1 / 164
物語の始まり
やさしいへび 妖怪マガジン編集部:シナノ著
しおりを挟む
むかしむかしの、お話です。
この星には様々な生物たちがいました。
特徴はないが繁殖力の高い人族。
魔法と呼ばれる不思議な力を操る魔族。
動物へ化けたり動物の力を使用できる妖怪族。
各種族は多少の争いはあったものの、戦争のような大きな争いはなく、平和に暮らしていました。
あるとき、どこから来たのか、自分の事を神と名乗る生物が現れました。
神はオバケのようなとても大きな存在で、その世界の生物に悪戯を始めました。
神と一緒にやってきた天使という生物で町を襲ったり、神の吐く臭い息で生物が滅ぼされたりして大変です。
神とその子分である天使は嫌われものです。
人族は、魔族や妖怪族とは違い、弱い生物だったので逃げることしか出来ません。
人族は他者の意見を信じやすかったり、お調子者でもありました。
神や天使たちにしたがう人族には、不思議な力を持つ武器を与えられました。人族は信じられないことに、与えられた武器を使って、魔族や妖怪族をいじめたりしはじめました。
勇敢な魔族たちは神たちに、この星で悪さをしないように注意しました。
自分たちのする悪戯を注意された神たちは、面白くありません。
神たちは魔族と戦争をすることにしました。
魔族は、魔法を使って天使たちと勇敢に戦い、その数を種族を維持できないほどの絶望的数まで減らされてしまいました。
妖怪族は魔族を影から支援しました、神たちの持つ不思議な力に対抗する程の力を持っていなかったのです。
戦争に負けてしまったその星に昔からすんでいた生物たちは、理不尽な神の行動をおそれ、地下に住むことにしました。
地上から逃れ、生き延びた魔族と妖怪族はなんとか自分たちの住む世界を取り戻そうとします。
妖怪族は変わった特性を持っていました。
妖怪族はヒト形態から動物へ、動物形態からヒトへとトランスフォームすることが出来るちょっと変わった特徴を持っていたのです。
妖怪族は手先が器用で、色んな道具を作ることが得意でした。
魔法・化学そして科学の得意だった魔族と協力して、妖怪族は先進的な武器を作成そして量産していきます。
逃げた地下で妖怪達は種族特性を使用して、あるものはモグラにトランスフォームし、地下の拡張を。
あるものは鳥にトランスフォームして地上に残っている魔族や妖怪族を助けに向かいました。
地上に残った人族は、神たち達の奴隷として弄ばれる生活を送っていました。
人族は個々の能力は他の種族と比べて低く、特徴のない生き物です。
しかし繁殖力は高かったので魔族や妖怪族と比べて圧倒的に数が多かったのです。
神や子分の天使たちを、自分たちの支配者であると思いこんでいる人族は、神や天使たちに媚びへつらう狂信者と化していました。
ゲーム盤のような扱いで、人族同士が大規模な戦争を起こすまでになります。
一通り楽しんだあと、神は地上の生物が減りすぎたことに気づきました。
遊びすぎて数が減ってしまったのかな?しばらく弄ぶのを控え、生物が増えるまで待つことにします。
生物の数が少し増えるまでお昼寝です。
神の影響のなくなった地上にすむ人族は混乱しました。支配者の居ない人族は、いわば手綱の切れた馬のように迷走し始めます。
神が居なくなったのは魔族や妖怪のせいだと意味不明なことを言い始め、魔族や妖怪族を狩り始めるもの。
神や天使が面白がって伝えた聖書というファンタジー小説を誤って信じてしまい、解釈の違いから、人間同士で戦争を始めるものまで居る始末。
愚かな人族は留まることを知らず、迷走してしまいます。
星の管理を神から任されていた天使たちは人族が慌てふためく様を面白がってしまい。
争いを止めるどころか、混乱を増やして遊んでしまう始末。
神がいないにもかかわらず、地上は、まさに地獄の様相を呈しています。
地下に逃げ込んだ生物たちは、地下世界を拡張していきました。
豊かとは言い難いものの、平和な生活を送っていました。
しかし、やはり太陽が恋しいのです。
地下は平和だけれども、いつか地上での生活に戻りたい、年を経るごとに、その思いは濃くなっていきます。
もしかしたら神は自分たちをいじめることに飽きたかもしれない。
