上 下
11 / 21

11話

しおりを挟む

「自由に生きていい」

 父であるアランはそう言っていた。
 ソフィアがライアンから解放された後、ウィリアムズ公爵領に行く前にそう伝えられた。

 ガラガラと音を立てて走る馬車の中でソフィアは外の景色を見ながらため息をついた。

 自由とは何か、分からなかったからだ。

 今まで決められた人生を歩んできた。
 だから今更自由を与えられたソフィアは、それを持て余していた。

 馬車がウィリアムズ公爵領に入る。
 久しぶりに訪れた公爵領は王都にも引けを取らないぐらいに発展していた。

 ソフィアの目が少し開いた。

 今までは決して届かないと思っていた物。しかし届くと知った今、それらはキラキラと輝いて見えた。

(外に出て、歩き回ってみたい……!)

 ソフィアは強烈に心を動かされた。

 そして外の景色に目を奪われている内にソフィアは屋敷へとついた。
 早速ソフィアは「外へ出てみたい」と使用人に告げた。
 しかし否定される。

「それは出来ません。ソフィア様の体調を鑑みて、一ヶ月間は屋敷の庭より外へは出さないように、とのご当主様からいいつけられていますので」

 ソフィアはここ最近、ライアンから受けたストレスで何度も熱を出し寝込んでいた。
 そのため、アランはそのように告げたのだろう。
 ソフィアを縛るための言葉ではなく、単純にソフィアの体調を気にして言った言葉だった。

 しかしソフィアにとってアランの言いつけは邪魔な鎖でしか無かった。

 そして、ソフィアはあることを思いつく。

 それは今までなら考えなかったこと。
 言いつけを破って、外へと出かける。

 普通の子供ならとっくに経験しているはずの、親への反抗心だった。

(私は、自由になりたい……!)

 手にした自由を謳歌するため。
 今まで自分を閉じ込めていた殻を破るように。
 ソフィアは自分を縛る鎖を引きちぎり、外へと飛び出した。
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

アリシアの恋は終わったのです【完結】

ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。 その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。 そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。 反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。 案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。 ーーーーー 12話で完結します。 よろしくお願いします(´∀`)

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!

山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」 夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。

元婚約者は戻らない

基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。 人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。 カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。 そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。 見目は良いが気の強いナユリーナ。 彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。 二話完結+余談

処理中です...