婚約破棄?構いませんが、当然慰謝料は貰えるんですよね?

水垣するめ

文字の大きさ
上 下
7 / 8

7話

しおりを挟む
 勘当という言葉にデビットは表情を青く染めた。

「か、勘当!? 待ってください父上──!」

「まず、マリア嬢、今回のこと、本当に申し訳ない」

 アランが私に深く頭を下げた。
 どこまでも誠実な表情だった。

「息子の話を真実だと思い込み、失礼な態度を取ってしまった。今回の息子の失態と合わせて、出来ることなら何でもさせてもらう」

「わかりました」

 私は了承した。
 慰謝料と十分な詫びを貰えるなら問題はない。

「感謝する」

 アランは顔を上げるとデビットに向き直る。

「慰謝料は一時的に建て替えよう。だが、後で全てお前に請求する」

「なっ、何で──!」

「何故? お前が父を騙し、このベイカー家の尊厳を地に落としたからだ」

「そんな、僕はただ真実の愛に──」

「真実の愛だと? 嘘をつくことしか貫けない愛など嘘っぱちだ。見損なったよ、父としても男としてもな」

「……っ!」

 デビットは何も言い返せないようだった。
 アランはその姿を見て失望したようにため息をついた。

「私にも非があったことは認めよう。無条件にお前を信じてしまった。だから慰謝料は立て替えるし償いもしっかりとする。だがそこまでだ。ちゃんと慰謝料の分をお前には払ってもらう」

 デビットはたじろぐ。
 そしてどうにかして自分が慰謝料を払うのを回避できるか頭を回し始めた。

「……しかし、僕がいなければ後継ぎが」

「安心しろ、後継ぎならお前より優秀な兄弟がたくさんいる」

 アランはデビットが言い終える前に言葉を挟んだ。
 それでデビットはもう打つ手はないと悟ったのか力なく崩れ落ちた。
 アランはそんなデビットの肩に手を置く。

「最期の手向けとして仕事なら紹介してやる。賃金も低く危ない仕事だがな」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。

久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」  煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。  その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。  だったら良いでしょう。  私が綺麗に断罪して魅せますわ!  令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?

くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。

音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。> 婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。 冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。 「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」

聖女の力を失ったと言われて王太子様から婚約破棄の上国外追放を命じられましたが、恐ろしい魔獣の国だと聞かされていた隣国で溺愛されています

綾森れん
恋愛
「力を失った聖女などいらない。お前との婚約は破棄する!」 代々、聖女が王太子と結婚してきた聖ラピースラ王国。 現在の聖女レイチェルの祈りが役に立たないから聖騎士たちが勝てないのだと責められ、レイチェルは国外追放を命じられてしまった。 聖堂を出ると王都の民衆に石を投げられる。 「お願い、やめて!」 レイチェルが懇願したとき不思議な光が彼女を取り巻き、レイチェルは転移魔法で隣国に移動してしまう。 恐ろしい魔獣の国だと聞かされていた隣国で、レイチェルはなぜか竜人の盟主から溺愛される。 (本作は小説家になろう様に掲載中の別作品『精霊王の末裔』と同一世界観ですが、200年前の物語なので未読でも一切問題ありません!)

婚約破棄に全力感謝

あーもんど
恋愛
主人公の公爵家長女のルーナ・マルティネスはあるパーティーで婚約者の王太子殿下に婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。でも、ルーナ自身は全く気にしてない様子....いや、むしろ大喜び! 婚約破棄?国外追放?喜んでお受けします。だって、もうこれで国のために“力”を使わなくて済むもの。 実はルーナは世界最強の魔導師で!? ルーナが居なくなったことにより、国は滅びの一途を辿る! 「滅び行く国を遠目から眺めるのは大変面白いですね」 ※色々な人達の目線から話は進んでいきます。 ※HOT&恋愛&人気ランキング一位ありがとうございます(2019 9/18)

エメラインの結婚紋

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢エメラインと侯爵ブッチャーの婚儀にて結婚紋が光った。この国では結婚をすると重婚などを防ぐために結婚紋が刻まれるのだ。それが婚儀で光るということは重婚の証だと人々は騒ぐ。ブッチャーに夫は誰だと問われたエメラインは「夫は三十分後に来る」と言う。さら問い詰められて結婚の経緯を語るエメラインだったが、手を上げられそうになる。その時、駆けつけたのは一団を率いたこの国の第一王子ライオネスだった――

(完結)伯爵家嫡男様、あなたの相手はお姉様ではなく私です

青空一夏
恋愛
私はティベリア・ウォーク。ウォーク公爵家の次女で、私にはすごい美貌のお姉様がいる。妖艶な体つきに色っぽくて綺麗な顔立ち。髪は淡いピンクで瞳は鮮やかなグリーン。 目の覚めるようなお姉様の容姿に比べて私の身体は小柄で華奢だ。髪も瞳もありふれたブラウンだし、鼻の頭にはそばかすがたくさん。それでも絵を描くことだけは大好きで、家族は私の絵の才能をとても高く評価してくれていた。 私とお姉様は少しも似ていないけれど仲良しだし、私はお姉様が大好きなの。 ある日、お姉様よりも早く私に婚約者ができた。相手はエルズバー伯爵家を継ぐ予定の嫡男ワイアット様。初めての顔あわせの時のこと。初めは好印象だったワイアット様だけれど、お姉様が途中で同席したらお姉様の顔ばかりをチラチラ見てお姉様にばかり話しかける。まるで私が見えなくなってしまったみたい。 あなたの婚約相手は私なんですけど? 不安になるのを堪えて我慢していたわ。でも、お姉様も曖昧な態度をとり続けて少しもワイアット様を注意してくださらない。 (お姉様は味方だと思っていたのに。もしかしたら敵なの? なぜワイアット様を注意してくれないの? お母様もお父様もどうして笑っているの?)  途中、タグの変更や追加の可能性があります。ファンタジーラブコメディー。 ※異世界の物語です。ゆるふわ設定。ご都合主義です。この小説独自の解釈でのファンタジー世界の生き物が出てくる場合があります。他の小説とは異なった性質をもっている場合がありますのでご了承くださいませ。

愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。

桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。 それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。 一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。 いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。 変わってしまったのは、いつだろう。 分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。 ****************************************** こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏) 7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。

婚約破棄されたので、その場から逃げたら時間が巻き戻ったので聖女はもう間違えない

aihara
恋愛
私は聖女だった…聖女だったはずだった。   「偽聖女マリア!  貴様との婚約を破棄する!!」  目の前の婚約者である第二王子からそう宣言される  あまりの急な出来事にその場から逃げた私、マリア・フリージアだったが…  なぜかいつの間にか懐かしい実家の子爵家にいた…。    婚約破棄された、聖女の力を持つ子爵令嬢はもう間違えない…

処理中です...