そのように考えた生物たちは数年に一度地上へ調査を出すことにします。
隠密に特化した部隊が編成され出発します。数年後、地上の様子が伝えられました。
神は昼寝をしているが、依然として地上は天使たちによる策謀で混乱しており。
地上はもはや平和とは言い難い世界に変貌していたのです。
その情報を持ち帰った部隊から伝えられた事実に、地下に逃げた生物たちは落胆しました。
それでも太陽は諦めきれません。神たちの目に届かない土地があるかもしれない。
地上の調査隊に、平和な土地を探すための新たな任務が追加されました。
昼寝から覚めた神によるいじめという名の遊びが再開されました。
地上の状況を調べるために編成された調査部隊の1つが神に見つかってしまい拷問を受けます。
神は地下に生き延びているであろう生物の存在を嗅ぎつけてはいたのですが、どこに入口があるのかわからず手を出せなかったのです。
神による拷問は、目玉をくり抜かれたり、皮を剥がされたり。体を少しづつヤスリで削り続けられたりとそれは酷いものでした。
拷問を受けても調査部隊の生物は神に仲間の事をバラしたりはしませんでした。
神は面白くありません。
業を煮やした神は調査隊の生物に病気を植え付けることにします。
自分の思い通りにならないのなら、ワザと逃がして、地下に戻らせ病気を振りまいて全滅させてしまおう。
神の領域から脱出した調査隊の生物は慎重に後をつけられていないか確認しつつ、ついに地下の世界に逃げ込んでしまいます。
この部隊の帰還からしばらくして地下に病気が広まってしまいます。
逃げ込んだ地下世界の1つは、あまり広くないうえ、飲み水を共用していた関係で、瞬く間に全滅へと追いやられてしまいました。
狭い場所で密集して生活をしていたために、起こってしまった悲劇でした。
神は生物が逃げ込んだ地面をスコップでほじくり返し、全滅していたことに喜びました。
ですが逃げ込んでいた地下世界が狭く、生物の数の死骸が少なすぎるので、あまり楽しくありませんでした。
この時、瀕死の小さな蛇が一匹生き残っていたことに気づきもしませんでした。
神は思います。
もしかしたら他の場所に地下世界を作っていきてるやつらがいるかも!
そこで神は新たな悪知恵をひらめきます。
地獄の地表に平和な世界を一つだけ作ることにしよう。
地表にも神の影響を受けない平和な場所がある!と思わせるためです。
その場所を信じて集まってきた生物をおもちゃにしようと考えたのです。
このためしみは成功することになります。
神は、平和な場所に生物たちが集まるまで、数百年昼寝をすることにしました。
「神の影響を受けない平和な土地がある」と調査隊から知らされたものたちは喜び、地下から続々と戻り、集まりました。
戻ってきた生物たちは、平和な場所の近くに集落を建設し、数を増やしていきます。
地上に戻れた生物たちは喜びました。
神が見逃すはずが無いと、反対するものもいましたが、やはり太陽の誘惑には、かないませんでした。
神からの干渉が無くなったため、地下に退避していたときに生まれた様々な文化が広まり混じり合います。
各種族の協力で技術は発展していき、大きな町となりました。
地下から戻った彼らの暮らす街は、様々な種族が行きかっており、多少の諍いはあったものの、平和と言える幸せな生活です。
それから400年経ち、
神が昼寝から覚めてしまいました。
幸せな世界は一変します。
伝承通りの存在による、傍若無人な振る舞いが再開されました。
人族の住む地域のみで大人しくなっていた天使たちも世界を飛び回り悪さをします。
数百年という短い期間でしたが、喜びの世界は一夜にして地獄へと様変わりしました。
困惑し、逃げまどう生物たちに神や天使は大喜びです。
足で村を擂り潰したり。小便をかけて溺死させたりと酷いものです。
地獄と化した街から少し離れたところに地下世界の入口がありました。
その地下世界に住んでいた生物たちは気付きました。
また地獄が始まってしまったのだと。
神が見逃すはずが無いと訴え続けた者たちでした。
彼らも太陽が恋しかったのですが、神が滅ぶまでは気を許すことはありませんでした。
日光浴を週に数時間行う程度で我慢していたのです。
