上 下
93 / 164
章5 道程

ナーシィーコール ~四十肩のオッサンと、ナースの取り合いバトル~

しおりを挟む
静岡市にある妖怪病院のベッドの上で目を覚ます。


残念ながら、おにゃのこの膝枕やオッパオマクラではない。
ふつーのマクラ&寝床だ。

静岡に帰ってこれてよかった。

調べなくてもわかる、ここは世界最先端医療を誇る静岡の病院だ。

わけのわからん世界に飛ばされて死を覚悟したが、戻ってこれて本当に良かった。

枕元にはフルーツ盛り合わせのバスケットだけがある。フルーツどこいった。

妖怪互助会一同様からのプレゼントだ。

どこの幼怪の腹の中に消えたのか、それは窓際に咲く綺麗なお花さんしか知らないだろう。


オナカが減った。妖怪ポシェットは自宅だ。非常食のうなぎパイも食べれない。手が震えてきた。

うなぎパイ信者によくみられる症状だ。

禁うなぎパイ3日目は最も危ないと言われている。

ハッピーパウダー(ウルトラハッピーにならないほう)のお菓子にも同じ症状が出るというのは常識だ。

駄目だ、力が出ない。そうだここは本物の病院だ、ナース(看護師さん)コールボタンはどこだ。

ナースコールボタンは枕元にあるはずだ。


周囲を見回す、二人部屋かな?

向かいには妖怪40肩で入院したっぽいオッサン妖怪がいる。

妖怪40肩は枕元のナースコール用のボタンへ手を伸ばすことが出来ないのだ。

可哀そうだな。今回は俺の勝ちだフフフ。

遠慮なくナースコールボタンを押させていただこう。


ナースコールのスイッチを押し込む。

このスイッチ押しても音が鳴らないんで、連絡がナースセンターへ飛んだのかどうかわかんないんだよね。

なんでまだ改善されてないんだろう。


今の俺は妖怪コアを酷使したせいで立ち上がれない。

小鹿のようにプルプルしながらも立ち上がれるものが羨ましい。

枕元にあったマイクロフォンから返事がある。

「ナースセンターです。どうしました?」

「今、目を覚ましました。お腹減ったので何か入れたいです」

ゴハンの要求をする。

以前、盲腸で入院した事があるので看護師相手は慣れているのよ。

状況報告より要求を重視すべきなのである。


何故なら体の状況は、向こうの方が詳しいことが多い。

「すぐに行きます」

妖怪看護師が来てくれた。現代妖怪っぽいな、若く見えるが何百歳なのかなー。


御飯を用意してもらいながら、担ぎ込まれた時の状況を聞いてみた。

真夜中にスッポンポンの状態で妖怪互助会旗の根元に倒れていたらしい。

すぐさま静岡県警が「へんたいふしんしゃさん」扱いで逮捕しようとしたが、意識がなかったので救急病院へ搬送。

妖怪であることがわかったので妖怪病院へ。

体をスキャンしたところ、極度の妖怪コア酷使状態であった。

動けないのは、その反動とのこと。


そうか、静岡内でなら妖怪的バトルで普通の病院へ担ぎ込まれてもモルモットにならずに済むんだな。

おりこうになったぜ。


ベッドの上に台を設置してもらい、御飯が並べられる。

デザートの小っちゃいゼリーは基本だよね。

魚料理のようだ、魚は鰆か?

いや、謎の白身魚Xかもしれん気を抜くな!

普通の鰆だった。でもこれ脂が強いからちょっと苦手。


うーむ、なんでベッドの名前欄に俺の名前が書いてあるんだろう全裸で運ばれたんだよな?

ああ、妖怪ウォッチに刻印されてる妖怪IDか。

全裸なのにウォッチだけ付けてるとか凄い変態っぽい出で立ちだったんだな!


今後の事も考えて皮膚への妖怪ウォッチのサーキットを彫写してもらった方がいいのかな?

