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3話
しおりを挟む「それでは、私たちは失礼します」
「あっ、おい待て!」
ジェームズが制止するも、使用人は出ていってしまった。
四人の間に沈黙が流れる。
もし、使用人の言ったことが本当なら……。
「い、いや! そんなことあるわけがない!」
「そうよ! あり得ないわ!」
「そうです! あんな無能が当主だなんてあり得るはずがない!」
今、使用人が全員出ていったという異常事態から目をそらしながら笑う。
「そうだ! 今から確認すればいいんですよ! 父上が当主がどうか。そうすれば勘違いしていた使用人も戻ってきますよ」
「そうだな! それがいい!」
ジェームズはトムの提案に頷いて、自室へと向かった。
「ここらへんに置いておいたはずだが……」
ジェームズは棚を漁る。
その棚には仕事などの書類は一切なく、酒や娯楽小説などが置いているだけだった。
サラの棚は、全て仕事の書類だらけで、娯楽などは一切置かれていない。
棚がジェームズとサラの違いを如実に現していた。
「な、無い……」
ジェームズがぽつりと呟く。
「私が当主である証も、持っていた商会の権利書も、全部消えている!」
「な、何ですって!?」
「父上! どういうことですか!」
三人がジェームズに詰め寄る。
「盗られたんだ! サラに全て!」
ジェームズはサラへと責任を擦り付ける。
長年確認していなかった自分のことは棚に上げて。
「でもどうするんですか! お金が無ければ私たちは生きれませんよ!」
「くそ! こうなったら、我が家に代々受け継がれてきた遺産を使うしか……」
ジェームズは先代から「家を揺るがすような緊急事態以外に使ってはならない」と念を押されてきた遺産に手を付けることにした。
遺産は家が長年かけて貯めてきた努力の結晶だったが、このような些細なことに使うことをジェームズは全く気にしなかった。
しかし──。
「ない! 無いぞ!」
その遺産でさえもが、全て無くなっていた。
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