上 下
11 / 11

第十一話

しおりを挟む
「話しって、何をよ!」

「元とは言え、イザベルの家族。手心を加えてこれ以上は追求しないつもりでしたが」

「……ひっ!」

 それまで強気だったレジーヌが、アルノーの瞳を見てたじろぐ。

「もうあなた達にかける情など無い。覚悟しろ」

 ドスン、とアルノーがソファに腰を掛けた。
 そしてアルノーが使用人に「“あれ”を持ってきてくれ」と頼むと、数分もしないうちに紙の束がいれられた箱を持ってきた。

「あなた達からイザベルを引き離そうと色々と調べていたとき、面白いことを見つけましてね」

 アルノーはカーター達の前へ次々と紙を並べていく。

「脱税に詐欺。使用人への暴力。果ては浪費による借金のために裏社会との繋がりまで。よくここまで罪を重ねることができたものです。……まぁ、さっきのイザベルへの暴力は無かったことにしておいてあげましょうか」

 カーターとレジーヌの顔が一気に青ざめた。
 アルノーはそれを見て冷たい表情を浮かべる。

「これをどうするかはもうお分かりですね?」

 突然カーターがアルノーに縋りついて頭を下げ始めた。

「そっ、それだけは勘弁してくれ! それが公表されたら私は、私はっ!」

「そうですね。これだけ罪を重ねれば良くて終身刑、悪くて死刑でしょう」

 死刑という言葉にカーターとレジーヌに加えて、フェリシーも血相を変えた。

「わ、私嫌よ! 死刑なんて! 何も悪いことしてないもん!」

「も、申し訳ない! 今までの事は全て謝る! だから公表することだけは!」

 アルノーは必死に謝るカーターを冷たく見下ろし、少し黙った後「そうですね……」と呟いた。
 カーターは一瞬喜びの表情でパッと顔をあげた。

「いいえ、あなた達にはチャンスを用意しました。それをふいにしたのもあなた達。前髪を掴みそこねましたね」

 しかし、すぐに絶望へと染まった。

「さようなら、あなた達とはもう二度と会うことはないでしょう」

 アルノーはそこで話を打ち切り、部屋から出ていく。私たちもそれに続いて部屋を出た。

 部屋からはずっとカーター達の叫び声が聞こえていた。


★★★


 あれからすぐにアルノーはカーターたちの罪を公表した。
 当然カーター達は捕まり、裁判にかけられることとなった。
 そしてカーターとレジーヌは終身刑となった。
 最後の最後で悪あがきをしたようで、コネを使って刑をできるだけ軽くしたようだ。

 フェリシーはまだ未成年であることと、罪の大半に関与していなかったので、刑は軽く、修道院送りとなった。そこでの素行が良ければ社会に復帰することもできるそうだ。
 しかしあの性格では当分出てこれないとのことだ。

 私は今、結婚式を挙げている。

 隣のアルノーが私を見る。私はそれに笑みで返した。
 神父が誓いの言葉を読み上げる。

「あなた達二人は健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも愛を誓いますか?」

「はい」

「はい」

「それでは、誓いのキスを」

 アルノーは私に温かさを教えてくれた。
 だから今度は私が支える番だ。
 きっと私達ならどんな時でも支え合っていける。

 誓いのキスをする。

 それは温かくて、幸せで、嬉しかった。



fin


───────


このお話が気に入った方は、これからもたくさんお話を書いていくので、作者のお気に入り登録していただけると嬉しいです。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(28件)

penpen
2021.05.11 penpen
ネタバレ含む
解除
とまとさん
2021.05.11 とまとさん
ネタバレ含む
解除
おゆう
2021.05.11 おゆう
ネタバレ含む
解除

あなたにおすすめの小説

【完】伯爵令嬢なのに義母と義妹に追い出されましたが、運命の人に出会えたので幸せです

咲貴
恋愛
 伯爵令嬢のシンシアは、義母キャロリンと義妹アビゲイルに虐げられる日々を送っている。  ある日、とうとう邸から追い出されてしまうが、シンシアは再び二人の前に現れる。 「お久しぶりですね、キャロリンさん、アビゲイルさん」 「はぁぁあ⁉︎そんなとこで何してんのよシンシア⁉︎」 ※こちらの作品は『小説家になろう』にも投稿しています