彼らは、なんとか神を滅ぼすための手段を手に入れようと対抗する手段を模索し、試してみましたが、良い結果を出すことが出来ません。
相手があまりにも巨大であり、強大であり、理不尽であったのです。
皆が絶望しかけた時、一匹の蛇が神の足に噛みつきました。その蛇は400年前の地獄を生き抜いてきた妖怪が変身した蛇でした。
病気によって滅ぼされた地下、そこに撒き散らされた毒を、牙のそのただ一点に宿し、400年間耐えに耐えぬいた一撃。その牙は神の体に深々と突き刺さりました。
自分が攻撃され、傷つくことなど考えていなかった神は噛まれた傷から広がった毒であっという間に死にました。
神を殺した蛇は、神を丸呑みにしようとします。
少しづつ少しづつ、100年かけて丸呑みし神の体を惑星から消し去ったのです。
統率者である神を失った天使は混乱します。支配下に有った人種と協力し、魔族・妖怪の混成軍と闘います。支配されていた奴隷種族の人族とは違い、自分たちの考えで科学文明の発達した混成軍に叶うわけもなく。わずか数年で混成軍の勝利となります。
生き残った天使は自然消滅したり、誰も来ないような秘境へ引きこもったりしました。
混成軍の兵士たちは戦う気のなくなった天使たちを掃討することなく監視することにしました。
今回の戦いでわかったことがあります。
人族は数は多いが、騙されやすく操られやすく主義主張を持たない可愛そうな種族であると。
彼らが自立できるまで、魔族や妖怪たちは見守ることにしました。
かつての仲間が、いずれかの未来に自立できることを信じて。
蛇の妖怪は、神の体を消化している時に神の脳みそから吸い出した情報を、その惑星の住民に伝えました。
神は1体だけではない、うじゃうじゃいる。
この惑星を脅かしていた1体以外にも沢山いることを知った惑星の住民は大層驚きました。
蛇の妖怪は言いました、神から吸収した力を元に、星々を渡り滅ぼしてくると。
地獄を生き抜いていきた魔族や妖怪たちは賛同し、蛇と共に旅立つことにしました。
こうして蛇の妖怪一行は、神から吸い取った知識を基に星を渡る船を作成し旅立っていきます。
蛇の妖怪により神の支配から解放された惑星の住民たちは、蛇の妖怪一行の存在を物語として子供たちに伝えていきました。
「悪いことをしたら蛇の妖怪に丸呑みにされますよ!」このような童話が作られたりします。
蛇の妖怪達が旅立ってから数千年の時が過ぎ、平和となった筈の惑星へ神の影が差しました。
今回現れたのは1体ではなく集団で現れたのです。
以前の神とは違い小型で力が弱いようですが、その分狡猾でした。
地獄が再び始まりました。増えに増えていた惑星の生物はその数を5分の1ほどに減らされてしまいます。
物語にあったように地下へ逃げるもの、以前の神の時のように、神に加担し悪行を行う人族が現れたりします。
様々な手を尽くして神は生物たちを翻弄し楽しみました。
何年も何年も何年も、その星は神による遊びに翻弄された続けました。
近隣の銀河すべての神を滅ぼし、惑星に戻ってきた蛇の目に映ったもの。
それは一番平和なはずの星でした。
そして一番目にしたくなかった裏切りに満ちた星となっていました。
蛇と仲間たちは悲しみ、怒り、神という名のゴミとそのしもべたちを滅ぼし始めます。
ですが腐りきった世界は元に戻りません。
神によって植え付けられた裏切りという名の毒はどうやっても浄化できませんでした。
神という名のゴミの最後の一匹を擂り潰した蛇は、惑星を根本から浄化することにします。
《惑星再生》
それは神の毒を取り除き。世界を最初からやり直す秘技。
涙を流しながら蛇は己の力の殆どを使い、《惑星再生》を実行したのです。
その強大な力の殆どを失った蛇ですが、惑星が蘇っていく様を見守ります。
神の芽が生じるたびに丸呑みにしました。
やがて神の毒が全て消え去ると同時に蛇も眠りに就きました。
こうして僕たちの今生きている世界が始まったのです。
僕たち、わたしたちは自由です。ですが他の生物に対して敬意を忘れてはいけません。
共存を忘れてはなりません。助け合って生きていきましょう。
卑怯な悪さをしたら世界を見守っているその大蛇が、大きな口を開いた恐ろしいその大蛇が、丸呑みにやって来るかもしれませんよ!
