上 下
15 / 21

15話

しおりを挟む

 それからヴァンとソフィアは頻繁に会うようになった。
 一週間に一回会っていたのが二、三日に一回になり、最終的に毎日会うようになった。

 ヴァンと過ごす時間はソフィアにとって幸せな時間だった。
 ヴァンはいつも知らない世界を教えてくれる。行ったことのない場所へと連れて行ってくれる。

 ヴァンにとってソフィアと過ごす時間は癒やしだった。
 ヴァンはある“家の事情”から、異性の友人はいなかった。
 また、ヴァンのその美貌から周囲には顔目当ての女性しか寄ってこなかったので、心から友人として扱ってくれるソフィアと一緒に過ごすことがヴァンの異性に対する苦手意識を和らげていった。

 ソフィアはヴァンを明確に異性として意識するようになり、またヴァンもソフィアも同じく異性として意識するようになった。

 二人の心の距離はどんどんと縮まっていった。

 しかし、幸せな時間は突然壊れた。

「ソフィア、縁談の話がきた」
「え……」

 ウィリアムズ公爵領にやってきたアランは重々しくソフィアに告げた。
 ソフィアはショックを受けた。

 ヴァンという心に決めた相手がすでにいたからだ。

「王家からの縁談だ。ライアンがいなくなり、王位継承権が移った第二王子を正妃として支えてほしい、とのことだ」
「そ、そんな……」
「私は反対だ。だが、あちらの第二王子がソフィアを正妃として迎え入れたい、と強く希望しているらしくてな。それに今からソフィア以外に正妃として迎え入れても大丈夫な貴族の女性がいない、という問題もあることから王家はどうしてもソフィアを正妃にしたいらしい」
「……」

 ソフィアは言葉が出なかった。
 なぜ自分なんか、と思考がぐるぐる空回る。

 奇しくも、ソフィアはライアンと同じ状況に陥っていた。
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

そんなに優しいメイドが恋しいなら、どうぞ彼女の元に行ってください。私は、弟達と幸せに暮らしますので。

木山楽斗
恋愛
アルムナ・メルスードは、レバデイン王国に暮らす公爵令嬢である。 彼女は、王国の第三王子であるスルーガと婚約していた。しかし、彼は自身に仕えているメイドに思いを寄せていた。 スルーガは、ことあるごとにメイドと比較して、アルムナを罵倒してくる。そんな日々に耐えられなくなったアルムナは、彼と婚約破棄することにした。 婚約破棄したアルムナは、義弟達の誰かと婚約することになった。新しい婚約者が見つからなかったため、身内と結ばれることになったのである。 父親の計らいで、選択権はアルムナに与えられた。こうして、アルムナは弟の内誰と婚約するか、悩むことになるのだった。 ※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。

番を辞めますさようなら

京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら… 愛されなかった番 すれ違いエンド ざまぁ ゆるゆる設定

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。

雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」 妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。 今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。 私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。

これでお仕舞い~婚約者に捨てられたので、最後のお片付けは自分でしていきます~

ゆきみ山椒
恋愛
婚約者である王子からなされた、一方的な婚約破棄宣言。 それを聞いた侯爵令嬢は、すべてを受け入れる。 戸惑う王子を置いて部屋を辞した彼女は、その足で、王宮に与えられた自室へ向かう。 たくさんの思い出が詰まったものたちを自分の手で「仕舞う」ために――。 ※この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。

「おまえを愛することはない。名目上の妻、使用人として仕えろ」と言われましたが、あなたは誰ですか!?

kieiku
恋愛
いったい何が起こっているのでしょうか。式の当日、現れた男にめちゃくちゃなことを言われました。わたくし、この男と結婚するのですか……?

あの日、さようならと言って微笑んだ彼女を僕は一生忘れることはないだろう

まるまる⭐️
恋愛
僕に向かって微笑みながら「さようなら」と告げた彼女は、そのままゆっくりと自身の体重を後ろへと移動し、バルコニーから落ちていった‥ ***** 僕と彼女は幼い頃からの婚約者だった。 僕は彼女がずっと、僕を支えるために努力してくれていたのを知っていたのに‥

処理中です...