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20話
しおりを挟むソフィアとライトの噂は至るところで流れていたので、ライアンは聞きたくなくても耳に入って来た。
曰く、二人の仲はとてもよい。とてもロマンチックな出会い方をした。
そんな内容だ。
ライアンの中で、憎悪の炎が燃えた。
「ふざけるな! 何故だ! 私だって真実の愛だったんだ! 出会い方が! 身分が違うだけじゃないか! なぜアイツだけ幸せになっているんだ!」
ライアンは目から涙を流し天井を睨みつける。
そして爪が食い込むほどに手を固く握り込む。
「そんなことは許さないぞ……! 認めない!」
そしてライアンはその夜、家を出た。
一本のナイフを握りしめて。
向かうのはソフィアのいるウィリアムズ公爵の屋敷だ。
目には憎悪が宿り、歩く姿は尋常ならざる様子だった。
そして屋敷についた。
ライアンはナイフを持って二人いる門番に近づく。
「ん? なんだお前は」
「どけぇぇぇぇっ!!」
ライアンはナイフをぶんぶんと振り回し、門番へ切りかかる。
「なっ、何だお前は!」
しかし戦闘のプロである門番に歯が立つわけがなく、ライアンはあっさりと取り押さえられた。
「離せぇぇぇぇっ!」
ライアンはソフィアへの罵詈雑言を吐く。
だがその門番の前で吐かれた言葉は屋敷の中にいたソフィアには全く届くことは無かった。
それどころか、ソフィアはライアンが来たことすら知らなかった。
ライアンは捕まり、牢屋へと入れられた。
そして法の裁きが下された。
王族という身分ではなくなったライアンには重い罰が下された。
死刑である。
平民が貴族の殺害を試みたのだ。当然だった。
断頭台はとライアンは立たされた。
隣には同じく死刑にされるダイアナが立たされていた。
彼女はライアンから逃げた後、ウィリアムズ公爵領を越えようとしたところ、関所で捕まったためだ。
彼女は本当は貴族の殺害は試みてなかったのだが、ライアンと一緒に住んでいたことと、ダイアナが捕まっていることを知ったライアンが道連れにしようと共謀していたと供述したため、死刑にされることになった。
ギロチンの刃が落ちてくる。
ライアンは最期までその瞳に憎悪を宿していた。
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