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第5章 決着の時

最後の期末試験

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期末試験前日。時間は夕方、場所は、人気ひとけのないチケット売り場。
チケットを売る機械の前に、リンと虎太郎が立っている。
虎太郎は機械の液晶パネルを操作して、試合表を呼び出す。
続いて学生証カードを挿入、さらに操作を続ける。
チケット購入画面が表示される、彼は自分の試合を選んで自分に賭ける。
財布を取り出し、お金を次々に入れる。
ジーッ、ジーッ……。機械音がした後、カードとチケットが排出される。
彼はそれらを受け取って、財布へとしまう。リンに話しかける。

「OK。終わったよ」
「勝てば10倍の払い戻し……」
「だが、負ければすっからかん。おまけに、俺は退学」
「別に、無理してあたしの真似しなくていいのに」
「いいんだよ。ここまできたら、毒食わば皿まで、だ。
 全てを賭けて背水の陣を敷く、とことんまでいってやる」
「うまくいくよ。きっと」
「あぁ」

虎太郎は歩き出す。だが、途中でリンが呼び止める。

「待って!」
「なんだよ?」
「最後に、これだけはあんたに伝えておきたいの。
 Trust yourself. どうか、自分自身を強く信じて。
 どんなに苦しくなっても、決して諦めないで。
 リスクを恐れず、勝利に向かって突進して!!」

虎太郎は微笑みながら返事をする。

「任せとけよ。もうビビったりしないから」
「……うん!」

リンの顔が笑顔で輝く。彼女は虎太郎の後を追いかける。
2人はその場を立ち去った。

同日の夜、虎太郎の自室。
彼はベッドに座り、右手に亡父の白銀小翼記章を持っている。
彼は記章に向かって語りかける。

「父さん。俺、頑張るよ。父さんみたいに、最後まで戦い抜く。
 たとえ負けるとしても、”全力を尽くして負けた”、そう言えるように頑張る。
 だから、見ていてくれよな……」

記章が部屋の明かりを反射して、鈍い輝きを虎太郎の顔へ投げかける。

ついに試験当日となった。
天候は快晴、風は微風。地上での模擬戦闘を行うにはうってつけの日。
教官と生徒たちは早朝に起きてバスに乗り、
学校から遠く離れたところにある広大な試験場に移動した。
荒野となっているそこは、ゴツゴツした起伏や斜面などがあり、
岩山や大小さまざまな岩などが存在している。
試験場のそばには頑丈な造りの建物があって、
それの内部にある教室たちには、中継ディスプレイが備え付けられている。
教官と生徒たちは、ここで安全に戦いの様子を見守ることができる。
また、各種の通信手段でパイロットと連絡を取り合うこともできる。
そして自分が試合をする時は、ここからヘリエンの格納庫へと向かう。

試合は予定通りに行われていった。
ある者は勝ち、ある者は負ける。
そのたびにクラス中がどよめき、試合賭博をしている者たちが興奮する。
時間が流れ、やがて正午が近づいたころ。
ついに、虎太郎とクレイグの試合が始まる時刻になった。

今、彼らはパイロット・スーツに身を包み、それぞれのヘリエンに乗っている。
実機のヘリエンのコックピットが持つ独特の雰囲気は、パイロットを緊張させる。
映像通信が2人のコックピットに映し出され、映像の中の教官ベリーが話し出す。

「2人とも、準備はどうだ?」

虎太郎。「大丈夫です」
クレイグ。「問題ありませんよ」

「武装はちゃんと確認してあるか?」

虎太郎の機体は、両手に近距離~中距離のマシンガンを装備、
両足に大型の剣を装着し、両肩にCIWS、背部にいくつかのミサイルという状態。
一方のクレイグは、両手に中距離~遠距離のマシンガン、
両足に標準サイズの剣、両肩にCIWS、背部に大量のミサイル。
虎太郎はベリーに答える。「はい、確認してあります」
クレイグの返答。「いつも通りの武装です、確認済みです」

「よろしい。では、試験を始める。
 2人とも、危険だと感じたら即座に降参すること。
 また、こちらからの指示にはきちんと従うこと。
 これからカウント・ダウンを始める、それが終わったら戦闘開始だ」

映像通信からベリーの姿が消える。
それからすぐに、「5」の数字が映像に現れる。
機械の合成音声がカウント・ダウンを開始する。

「5……4……3……2……1……0」



全てを得るか、全てを失うか? もう後戻りはできない。
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