~おしまい~
『妖怪互助会発行 妖怪マガジン創刊特大号 ふろく:ぼくたちわたしたちのやさしいおうさま、ギャラクティックうわばみのひみつ』より抜粋
この星には様々な生物たちがいました。
特徴はないが繁殖力の高い人族。
魔法と呼ばれる不思議な力を操る魔族。
動物へ化けたり動物の力を使用できる妖怪族。
各種族は多少の争いはあったものの、戦争のような大きな争いはなく、平和に暮らしていました。
あるとき、どこから来たのか、自分の事を神と名乗る生物が現れました。
神はオバケのようなとても大きな存在で、その世界の生物に悪戯を始めました。
神と一緒にやってきた天使という生物で町を襲ったり、神の吐く臭い息で生物が滅ぼされたりして大変です。
神とその子分である天使は嫌われものです。
人族は、魔族や妖怪族とは違い、弱い生物だったので逃げることしか出来ません。
人族は他者の意見を信じやすかったり、お調子者でもありました。
神や天使たちにしたがう人族には、不思議な力を持つ武器を与えられました。人族は信じられないことに、与えられた武器を使って、魔族や妖怪族をいじめたりしはじめました。
勇敢な魔族たちは神たちに、この星で悪さをしないように注意しました。
自分たちのする悪戯を注意された神たちは、面白くありません。
神たちは魔族と戦争をすることにしました。
魔族は、魔法を使って天使たちと勇敢に戦い、その数を種族を維持できないほどの絶望的数まで減らされてしまいました。
妖怪族は魔族を影から支援しました、神たちの持つ不思議な力に対抗する程の力を持っていなかったのです。
戦争に負けてしまったその星に昔からすんでいた生物たちは、理不尽な神の行動をおそれ、地下に住むことにしました。
地上から逃れ、生き延びた魔族と妖怪族はなんとか自分たちの住む世界を取り戻そうとします。
妖怪族は変わった特性を持っていました。
妖怪族はヒト形態から動物へ、動物形態からヒトへとトランスフォームすることが出来るちょっと変わった特徴を持っていたのです。
妖怪族は手先が器用で、色んな道具を作ることが得意でした。
魔法・化学そして科学の得意だった魔族と協力して、妖怪族は先進的な武器を作成そして量産していきます。
逃げた地下で妖怪達は種族特性を使用して、あるものはモグラにトランスフォームし、地下の拡張を。
あるものは鳥にトランスフォームして地上に残っている魔族や妖怪族を助けに向かいました。
地上に残った人族は、神たち達の奴隷として弄ばれる生活を送っていました。
人族は個々の能力は他の種族と比べて低く、特徴のない生き物です。
しかし繁殖力は高かったので魔族や妖怪族と比べて圧倒的に数が多かったのです。
神や子分の天使たちを、自分たちの支配者であると思いこんでいる人族は、神や天使たちに媚びへつらう狂信者と化していました。
ゲーム盤のような扱いで、人族同士が大規模な戦争を起こすまでになります。
一通り楽しんだあと、神は地上の生物が減りすぎたことに気づきました。
遊びすぎて数が減ってしまったのかな?しばらく弄ぶのを控え、生物が増えるまで待つことにします。
生物の数が少し増えるまでお昼寝です。
神の影響のなくなった地上にすむ人族は混乱しました。支配者の居ない人族は、いわば手綱の切れた馬のように迷走し始めます。
神が居なくなったのは魔族や妖怪のせいだと意味不明なことを言い始め、魔族や妖怪族を狩り始めるもの。
神や天使が面白がって伝えた聖書というファンタジー小説を誤って信じてしまい、解釈の違いから、人間同士で戦争を始めるものまで居る始末。
愚かな人族は留まることを知らず、迷走してしまいます。
星の管理を神から任されていた天使たちは人族が慌てふためく様を面白がってしまい。
争いを止めるどころか、混乱を増やして遊んでしまう始末。
神がいないにもかかわらず、地上は、まさに地獄の様相を呈しています。
地下に逃げ込んだ生物たちは、地下世界を拡張していきました。
豊かとは言い難いものの、平和な生活を送っていました。
しかし、やはり太陽が恋しいのです。
地下は平和だけれども、いつか地上での生活に戻りたい、年を経るごとに、その思いは濃くなっていきます。
もしかしたら神は自分たちをいじめることに飽きたかもしれない。
そのように考えた生物たちは数年に一度地上へ調査を出すことにします。
隠密に特化した部隊が編成され出発します。数年後、地上の様子が伝えられました。
神は昼寝をしているが、依然として地上は天使たちによる策謀で混乱しており。
