を集めれば、何かすげぇことが起きる、俺はそう思うんだ」
「はは、そうだといいけれど。よし、プレゼントだ」
オジーは自分の金属板をリッチーに渡す。リッチーはそれをしげしげとながめる。
「ギン、俺は思うんだがな。どっちの板にもへこみと出っ張りがあるだろ。それでだ、こいつらをパズルみたいに組み合わせて……」
かちゃかちゃ、金属同士がぶつかる音を立てながら、リッチーの手が動く。板同士のへこみ、出っ張り、それらはぴったりとはまって合体し、結果、新しい形の金属板が出来上がる。
それは、円の一部分が扇形に欠けたような形をしている。扇型の板同士を辺と辺でくっつけたのだから、当たり前のことではあるが。リッチーは少し興奮しながら喋る。
「見ろよ、がっちりはまったこの二枚。たぶんあともう一枚、似たようなのがあって、それをこの空いてるとこにはめればよ……。めでたく元の形に戻るってわけだ」
「もしそうなったら、メダルみたいなアイテムになるけど……」
「きっとそれはお宝だ、間違いねぇ。なんだかワクワクしてきやがったぜ……!」
二枚の金属板たちは室内の光を反射して、鈍く光っている。もしすべてが集まり、板たちが元の姿に戻ったら、いったい何が起こるのだろう?それはまだ、誰も知らない。
それにしても、別れ別れになったパズルのピースが集まるとは、幸運なことである。
コーメルキム、そこは商業の街である。多くの豪商が本拠地をここに定めて活動し、その豪商たちと取り引きをするため、中小規模の商人や貴族、冒険者たちが集まる。そういった流れの中で発展を遂げている街である。
また、この街は学術の街でもある。商人が集まること、それは、様々なアイテムが集まることとほぼ同じ。そしてアイテムの中には、素人には価値がわからない珍品や、学術的な価値のみを持つものなどがある。
そういったアイテムを目当てに、アイテムの鑑定や研究をする学者たちが集まり、学者が集まれば学校が設立される。こういうわけで、コーメルキムには富と知識の両方があふれかえっているのだ。
街に着いたギンたちは、あたりをキョロキョロ見ながら大通りを歩いている。レーヴが楽しそうに言う。
「うわぁ、ほんとすごい、ここ! こんな都会、初めて来たよー!」
キャンディスが答える。
「素敵なところですよね! お洒落な服を着ている人が大勢いて……」
リッチーがたしなめるように言う。
「おいおい、お前ら、そんな調子じゃあ田舎者だと思われるぞ。ギンもよそ見してねぇで、しっかりしろよ」
「ごめんごめん。でも本当、すごいよね。ほら、あそこなんて……」
その時、やせた男がギンの前方から走って来きた。その男の後方には若い男性がいて、やせた男を追いかけながら叫んでいる。
「待てっ、おい、待てぇーっ! 泥棒、待てぇーっ!」
泥棒と呼ばれた男は、どんどんギンたちへ接近してくる。リッチーが動く。
「おらよっ!」
泥棒と交差する瞬間、リッチーは足払いをかける。泥棒は姿勢を崩し、地面に手を着いて倒れる。そこへ追い打ちをかけるリッチー、泥棒に蹴りを叩きこんで大きなダメージを与える。泥棒の悲鳴。
「ぐおっ!」
リッチーのさらなる追撃、泥棒の上から圧しかかって、身動きできないようにする。そんな場面が発生したすぐ後、息を切らせながら若い男性が走りこんでくる。彼は言う。
「みなさん、すみません、ありがとうございます! こいつ、うちの店の商品、くすねやがって!」
気がつけば、リッチーたちのまわりには人だかりができている。リッチーは人々の視線を感じながら言う。
「おい、あんた。これ、お礼はしてもらえるんだろな?」
「はい!」
「よし、OKだ」
リッチーの視界の奥に、こちらへ向かってくる警備隊の面々の姿が見える。彼らが到着すれば、この騒ぎにひと段落がつくだろう。
場所は変わって、ここは大衆向けの料理店。先ほどの若い男性とギンたちは、屋外にあるテーブルの周りに陣取り、今は食事をしている。テーブルの上には黒いパンや揚げた白身魚、チップス(chips, 揚げた長方形のイモ)などが並び、それらはいかにも安そうである。
レーヴがもぐもぐとチップスを食べながら言う。
「おいしー!」
先ほどの若い男性が笑いながら答える。
「ここはちゃんとしたお店だからね。そりゃ、美味しいさ。この街には、観光客に不味いのをぼったくりで売りつける店があるけど、ここは違うんだ。信頼できるよ」
炭酸水が入ったコップを手にしながら、ギンが若い男性に話しかける。
「すみません、オジーさん。こんなたくさん、ご馳走してもらって」
「いいんだ、いいんだ、気にしないでくれ。君たちのおかげで、何万もの稼ぎが助かったんだ。食事をおごるくらい、それに比べりゃ大したことないよ」
「なんか本当、すみません」
「はは、ギンくんは真面目だなぁ」
「それにしても、何で泥棒にやられたんですか?」
「最近、街の治安が悪くてね。ちょっと油断した隙にこれさ。君たちも気をつけたほうがいい、僕なんてこの程度ですんだが、強盗に店員を殺された店だってあるんだからね」
リッチーが会話に参加する。
「それでよ、オジーさん。あんた、冒険者相手に道具屋をやってんだろ? ちょっと見て欲しいものがあるんだが、正体、わからねぇか?」
リッチーはバッグから例の金属板を出し、オジーと呼ばれた若い男性に見せる。オジーは言う。
「ん? これ、どこで手に入れたんだい?」
「セラの街のダンジョンさ」
「へぇ……。実はね、僕も似たようなものを持ってるんだ」
オジーは懐から小さな袋を出し、そこから何かを取り出す。それは、例の金属板によく似たアイテム。リッチーは少し驚きながら言う。
「それは!」
「ある取引で手に入れてね。でも、まるで価値がわからなくてさ。いろいろ調べたけど駄目だった」
「それ、よかったら譲ってもらえねぇか?」
「構わないけど……。いいのかい?」
「あぁ、問題ねぇ。俺たちのやつと、あんたのやつと、ここで二つがそろった。これはきっと、何かの運命。すべての板を集めれば、何かすげぇことが起きる、俺はそう思うんだ」
「はは、そうだといいけれど。よし、プレゼントだ」
オジーは自分の金属板をリッチーに渡す。リッチーはそれをしげしげとながめる。
「ギン、俺は思うんだがな。どっちの板にもへこみと出っ張りがあるだろ。それでだ、こいつらをパズルみたいに組み合わせて……」
かちゃかちゃ、金属同士がぶつかる音を立てながら、リッチーの手が動く。板同士のへこみ、出っ張り、それらはぴったりとはまって合体し、結果、新しい形の金属板が出来上がる。
それは、円の一部分が扇形に欠けたような形をしている。扇型の板同士を辺と辺でくっつけたのだから、当たり前のことではあるが。リッチーは少し興奮しながら喋る。
「見ろよ、がっちりはまったこの二枚。たぶんあともう一枚、似たようなのがあって、それをこの空いてるとこにはめればよ……。めでたく元の形に戻るってわけだ」
「もしそうなったら、メダルみたいなアイテムになるけど……」
「きっとそれはお宝だ、間違いねぇ。なんだかワクワクしてきやがったぜ……!」
二枚の金属板たちは室内の光を反射して、鈍く光っている。もしすべてが集まり、板たちが元の姿に戻ったら、いったい何が起こるのだろう?それはまだ、誰も知らない。
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