溺愛を作ることはできないけれど……~自称病弱な妹に婚約者を寝取られた伯爵令嬢は、イケメン幼馴染と浮気防止の魔道具を開発する仕事に生きる~

弓はあと
恋愛
「センティア、君との婚約は破棄させてもらう。病弱な妹を苛めるような酷い女とは結婚できない」 ……病弱な妹? はて……誰の事でしょう?? 今目の前で私に婚約破棄を告げたジラーニ様は、男ふたり兄弟の次男ですし。 私に妹は、元気な義妹がひとりしかいないけれど。 そう、貴方の腕に胸を押しつけるようにして腕を絡ませているアムエッタ、ただひとりです。 ※現実世界とは違う異世界のお話です。 ※全体的に浮気がテーマの話なので、念のためR15にしています。詳細な性描写はありません。 ※設定ゆるめ、ご都合主義です。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。

婚約破棄されたので実家へ帰って編み物をしていたのですが……まさかの事件が起こりまして!? ~人生は大きく変わりました~

四季
恋愛
私ニーナは、婚約破棄されたので実家へ帰って編み物をしていたのですが……ある日のこと、まさかの事件が起こりまして!?

今夜、元婚約者の結婚式をぶち壊しに行きます

結城芙由奈 
恋愛
【今夜は元婚約者と友人のめでたい結婚式なので、盛大に祝ってあげましょう】 交際期間5年を経て、半年後にゴールインするはずだった私と彼。それなのに遠距離恋愛になった途端彼は私の友人と浮気をし、友人は妊娠。結果捨てられた私の元へ、図々しくも結婚式の招待状が届けられた。面白い…そんなに私に祝ってもらいたいのなら、盛大に祝ってやろうじゃないの。そして私は結婚式場へと向かった。 ※他サイトでも投稿中 ※苦手な短編ですがお読みいただけると幸いです

裏切者には神罰を

夜桜
恋愛
 幸せな生活は途端に終わりを告げた。  辺境伯令嬢フィリス・クラインは毒殺、暗殺、撲殺、絞殺、刺殺――あらゆる方法で婚約者の伯爵ハンスから命を狙われた。  けれど、フィリスは全てをある能力で神回避していた。  あまりの殺意に復讐を決め、ハンスを逆に地獄へ送る。

聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。

ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」  出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。  だがアーリンは考える間もなく、 「──お断りします」  と、きっぱりと告げたのだった。

屋敷のバルコニーから突き落とされて死んだはずの私、実は生きていました。犯人は伯爵。人生のドン底に突き落として社会的に抹殺します。

夜桜
恋愛
【正式タイトル】  屋敷のバルコニーから突き落とされて死んだはずの私、実は生きていました。犯人は伯爵。人生のドン底に突き落として社会的に抹殺します。  ~婚約破棄ですか? 構いません!  田舎令嬢は後に憧れの公爵様に拾われ、幸せに生きるようです~

【完結】婚約破棄された公爵令嬢、やることもないので趣味に没頭した結果

バレシエ
恋愛
サンカレア公爵令嬢オリビア・サンカレアは、恋愛小説が好きなごく普通の公爵令嬢である。 そんな彼女は学院の卒業パーティーを友人のリリアナと楽しんでいた。 そこに遅れて登場したのが彼女の婚約者で、王国の第一王子レオンハルト・フォン・グランベルである。 彼のそばにはあろうことか、婚約者のオリビアを差し置いて、王子とイチャイチャする少女がいるではないか! 「今日こそはガツンといってやりますわ!」と、心強いお供を引き連れ王子を詰めるオリビア。 やりこまれてしまいそうになりながらも、優秀な援護射撃を受け、王子をたしなめることに成功したかと思ったのもつかの間、王子は起死回生の一手を打つ! 「オリビア、お前との婚約は今日限りだ! 今、この時をもって婚約を破棄させてもらう!」 「なぁッ!! なんですってぇー!!!」 あまりの出来事に昏倒するオリビア! この事件は王国に大きな波紋を起こすことになるが、徐々に日常が回復するにつれて、オリビアは手持ち無沙汰を感じるようになる。 学園も卒業し、王妃教育も無くなってしまって、やることがなくなってしまったのだ。 そこで唯一の趣味である恋愛小説を読んで時間を潰そうとするが、なにか物足りない。 そして、ふと思いついてしまうのである。 「そうだ! わたくしも小説を書いてみようかしら!」 ここに謎の恋愛小説家オリビア~ンが爆誕した。 彼女の作品は王国全土で人気を博し、次第にオリビアを捨てた王子たちを苦しめていくのであった。  

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。