地上はもはや平和とは言い難い世界に変貌していたのです。
その情報を持ち帰った部隊から伝えられた事実に、地下に逃げた生物たちは落胆しました。
それでも太陽は諦めきれません。神たちの目に届かない土地があるかもしれない。
地上の調査隊に、平和な土地を探すための新たな任務が追加されました。
昼寝から覚めた神によるいじめという名の遊びが再開されました。
地上の状況を調べるために編成された調査部隊の1つが神に見つかってしまい拷問を受けます。
神は地下に生き延びているであろう生物の存在を嗅ぎつけてはいたのですが、どこに入口があるのかわからず手を出せなかったのです。
神による拷問は、目玉をくり抜かれたり、皮を剥がされたり。体を少しづつヤスリで削り続けられたりとそれは酷いものでした。
拷問を受けても調査部隊の生物は神に仲間の事をバラしたりはしませんでした。
神は面白くありません。
業を煮やした神は調査隊の生物に病気を植え付けることにします。
自分の思い通りにならないのなら、ワザと逃がして、地下に戻らせ病気を振りまいて全滅させてしまおう。
神の領域から脱出した調査隊の生物は慎重に後をつけられていないか確認しつつ、ついに地下の世界に逃げ込んでしまいます。
この部隊の帰還からしばらくして地下に病気が広まってしまいます。
逃げ込んだ地下世界の1つは、あまり広くないうえ、飲み水を共用していた関係で、瞬く間に全滅へと追いやられてしまいました。
狭い場所で密集して生活をしていたために、起こってしまった悲劇でした。
神は生物が逃げ込んだ地面をスコップでほじくり返し、全滅していたことに喜びました。
ですが逃げ込んでいた地下世界が狭く、生物の数の死骸が少なすぎるので、あまり楽しくありませんでした。
この時、瀕死の小さな蛇が一匹生き残っていたことに気づきもしませんでした。
神は思います。
もしかしたら他の場所に地下世界を作っていきてるやつらがいるかも!
そこで神は新たな悪知恵をひらめきます。
地獄の地表に平和な世界を一つだけ作ることにしよう。
地表にも神の影響を受けない平和な場所がある!と思わせるためです。
その場所を信じて集まってきた生物をおもちゃにしようと考えたのです。
このためしみは成功することになります。
神は、平和な場所に生物たちが集まるまで、数百年昼寝をすることにしました。
「神の影響を受けない平和な土地がある」と調査隊から知らされたものたちは喜び、地下から続々と戻り、集まりました。
戻ってきた生物たちは、平和な場所の近くに集落を建設し、数を増やしていきます。
地上に戻れた生物たちは喜びました。
神が見逃すはずが無いと、反対するものもいましたが、やはり太陽の誘惑には、かないませんでした。
神からの干渉が無くなったため、地下に退避していたときに生まれた様々な文化が広まり混じり合います。
各種族の協力で技術は発展していき、大きな町となりました。
地下から戻った彼らの暮らす街は、様々な種族が行きかっており、多少の諍いはあったものの、平和と言える幸せな生活です。
それから400年経ち、
神が昼寝から覚めてしまいました。
幸せな世界は一変します。
伝承通りの存在による、傍若無人な振る舞いが再開されました。
人族の住む地域のみで大人しくなっていた天使たちも世界を飛び回り悪さをします。
数百年という短い期間でしたが、喜びの世界は一夜にして地獄へと様変わりしました。
困惑し、逃げまどう生物たちに神や天使は大喜びです。
足で村を擂り潰したり。小便をかけて溺死させたりと酷いものです。
地獄と化した街から少し離れたところに地下世界の入口がありました。
その地下世界に住んでいた生物たちは気付きました。
また地獄が始まってしまったのだと。
神が見逃すはずが無いと訴え続けた者たちでした。
彼らも太陽が恋しかったのですが、神が滅ぶまでは気を許すことはありませんでした。
日光浴を週に数時間行う程度で我慢していたのです。
彼らは、なんとか神を滅ぼすための手段を手に入れようと対抗する手段を模索し、試してみましたが、良い結果を出すことが出来ません。
相手があまりにも巨大であり、強大であり、理不尽であったのです。
皆が絶望しかけた時、一匹の蛇が神の足に噛みつきました。その蛇は400年前の地獄を生き抜いてきた妖怪が変身した蛇でした。
病気によって滅ぼされた地下、そこに撒き散らされた毒を、牙のそのただ一点に宿し、400年間耐えに耐えぬいた一撃。その牙は神の体に深々と突き刺さりました。
自分が攻撃され、傷つくことなど考えていなかった神は噛まれた傷から広がった毒であっという間に死にました。
