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1章
26話
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貴族。
それはマリアにとってトラウマを引き起こす言葉だ。
私はマリアを落ち着かせる。
「大丈夫よマリアさん。彼女は孤児院をどうこうしないわ」
「申し訳ありません。エマ様と一緒のお方ですから大丈夫だとは分かっているんですけでど、どうしてもまだ緊張してしまって……」
「分かってるわ。ゆっくり深呼吸して」
マリアは深呼吸する。
何回か深呼吸してマリアは気分が戻ってきたのか笑顔を浮かべた。
「もう大丈夫です。ご紹介して貰えますか?」
「分かった。じゃあ紹介するわね」
自己紹介が出来るようになると自然とクレアが私の方へとやって来た。
きっと、マリアが貴族に慣れていないのを感じ取って距離を取っていたのだろう。
こういう細やかな気遣いが出来るところは本当に公爵家なんだと実感させられる。
「彼女の名前はクレア。何というか……私の上司みたいな人です」
「クレアです。エマさんと仲良くさせてもらっています」
クレアはいつもの公爵令嬢としての笑みよりも柔らかい笑みを浮かべて挨拶する。
公爵家と貴族であることは強調せずただ名前のみの紹介に務めたのは緊張させないため。そしていつもより柔らかい笑顔は敵意が無いことを示すためだろう。
そこまですると流石にマリアも完全にクレアは大丈夫な人間だと悟ったのか、緊張が解れた笑みを浮かべてクレアに挨拶をする。
「クレア様、私はマリアと申します。この孤児院で養母をしています」
「はい、よろしくお願いします」
「クレア様……いつもエマ様を良くしていただきありがとうございます」
マリアはクレアに対してお辞儀をした。
「いえいえ、こちらこそエマさんにはお世話になっていますので」
「…………本当ですよ」
「何か言いましたか?」
「いえ、何も!」
すごい速度で振り向かれたので私は慌てて否定した。
リアルにビュン!て音が鳴っていた。すごい。
マリアがふふ、と笑う。
「仲が宜しいようで安心しました。エマ様、ようやくお友達ができたのですね」
「えっ? マリアさん?」
まさかマリアから私の友達が少ない発言が出ると思っていなかった。
「友達が少ない?」
「はい、エマ様は仕事ばかりしていてお友達を作ってこられなかったので。でも、そのお陰でこの孤児院も救われたのですが」
「マ、マリアさん!?」
いきなり私の話を始めたマリアを慌てて止める。別に人に聞かせたくないような恥ずかしいことをした訳ではないのだが、過去の話をされたり褒められたりするのは恥ずかしい。
しかしクレアは面白がって私の話の続きを催促した。
「いいじゃないですか。私も聞きたいです」
「ふふ、じゃあお話させていただきますね」
マリアがとても嬉しそうに話し始める。
口を塞ぐことも出来ないので、私はクレアを恨めしく睨んだ。
「後で覚えておいてください……!」
マリアは優しく微笑みながら語り始める。
「元々はこの孤児院は別の貴族様が所有していたんですが、ご覧の通り私たちはお金になりませんので、当主様が代替わりなさった際に売り払うことになったんです。けど、エマ様はその時にこの孤児院を買い取ってくださって、その上に建物を建て直して下さったんです」
「ほう」
「それからはずっとこの孤児院を無償で維持して下さってるんです。しかもここ以外にも他の孤児院を何十カ所も維持してるそうなので、本当に頭が上がりません」
「無償でそんなに……」
クレアが驚いた顔で私のことを見る。
「…………何ですか?」
「いや、見直した」
「……手元に偶然お金があっただけです」
「それでも行動に移せるのかはまた別の話なのにエマ様はこんな風に謙遜するんです」
マリアは本当にしょうがない、といった様子で笑い、
「でも、それもエマ様の美点ですから」
と締め括った。
それはマリアにとってトラウマを引き起こす言葉だ。
私はマリアを落ち着かせる。
「大丈夫よマリアさん。彼女は孤児院をどうこうしないわ」
「申し訳ありません。エマ様と一緒のお方ですから大丈夫だとは分かっているんですけでど、どうしてもまだ緊張してしまって……」
「分かってるわ。ゆっくり深呼吸して」
マリアは深呼吸する。
何回か深呼吸してマリアは気分が戻ってきたのか笑顔を浮かべた。
「もう大丈夫です。ご紹介して貰えますか?」
「分かった。じゃあ紹介するわね」
自己紹介が出来るようになると自然とクレアが私の方へとやって来た。
きっと、マリアが貴族に慣れていないのを感じ取って距離を取っていたのだろう。
こういう細やかな気遣いが出来るところは本当に公爵家なんだと実感させられる。
「彼女の名前はクレア。何というか……私の上司みたいな人です」
「クレアです。エマさんと仲良くさせてもらっています」
クレアはいつもの公爵令嬢としての笑みよりも柔らかい笑みを浮かべて挨拶する。
公爵家と貴族であることは強調せずただ名前のみの紹介に務めたのは緊張させないため。そしていつもより柔らかい笑顔は敵意が無いことを示すためだろう。
そこまですると流石にマリアも完全にクレアは大丈夫な人間だと悟ったのか、緊張が解れた笑みを浮かべてクレアに挨拶をする。
「クレア様、私はマリアと申します。この孤児院で養母をしています」
「はい、よろしくお願いします」
「クレア様……いつもエマ様を良くしていただきありがとうございます」
マリアはクレアに対してお辞儀をした。
「いえいえ、こちらこそエマさんにはお世話になっていますので」
「…………本当ですよ」
「何か言いましたか?」
「いえ、何も!」
すごい速度で振り向かれたので私は慌てて否定した。
リアルにビュン!て音が鳴っていた。すごい。
マリアがふふ、と笑う。
「仲が宜しいようで安心しました。エマ様、ようやくお友達ができたのですね」
「えっ? マリアさん?」
まさかマリアから私の友達が少ない発言が出ると思っていなかった。
「友達が少ない?」
「はい、エマ様は仕事ばかりしていてお友達を作ってこられなかったので。でも、そのお陰でこの孤児院も救われたのですが」
「マ、マリアさん!?」
いきなり私の話を始めたマリアを慌てて止める。別に人に聞かせたくないような恥ずかしいことをした訳ではないのだが、過去の話をされたり褒められたりするのは恥ずかしい。
しかしクレアは面白がって私の話の続きを催促した。
「いいじゃないですか。私も聞きたいです」
「ふふ、じゃあお話させていただきますね」
マリアがとても嬉しそうに話し始める。
口を塞ぐことも出来ないので、私はクレアを恨めしく睨んだ。
「後で覚えておいてください……!」
マリアは優しく微笑みながら語り始める。
「元々はこの孤児院は別の貴族様が所有していたんですが、ご覧の通り私たちはお金になりませんので、当主様が代替わりなさった際に売り払うことになったんです。けど、エマ様はその時にこの孤児院を買い取ってくださって、その上に建物を建て直して下さったんです」
「ほう」
「それからはずっとこの孤児院を無償で維持して下さってるんです。しかもここ以外にも他の孤児院を何十カ所も維持してるそうなので、本当に頭が上がりません」
「無償でそんなに……」
クレアが驚いた顔で私のことを見る。
「…………何ですか?」
「いや、見直した」
「……手元に偶然お金があっただけです」
「それでも行動に移せるのかはまた別の話なのにエマ様はこんな風に謙遜するんです」
マリアは本当にしょうがない、といった様子で笑い、
「でも、それもエマ様の美点ですから」
と締め括った。
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