今回はマジでヤバかった。

何か対策を練っておかねばシャレにならぬ。

いつまた、あのような不気味な空間に放り込まれるかわからん。


「食事は出来るようで安心しました、食べ終えた頃に食器回収に来ますね」

しばらく看護師さんは様子を見てくれていたが、大丈夫そうと判断したのか退出していった。

もちろん売店にうっているであろう、うなぎパイは買ってきてもらうよう頼んである。

うなぎパイは病院にも納入される程の安心商品なのだ。

入院患者さんの心の支えと言えよう。

鰆の骨を取り除いていく。ゆっくり咀嚼し、お腹へ入れていく。

何日寝ていたのかわからないが、久々に生き物らしく食事をした気がする。


ベッドに付属の妖怪ウィンドウをバッテリー起動。

妖怪ウィンドウは携帯波を使用していないので病院内で使用しても問題ないのだ。

ただし院内モードである。

ほかの患者さんの迷惑になるような真似は出来ない。

即刻、棺桶行きだからだ。

妖怪病院はそういう恐ろしいところだ。

妖怪看護師は高レベルのパワー型妖怪が揃っている。

術後の痛みで大暴れしたりする妖怪患者さんがいるためだ。


既にナースセンターから連絡が通っているかも知れないが、目を覚ましたことを、妖怪互助会に報告しておかないとな。

今回の拉致は何が目的だったのかさっぱりだ、あまりにも突然過ぎてさっぱりわからん。

前回のようにチョット強いニンゲンという状態で連れ去られたわけではなかったし。


まぁ拉致するヤロー共の理由なんざ知ったものかよ。

また拉致さられたら問答無用で制圧だ。基本姿勢は変える必要性は感じない。


文句があるなら贈答品持参で謝罪に来るがいいわ。

もちろん妖怪互助会を通してからな。


怒りに震えながらベッド付属の妖怪ウィンドウから簡単な報告書を書き上げて送信。


詳細な報告書は撮影した動画を添付して送る予定だ、撮影した妖怪バトル動画は、妖怪ウォッチとともにナースセンターが預かっているであろう妖怪ウィンドウに入っているので今は見れない。


立ち上がって歩き回れるようになるまで動画の確認は行えないのは悲しいところだ。


無理を言えば車椅子とかで中庭に移動し使えるかも知れないな。


いや、そんな悠長な事を言っている場合ではない、非常事態と言えば非常事態か。

今の状態で拉致が行われたら対抗できるとは言えない。

早めに報告を行ない、第二の被害者を出す前に対策を取っておいてもらったほうが良いだろう。


倒れる前に妖怪ウィンドウへ出ていたログも気になるしな。


食器の回収に来た看護師さんに、妖怪ウォッチや妖怪ウィンドウを使用したいと相談してみる。


妖怪互助会へ至急提出する必要があるデータが入っている、と言ったのが功を奏したのか了承してもらえた。

なんとビックリ、入院している部屋は個人用の妖怪アイテムの使用が許されている部屋だった。

妖怪グレードの高い患者さんのための少し高級な病室らしい。

俺って妖怪グレード高いんだっけ? 他の妖怪と比較したこと無いんでさっぱりだわ。


「すぐに預かっていた妖怪アイテム持ってきますね」

看護師さんは食器を運びながら言ってくれた。


「ありがとう」


早く立って歩きまわりたい、導尿カテーテルが刺さった状態は辛いのよ。

自力で歩き回れるようになるまで、抜いてもらえないのだ。

などと考えているうちに妖怪アイテムを持ってきてもらえた。



妖怪ウォッチへ初動に必要な妖怪パワーを入れて起動。妖怪ウィンドウも同様に起動していく。

「Hello, yokai world!」妖怪ウィンドウの初期起動メッセージ久々にみたな。

何やらアップデートが走っているような?

ちょっと起動が遅いですね。

あ、再起動が走った。

妖怪ウィンドウのコアモジュールに修正が入ったのかな?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王太子さま、側室さまがご懐妊です

家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。 愛する彼女を妃としたい王太子。 本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。 そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。 あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

処理中です...