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1章

13話

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 そして次に私たちは食べるためのテーブルを探し始めた。
 しかし昼休みが始まってもうすでにそこそこ経っていたためか、前回同様食堂の席はほとんど埋まっていた。

「どこで食べましょうか……」

「ほとんど埋まってるな……」

 私たしは昼食を乗せたプレートを持っているのであまり歩いて探し回りたくはない。
 もうすでに室内の席は埋まってるし、あとは空いているのは外の席ぐらいしか……。
 私は周囲を見渡す。そしてちょうど空いている席を見つけて、すぐに顔を顰めた。

「クレアさん、もうあそこしか空いてないみたいです……」

「空いてる席があったのか?」

 そう言って私は指差した。
 そこはマーガレット派閥が占領しているテラス席のすぐ後ろの席だった。
 今現在マーガレットたちは昼食を食べている最中だ。
 そのすぐ後ろに座って昼食を取るのは、ちょっと躊躇ってしまう。

「やっぱりあそこは辞めますか?」

「でもあそこ以外ほとんど空いてないだろ。仕方がないが、今日はあそこで食べるしかなさそうだ」

「そうですよね……」

「行くぞ。ついてこい」

「あ、待って下さい」

 そう言ってクレアが歩き出したので、私もその後ろについていく。

「……」

 何食わぬ顔でクレアはテラス席にマーガレットの真後ろに座る。
 マーガレットは取り巻きの報告でクレアが後ろに座ったことが分かったのか、すぐに後ろを向いてクレアを睨みつけた。
 私は少しマーガレットの取り巻きと目が合ってしまった。睨まれたので愛想笑いを返して席に座る。
 すごく居心地が悪い。

「いただきます」

 そして昼食を食べ始めた。
 マーガレットはクレアを睨んでいたが、どうやら昼食時に声をかけるのはマナー違反だと思ったのか、意外にも絡まれることはなかった。

 昼食時にはお互い争い合わないという紳士協定ならぬ淑女協定が組まれているのだろう。
 クレアもそれが分かっているのか平然と昼食を食べている。
 ただしずっとマーガレットが睨んできているのが見えたため、気が気じゃなくてあんまり食べ物の味がわからなかった。

 クレアはこれを見越して自分が取り巻き達と視線が合わないようにするために、マーガレットの真後ろの席に座ったのだろう。
 おのれクレア。許さん。

 そして私たちは昼食を食べ終わるとマーガレットに絡まれないようにさっさと席を立ち移動した。
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