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6話
しおりを挟む「そんなバカな……。ほ、本当に聞いたのは昨日なのかね……?」
アランは顔を青褪めさせて聞いてくる。
私は頷いた。
「はい、全ては昨日聞きました」
「では、慰謝料を請求するというのも……」
「はい、脅迫などではなく、一年間も浮気して婚約破棄された者として当然の権利として請求しただけです」
「な、なんと言うことだ……」
アランは気絶しそうなほどによろめくが、近くにあった椅子にもたれかかる。
「まさか……。いや、そうでないと不可解な言動の辻褄が合わない……」
アランはぶつぶつと呟いていたが、「どのみちはっきりさせねばならない」と言うとしっかりと立ち直った。
すでに表情を取り繕い、襟を正している。さすがは貴族だ。
「少々お待ち頂きたい。今デビットを連れてくる」
「分かった。こちらも聞きたいことがあるからな」
アランが部屋から出ていく。
デビットはすぐに連れて来られた。
「ここだ。入れ」
「な、何ですか父上。僕はマーシャと……え?」
少し乱暴に服を引っ張られ部屋に入れられたデビットは不服そうだったが、私を見て驚きの表情になった。
「お前に聞かねばならないことがある」
「な、なんでここに……」
アランは困惑する息子を見下ろして問いかける。
「私はお前から、マリア嬢とは一年前に別れたと、円満に婚約を解消していたと聞いた。しかしお二人の話を聞くにどうやら状況は違うようだ」
「……」
「どうなんだ。真実を言え。私に嘘をつき、マリア嬢に一年間黙ってマーシャ嬢と付き合っていたのは本当か?」
「……」
デビットは俯いて黙る。
「言えぇぇっ! デビットォ!」
アランは胸ぐらを掴み、デビットを怒鳴りつける。
しかし、デビットは何も言わない。
「……そうか」
アランはデビットから手を離した。
そして何も答えないデビットに失望したかのようにため息をついた。
「ならば──デビット、お前を勘当する」
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