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2話

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「え……?」

 セシルは教室に入ってくるなりマックスを見つけ、不快そうに眉を顰めた。
 そして次に教室のおかしな空気を感じ取った。

「いいところに来たセシル! 今助けてやるからな!」
「……? 何を言っているんですか?」

 セシルは赤く頬が腫れている私と、今まさに私へ詰め寄ろうとしているマックスを見て眉を寄せる。

「コイツはセシルを虐めていたんだろう? 今まで気づいてやれなくて済まなかった! でも、もう大丈夫だ!」
「……は?」

 マックスはセシルを安心させるように笑いかける。
 しかしセシルは何を言っているのか分からないようだった。

 それは当然だ。
 だって私はセシルを虐めてなどいないのだから。
 虐められていないのに突然犯人を見つけた、と言われても困惑するだけだろう。

「最近お前が俺を避けるようになっておかしいと思ってたんだ! コイツに脅されていたんだろう?」

 それはセシルがマックスのアプローチに辟易して避けいてただけだ。

「マックス王子、私は虐められてなんかいません!」
「セシル……?」

 セシルは私に虐められているという事を否定する。
 マックスは訝しげに眉を顰め、そして何かを思いついた。

「……そうか! 脅されているんだな? エリナに脅迫されて口止めされているんだろう!」
「えっ!? 違っ──」
「言わなくていい! 全部分かってる! 今助けてやるからな!」

 セシルは否定するも、マックスは全く聞き入れる気配は無い。
 それどころか、私が脅してそう言わせていると、自分の都合のいいように勘違いまでし始めた。

「エリナ! 白状しろ! 俺は知っているんだ──昨日お前がセシルと会っていたことをな! その時にセシルを脅迫したんだろう!」

 マックスは鬼の首を取ったように自信満々にそう言った。

 しかしそれは完全な間違いだった。

 昨日セシルと会ったのは、ただ単に友人として会話していただけだ。
 セシルに助けを求められた際、私たちは気が合うことが分かり、そこから友人関係が続いているのだ。

「違います! 私は何もしていません! 私は彼女と友人なだけです!」
「そうですマックス王子! 話を聞いてください!」

 私はセシルと友人であることを告げ、マックスの冤罪を否定する。
 セシルも私を擁護してくれた。
 しかしマックスはそれが気に入らなかったのか、次の瞬間激怒した。

「エリナッ! またセシルを脅したな! お前が純粋なセシルと友人な訳がないだろう!」

 セシルが私を擁護すると、マックスは私が脅したのだと冤罪をかけてきた。
 もうマックスの言っていることは滅茶苦茶だった。

「もういい! お前が罪を犯しているのは明白だ! 婚約破棄させてもらう!」

 そしてマックスは勝手に話を切り上げると、冤罪で婚約破棄したまま教室を出ていった。
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