上 下
1 / 3

1話

しおりを挟む

 私の名前はサラ・ウィルキンソン。伯爵令嬢だ。
 私には両親と二人の兄がいる。

 家族四人の仲はとても良かった。
 しかし四人とも、私のことを嫌っていた。

 彼らはよく外食をするのだが、私はそれに同行しない。
 なぜなら、ついていこうとするとあからさまに嫌がられるのだ。

 加えて彼らは家でパーティーをよく開く。

 しかし私は「絶対に人前に出てくるな。家の評判が下がる」と言われ参加すらさせてもらえない。

 なぜそんなにも嫌われているのかというと、私が毎日ずっと自分の部屋にこもっているからだ。
 まぁそれには理由があってそうしているのだが、四人とも知らないので、私をただの引きこもりだと思っているらしい。

 別に知らせる義務も義理もある訳ではない。

 理由を伝えたところで彼らは意固地になって、私への態度を変えることはないだろう。
 そのため私は引きこもりという無実のレッテルを貼られながらも我慢して暮らしていた。

 しかしある日のこと。

 私はいつも通り部屋で用事をこなしていた。

 すると突然、部屋の扉が開かれた。

 そして家族四人がゾロゾロと部屋へ入ってくる。

 父であるジェームズが顔をしかめた。

「相変わらず辛気臭い部屋だ」
「ええ、本当。まぁ、引きこもりの娘にはお似合いですが」

 母のドロシーがそう言うと四人はどっと笑った。
 こんな憎まれ口なので私はさらりと受け流す。

「それで、何のようですか? 用がないなら出ていってほしいのですが」

「あぁ? 用事なんてきまってるだろ?」
「んなことも分かんねぇのかよ。相変わらずバカだな、お前」

 長男のトムと次男のマイケルがバカにしたように笑いながらそう言った。

「サラ、無能なお前を家から追放するんだよ」

「……は?」

 私は何を言われたのか分からなかった。
 何故私が追放されなければならないのだろう。

「お前のような穀潰しは家に置くだけでも気分が悪くなるからな。害虫駆除だ、さっさと出ていけ」

「おっとこれは当主の命令だからな? 拒否なんかできねぇぞ?」
「オラ! さっさと出てけよこの引きこもりのクズが!」

 マイケルが脅しとして私の机を強く蹴った。

「……本当にいいんですね?」

 私はため息を吐きながら確認した。

「もちろん。お前なんかいても邪魔なだけだからな」

 ジェームズがその太った腹をさすりながら答える。

 私はそこで、完全にこの家族を見捨てることにした。

「そうですか。それでは私は失礼します」

 私は椅子から立ち上がり、颯爽と部屋から出ていった。
 四人はあっさりとしたその様子に唖然としていた。

 もしかして私が醜く「追い出さないで!」と懇願すると思ったのだろうか。

 まさか。
 そんなことをする訳がない。

 なぜなら。

 私はこの家の財産。
 当主の座。
 土地。
 商会。

 その全てを所有しているからだ。

「私を追い出すなら、覚悟しておいてくださいね?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

殿下に婚約破棄されたわたくしに、新しい婚約者を教育してほしい? 良いですよ、全く頑張りませんけれど

kieiku
恋愛
つまり月給制で、アンジュ様が嫌だと言ったらその日はそれで終了。そういうことですよね。楽な仕事だわぁ。

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました

紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。 ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。 ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。 貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

飽きたと捨てられましたので

編端みどり
恋愛
飽きたから義理の妹と婚約者をチェンジしようと結婚式の前日に言われた。 計画通りだと、ルリィは内心ほくそ笑んだ。 横暴な婚約者と、居候なのに我が物顔で振る舞う父の愛人と、わがままな妹、仕事のフリをして遊び回る父。ルリィは偽物の家族を捨てることにした。 ※7000文字前後、全5話のショートショートです。 ※2024.8.29誤字報告頂きました。訂正しました。報告不要との事ですので承認はしていませんが、本当に助かりました。ありがとうございます。

6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった

白雲八鈴
恋愛
 私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。  もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。  ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。 番外編 謎の少女強襲編  彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。  私が成した事への清算に行きましょう。 炎国への旅路編  望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。  え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー! *本編は完結済みです。 *誤字脱字は程々にあります。 *なろう様にも投稿させていただいております。

私が公爵の本当の娘ではないことを知った婚約者は、騙されたと激怒し婚約破棄を告げました。

Mayoi
恋愛
ウェスリーは婚約者のオリビアの出自を調べ、公爵の実の娘ではないことを知った。 そのようなことは婚約前に伝えられておらず、騙されたと激怒しオリビアに婚約破棄を告げた。 二人の婚約は大公が認めたものであり、一方的に非難し婚約破棄したウェスリーが無事でいられるはずがない。 自分の正しさを信じて疑わないウェスリーは自滅の道を歩む。

病の婚約者に、聖女の妹が寄り添う事になり…私は、もう要らないと捨てられてしまいました。

coco
恋愛
病の婚約者を、献身的に看病していた私。 しかし、彼の身体がそうなったのは、私のせいだとされてしまう。 そして彼には、聖女である私の妹が寄り添う事になり…?

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

処理中です...