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勘当という言葉にデビットは表情を青く染めた。
「か、勘当!? 待ってください父上──!」
「まず、マリア嬢、今回のこと、本当に申し訳ない」
アランが私に深く頭を下げた。
どこまでも誠実な表情だった。
「息子の話を真実だと思い込み、失礼な態度を取ってしまった。今回の息子の失態と合わせて、出来ることなら何でもさせてもらう」
「わかりました」
私は了承した。
慰謝料と十分な詫びを貰えるなら問題はない。
「感謝する」
アランは顔を上げるとデビットに向き直る。
「慰謝料は一時的に建て替えよう。だが、後で全てお前に請求する」
「なっ、何で──!」
「何故? お前が父を騙し、このベイカー家の尊厳を地に落としたからだ」
「そんな、僕はただ真実の愛に──」
「真実の愛だと? 嘘をつくことしか貫けない愛など嘘っぱちだ。見損なったよ、父としても男としてもな」
「……っ!」
デビットは何も言い返せないようだった。
アランはその姿を見て失望したようにため息をついた。
「私にも非があったことは認めよう。無条件にお前を信じてしまった。だから慰謝料は立て替えるし償いもしっかりとする。だがそこまでだ。ちゃんと慰謝料の分をお前には払ってもらう」
デビットはたじろぐ。
そしてどうにかして自分が慰謝料を払うのを回避できるか頭を回し始めた。
「……しかし、僕がいなければ後継ぎが」
「安心しろ、後継ぎならお前より優秀な兄弟がたくさんいる」
アランはデビットが言い終える前に言葉を挟んだ。
それでデビットはもう打つ手はないと悟ったのか力なく崩れ落ちた。
アランはそんなデビットの肩に手を置く。
「最期の手向けとして仕事なら紹介してやる。賃金も低く危ない仕事だがな」
「か、勘当!? 待ってください父上──!」
「まず、マリア嬢、今回のこと、本当に申し訳ない」
アランが私に深く頭を下げた。
どこまでも誠実な表情だった。
「息子の話を真実だと思い込み、失礼な態度を取ってしまった。今回の息子の失態と合わせて、出来ることなら何でもさせてもらう」
「わかりました」
私は了承した。
慰謝料と十分な詫びを貰えるなら問題はない。
「感謝する」
アランは顔を上げるとデビットに向き直る。
「慰謝料は一時的に建て替えよう。だが、後で全てお前に請求する」
「なっ、何で──!」
「何故? お前が父を騙し、このベイカー家の尊厳を地に落としたからだ」
「そんな、僕はただ真実の愛に──」
「真実の愛だと? 嘘をつくことしか貫けない愛など嘘っぱちだ。見損なったよ、父としても男としてもな」
「……っ!」
デビットは何も言い返せないようだった。
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「私にも非があったことは認めよう。無条件にお前を信じてしまった。だから慰謝料は立て替えるし償いもしっかりとする。だがそこまでだ。ちゃんと慰謝料の分をお前には払ってもらう」
デビットはたじろぐ。
そしてどうにかして自分が慰謝料を払うのを回避できるか頭を回し始めた。
「……しかし、僕がいなければ後継ぎが」
「安心しろ、後継ぎならお前より優秀な兄弟がたくさんいる」
アランはデビットが言い終える前に言葉を挟んだ。
それでデビットはもう打つ手はないと悟ったのか力なく崩れ落ちた。
アランはそんなデビットの肩に手を置く。
「最期の手向けとして仕事なら紹介してやる。賃金も低く危ない仕事だがな」
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