神を殺した蛇は、神を丸呑みにしようとします。
少しづつ少しづつ、100年かけて丸呑みし神の体を惑星から消し去ったのです。
統率者である神を失った天使は混乱します。支配下に有った人種と協力し、魔族・妖怪の混成軍と闘います。支配されていた奴隷種族の人族とは違い、自分たちの考えで科学文明の発達した混成軍に叶うわけもなく。わずか数年で混成軍の勝利となります。
生き残った天使は自然消滅したり、誰も来ないような秘境へ引きこもったりしました。
混成軍の兵士たちは戦う気のなくなった天使たちを掃討することなく監視することにしました。
今回の戦いでわかったことがあります。
人族は数は多いが、騙されやすく操られやすく主義主張を持たない可愛そうな種族であると。
彼らが自立できるまで、魔族や妖怪たちは見守ることにしました。
かつての仲間が、いずれかの未来に自立できることを信じて。
蛇の妖怪は、神の体を消化している時に神の脳みそから吸い出した情報を、その惑星の住民に伝えました。
神は1体だけではない、うじゃうじゃいる。
この惑星を脅かしていた1体以外にも沢山いることを知った惑星の住民は大層驚きました。
蛇の妖怪は言いました、神から吸収した力を元に、星々を渡り滅ぼしてくると。
地獄を生き抜いていきた魔族や妖怪たちは賛同し、蛇と共に旅立つことにしました。
こうして蛇の妖怪一行は、神から吸い取った知識を基に星を渡る船を作成し旅立っていきます。
蛇の妖怪により神の支配から解放された惑星の住民たちは、蛇の妖怪一行の存在を物語として子供たちに伝えていきました。
「悪いことをしたら蛇の妖怪に丸呑みにされますよ!」このような童話が作られたりします。
蛇の妖怪達が旅立ってから数千年の時が過ぎ、平和となった筈の惑星へ神の影が差しました。
今回現れたのは1体ではなく集団で現れたのです。
以前の神とは違い小型で力が弱いようですが、その分狡猾でした。
地獄が再び始まりました。増えに増えていた惑星の生物はその数を5分の1ほどに減らされてしまいます。
物語にあったように地下へ逃げるもの、以前の神の時のように、神に加担し悪行を行う人族が現れたりします。
様々な手を尽くして神は生物たちを翻弄し楽しみました。
何年も何年も何年も、その星は神による遊びに翻弄された続けました。
近隣の銀河すべての神を滅ぼし、惑星に戻ってきた蛇の目に映ったもの。
それは一番平和なはずの星でした。
そして一番目にしたくなかった裏切りに満ちた星となっていました。
蛇と仲間たちは悲しみ、怒り、神という名のゴミとそのしもべたちを滅ぼし始めます。
ですが腐りきった世界は元に戻りません。
神によって植え付けられた裏切りという名の毒はどうやっても浄化できませんでした。
神という名のゴミの最後の一匹を擂り潰した蛇は、惑星を根本から浄化することにします。
《惑星再生》
それは神の毒を取り除き。世界を最初からやり直す秘技。
涙を流しながら蛇は己の力の殆どを使い、《惑星再生》を実行したのです。
その強大な力の殆どを失った蛇ですが、惑星が蘇っていく様を見守ります。
神の芽が生じるたびに丸呑みにしました。
やがて神の毒が全て消え去ると同時に蛇も眠りに就きました。
こうして僕たちの今生きている世界が始まったのです。
僕たち、わたしたちは自由です。ですが他の生物に対して敬意を忘れてはいけません。
共存を忘れてはなりません。助け合って生きていきましょう。
卑怯な悪さをしたら世界を見守っているその大蛇が、大きな口を開いた恐ろしいその大蛇が、丸呑みにやって来るかもしれませんよ!
~おしまい~
『妖怪互助会発行 妖怪マガジン創刊特大号 ふろく:ぼくたちわたしたちのやさしいおうさま、ギャラクティックうわばみのひみつ』より抜粋
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
王太子さま、側室さまがご懐妊です
家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。
愛する彼女を妃としたい王太子。
本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。
そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。
あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる