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第1章 あの日の君を取り戻せ

虎/タイガー

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中間試験終了後、同日の放課後。学校内にあるカフェテリア。
あるテーブルの周りに、虎太郎と2人の男子生徒、計3人が座っている。
2人の男子生徒とは、試験中に声を出した2人だ。
黒人で背が高いのが特徴のジム、そして、白人で背が低いのが特徴のスライ。
彼ら3人は、今、ハンバーガーやコーラを飲み食いしながら喋っている。
ジムが虎太郎に向って話しかける。

「で、今後はどうするんだ、お前?」
「どうって……」
「学校に残りたいなら、やるべきはただ1つ。
 最後の期末試験に勝つ。なるほど、単純明快。
 だが問題は、どうやってそれを達成するかだ」
「そりゃ、努力しかないだろ」

スライが口を挟む。

「お前よぉ、いつも ”努力” ”努力” って言うけどよぉ……。
 それが結果につながったこと、どれだけあるんだよ?」
「少なくとも、2回前の中間試験じゃ結果になった。
 見てただろ、俺は勝ったぜ」
「ギリギリのところで、な。
 ぶっちゃけあれはまぐれだろ、おい。
 最後のミサイルが直撃しなかったら負けてたぜ」
「うるさいな、昔から言うだろ、”運も実力のうち”って」
「運がなくても勝てるのが、本当に実力ある奴なんだぜ」
「なんだよ……」

虎太郎は手元にあるハンバーガーをもぐもぐと食べきる。
その様子を見ながらジムが言う。

「トラタロー、あだ名は”タイガー”。
 お前の国じゃ、トラって言葉はタイガーを意味する。
 そしていつだったか、お前は言ったなぁ。
 ”俺はタイガーだ、タイガーみたいな強いパイロットになるんだ、
  だから俺のことはタイガーって呼んでくれ” って」
「なんだよいきなり、そんな話、こんなタイミングで……」
「別に傷つけるつもりじゃないが、はっきり言うぜ。
 お前はぜんぜんタイガーじゃない。これじゃあラビット(兎)だ」
「おい、ジム……!」
「落ち着け、怒るな、もう一度言うが、お間を傷つけるつもりはない。
 ただなぁ、お前はちょっと、タイガーを名乗るには弱すぎる。
 このままじゃ、みんなの笑い者で終わっちまう」

ジムに続けてスライが喋る。

「いや、とっくに笑い者になってるじゃんよ。
 お前だって知ってんだろ、陰じゃあみんな、お前を馬鹿にしてる。
 クレイグの野郎なんか、お前に挨拶しようともしねぇ」

苦々しい表情が虎太郎の顔に浮かぶ。彼はいくぶん強い語調で言う。

「そんなの分かってるよ、十分すぎるぐらい」

ジムの発言。

「とにかく、今日は解散しよう。
 俺も含めてみんな疲れてる、休憩が必要だ。
 休めばいい考えも浮かぶさ、タイガー」
「……わかったよ、そうしよう……」

3人は荷物をまとめ、食事のゴミを片付ける。
カフェテリアの外に出て、それぞれ別の方向へと歩いていく。
虎太郎は、練習用のヘリエンが置いてある格納庫へ向かって歩き出す。



そんな彼の姿を見つけて、そっと後を尾けていく、黒い長髪の女子生徒が1人。
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