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第二章
思わぬ再会
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「フィーネ、いるか?」
直後、呼びかける声がして――私は返事をする前にベッドから跳ね起き、扉に突進していた。
「セイさん!」
「……!?」
しかし、勢いよく開け放った扉の向こういたのは、セイさんとは似ても似つかない人物。
輝く白金の髪と青灰色の瞳に象牙色の肌に、甘く整った顔立ち。
童話に出てくるような王子様然とした長身の少年だった。
「アーウィン…!?」
「やぁ……フィー。二年ぶりだな」
意外な訪問にびっくりする私の顔をアーウィンが面白そうに眺める。
あれから二年経過しているので今は16歳だろうか……。
かなり背が伸びて大人っぽくなっているとはいえ、目の前にいるのは間違いなく私の幼馴染。ガウス帝国皇太子、アーウィン・ジェラルド・ガウスだった。
「な、な、なんで、あなたが、こんなところにいるの……!?」
「おい、他の男の名前を呼んだかと思ったら、今度は、なんでいるの? と来たか。
二年ちょっとぶりに再会した割に、ずいぶん冷たい態度だな?」
いかにも心外そうにアーウィンが形の良い唇を歪める。
「だ、だって、ここは神殿だから……アーウィンがいるのが、不思議だから…驚いてもしょうがないでしょう?」
しどろもどろに弁解がましく言う私の横をすり抜け、勝手にズカズカとアーウィンは部屋へ入る。
そして窓際の椅子まで行くと、ドカっと、腰を落とした。
「うん」
アーウィンは長い脚を組み、肘掛部分に腕を乗せて頬づえをつくと、物憂げな顔で頷く。
「たしかにここにいるのは不思議だよな。実際フィーの元へ辿りつくまで、俺は二年もかかってしまった」
「二年!」
「そうだ、お前とたかが会うのに二年もかかってしまったんだ。かなり面白い話だろ?」
全然その面白さが私には伝わらず、唖然として立っていると――
「長い話になるから、とりあえずお前も座ったらどうだ? 叔父上はしばらく帰らないはずだから、ゆっくり会話する時間がある」
思わぬ単語が出てきて私は聞き返す。
「叔父上? アーウィンの叔父さん?」
「神殿にいる俺の叔父といったら一人だけだろう? フィー、お前、神殿で修行して逆に脳みそが退行したんじゃないか?
心配になるほど察しが悪い」
どうやら辛辣さは健在のようだ。
私は少しむっとして答える。
「セイレム様の事? セイレム様が帰らないのと、私とアーウィンがゆっくり話せるのと、いったいどういう関係があるの?」
「……どうもこうも。お前にこんな軟禁生活を強いているのが、叔父上だと知らないのか?」
「ええ? そうなの?」
驚いたものの、言われてみればセイさんはセイレム様の指示で私の傍にいるんだっけ。
我ながらこの二年間の思考停止ぶりは酷いかも……。
「呑気なものだな……はぁっ! まあいい……」
盛大に嘆め息すると、アーウィンは椅子から飛び上がるように立ち、ツカツカとこちらに歩み寄ってきた。
と、近くに来たとたん、いきなり両手を差し出され、私はびくっと身構える。
「フィー、良く顔を見せろよ……」
言うやいなやアーウィンは私の顔を両手で挟み、ぐぃっと上向きにして間近から観察する。
「ずいぶん血色がいい……それに、幸せそうに見える」
「お、おかげ様で……」
「それに凄まじく綺麗になったな……」
凄まじくという表現が女性の容姿を褒めるのに相応しいかはともかく、とっても褒めていることだけは伝わった。
「ありがとう……あなたも凄く背が高くなって、それに……」
さらに格好良くなっている……!
続きの言葉は口に出さずに飲み込んだ。
そこでアーウィンは限界が来たように、発作的に叫ぶ。
「ああ……だめだ……我慢出来そうにない!」
直後、呼びかける声がして――私は返事をする前にベッドから跳ね起き、扉に突進していた。
「セイさん!」
「……!?」
しかし、勢いよく開け放った扉の向こういたのは、セイさんとは似ても似つかない人物。
輝く白金の髪と青灰色の瞳に象牙色の肌に、甘く整った顔立ち。
童話に出てくるような王子様然とした長身の少年だった。
「アーウィン…!?」
「やぁ……フィー。二年ぶりだな」
意外な訪問にびっくりする私の顔をアーウィンが面白そうに眺める。
あれから二年経過しているので今は16歳だろうか……。
かなり背が伸びて大人っぽくなっているとはいえ、目の前にいるのは間違いなく私の幼馴染。ガウス帝国皇太子、アーウィン・ジェラルド・ガウスだった。
「な、な、なんで、あなたが、こんなところにいるの……!?」
「おい、他の男の名前を呼んだかと思ったら、今度は、なんでいるの? と来たか。
二年ちょっとぶりに再会した割に、ずいぶん冷たい態度だな?」
いかにも心外そうにアーウィンが形の良い唇を歪める。
「だ、だって、ここは神殿だから……アーウィンがいるのが、不思議だから…驚いてもしょうがないでしょう?」
しどろもどろに弁解がましく言う私の横をすり抜け、勝手にズカズカとアーウィンは部屋へ入る。
そして窓際の椅子まで行くと、ドカっと、腰を落とした。
「うん」
アーウィンは長い脚を組み、肘掛部分に腕を乗せて頬づえをつくと、物憂げな顔で頷く。
「たしかにここにいるのは不思議だよな。実際フィーの元へ辿りつくまで、俺は二年もかかってしまった」
「二年!」
「そうだ、お前とたかが会うのに二年もかかってしまったんだ。かなり面白い話だろ?」
全然その面白さが私には伝わらず、唖然として立っていると――
「長い話になるから、とりあえずお前も座ったらどうだ? 叔父上はしばらく帰らないはずだから、ゆっくり会話する時間がある」
思わぬ単語が出てきて私は聞き返す。
「叔父上? アーウィンの叔父さん?」
「神殿にいる俺の叔父といったら一人だけだろう? フィー、お前、神殿で修行して逆に脳みそが退行したんじゃないか?
心配になるほど察しが悪い」
どうやら辛辣さは健在のようだ。
私は少しむっとして答える。
「セイレム様の事? セイレム様が帰らないのと、私とアーウィンがゆっくり話せるのと、いったいどういう関係があるの?」
「……どうもこうも。お前にこんな軟禁生活を強いているのが、叔父上だと知らないのか?」
「ええ? そうなの?」
驚いたものの、言われてみればセイさんはセイレム様の指示で私の傍にいるんだっけ。
我ながらこの二年間の思考停止ぶりは酷いかも……。
「呑気なものだな……はぁっ! まあいい……」
盛大に嘆め息すると、アーウィンは椅子から飛び上がるように立ち、ツカツカとこちらに歩み寄ってきた。
と、近くに来たとたん、いきなり両手を差し出され、私はびくっと身構える。
「フィー、良く顔を見せろよ……」
言うやいなやアーウィンは私の顔を両手で挟み、ぐぃっと上向きにして間近から観察する。
「ずいぶん血色がいい……それに、幸せそうに見える」
「お、おかげ様で……」
「それに凄まじく綺麗になったな……」
凄まじくという表現が女性の容姿を褒めるのに相応しいかはともかく、とっても褒めていることだけは伝わった。
「ありがとう……あなたも凄く背が高くなって、それに……」
さらに格好良くなっている……!
続きの言葉は口に出さずに飲み込んだ。
そこでアーウィンは限界が来たように、発作的に叫ぶ。
「ああ……だめだ……我慢出来そうにない!」
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