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8話

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「は……?」

 マイケルは国王に言われたことが一瞬理解できず、呆然とした。
 まさかサラのしたことを肯定されるとは思っても見なかったからだ。

「ど、どういうことですか……?」

 マイケルは質問する。

「お前に近づいた女を脅し、手をあげたことが何か悪いことなのか、と聞いているんだ」

「な、何を言っているんですか!」

「お前こそ何を言っているんだ。貴族としての視点に立って考えればサラの行動は当然だ。むしろ正しいと言っていい」

 マイケルは目を剥くほど驚愕した。
 まさか国王がサラの蛮行を正しいと言うなんて思いもよらなかったからだ。

「だって、サラはララに対して脅迫と暴力を……」

 マイケルは国王の言い分が認められず、何とか反論しようとする。

「婚約者に近づく女狐を排除しようとするのは貴族として当然の行いだ。そうせずに男爵と王子に子でも出来たらどうする?国は大混乱に陥り、内乱が起きるのかもしれんのだぞ?」

「な、内乱……!?」

 マイケルは動揺した。
 そんなことを全く考えていなかったからだ。

「だからこそ、サラのとった行動は正しいのだ。国を守るため、民を守るためにな。どちらかと言えばララの方が国を危機に晒している」

「でも、ララは私を寝取ろうだなんてしていません!」

 マイケルの反論を国王は鼻で笑った。
 国王に馬鹿にされ、マイケルは顔を真っ赤にした。

「まさか婚約者のいる男性に対して近づいて、寝取ろうと思っていなかったなんて言い訳が通じるとでも?聞くところによると、サラよりも仲睦まじい様子だったそうだが?」

「……」

 国王に質問され、マイケルは言い返すことができなかった。

 そんなマイケルを見て国王はため息をつく。

「そもそも、男爵如きが公爵家の婚約者を寝取ろうとして脅迫と暴力で済むと思っているのが間違いだ。本来なら家を跡形なく潰されても文句は言えんのだぞ。公爵家に喧嘩を売るということはそういうことだ」

 マイケルは言い返すことができなかった。
 しかしそれでも譲れない信念があるとマイケルは拳を握り締める。

「そ、それでも私はサラのとった行動を認めることはできません!」

「ああ後、お前は何か勘違いしているようだが、サラはララに脅迫もしていないし、暴力も振るっていないぞ」

「え……?」

「なぜなら、サラは放課後も休み時間もずっと生徒会の仕事をしていて生徒会室から出ていないからな。──つまり、サラは冤罪を被せられただけだ」
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