9 / 31
9話
しおりを挟む「今日の仕事もこれで終わりだ。お疲れ様」
「ありがとうございます。ルイス王子」
私は今日も生徒会の仕事を手伝っていた。
もちろん、今日もロビンは来ていない。
私が帰ろうと椅子から立ち上がったところで、ルイス王子に声をかけられた。
「大切な話がある」
「何でしょうか」
ルイス王子から初めて大切な話、という言葉が出てきて、私は思わず姿勢を正した。
「君を側近候補に推薦させて欲しいんだ」
「え……?」
ルイス王子の言葉は信じられないものだった。
私は驚愕した。
ルイス王子の側近に、私が?
これまでの歴史の中で王子に対して女性の側近がついたことは一度もない。
それだけに、私を側近に推薦するという言葉は衝撃だった。
「わ、私がルイス王子の側近ですか?」
「ああ。メアリーには今まで生徒会の仕事を手伝ってもらっていたのに報酬を用意できなくて申し訳ない。もっと早く側近にするべきだったね」
ルイス王子に謝罪されて私は恐縮する。
「そんな。顔を上げてください。でも、本当に私が側近候補だなんて、いいんですか?」
「もちろん。君の仕事の能力はとても優秀だし、それに人柄もとても良い。だから嫌でなければ側近になって欲しいんだ」
私は嬉しかった。
今までロビンは私がどれだけ尽しても褒めることもしないし、報酬も用意しなかった。
ルイスが用意してくれた側近候補という報酬はとても素晴らしいものだった。
もし側近になれば貴族として大きな権力を持つことができる。それは公爵家よりもだ。
ロビンと婚約を破棄した今、側近という地位はとても魅力的な話だった。
個人的にルイス王子は人として好感が持てるし、側近として働いてみたいと思う。
この話は断る理由がない。
「ありがとうございます」
そして私は側近の話を承諾して、生徒会室を後にした。
しかし──
「待て! メアリー!」
私が廊下を歩いていると、ロビンが私を引き止めた。
背後に数人貴族を連れて。
107
お気に入りに追加
5,901
あなたにおすすめの小説
浮気くらいで騒ぐなとおっしゃるなら、そのとおり従ってあげましょう。
Hibah
恋愛
私の夫エルキュールは、王位継承権がある王子ではないものの、その勇敢さと知性で知られた高貴な男性でした。貴族社会では珍しいことに、私たちは婚約の段階で互いに恋に落ち、幸せな結婚生活へと進みました。しかし、ある日を境に、夫は私以外の女性を部屋に連れ込むようになります。そして「男なら誰でもやっている」と、浮気を肯定し、開き直ってしまいます。私は夫のその態度に心から苦しみました。夫を愛していないわけではなく、愛し続けているからこそ、辛いのです。しかし、夫は変わってしまいました。もうどうしようもないので、私も変わることにします。
婚約者が私の妹と結婚したいと言い出したら、両親が快く応じた話
しがついつか
恋愛
「リーゼ、僕たちの婚約を解消しよう。僕はリーゼではなく、アルマを愛しているんだ」
「お姉様、ごめんなさい。でも私――私達は愛し合っているの」
父親達が友人であったため婚約を結んだリーゼ・マイヤーとダニエル・ミュラー。
ある日ダニエルに呼び出されたリーゼは、彼の口から婚約の解消と、彼女の妹のアルマと婚約を結び直すことを告げられた。
婚約者の交代は双方の両親から既に了承を得ているという。
両親も妹の味方なのだと暗い気持ちになったリーゼだったが…。
優しく微笑んでくれる婚約者を手放した後悔
しゃーりん
恋愛
エルネストは12歳の時、2歳年下のオリビアと婚約した。
彼女は大人しく、エルネストの話をニコニコと聞いて相槌をうってくれる優しい子だった。
そんな彼女との穏やかな時間が好きだった。
なのに、学園に入ってからの俺は周りに影響されてしまったり、令嬢と親しくなってしまった。
その令嬢と結婚するためにオリビアとの婚約を解消してしまったことを後悔する男のお話です。
初恋の君と再婚したい?お好きになさって下さいな
藍田ひびき
恋愛
「マルレーネ。離縁して欲しい」
結婚三年目にして突然、夫であるテオバルト・クランベック伯爵からそう告げられたマルレーネ。
テオバルトにはずっと想い続けている初恋の君がいた。ようやく初恋の女性と再会できた夫は、彼女と再婚したいと述べる。
身勝手な言い分に呆れつつも、マルレーネは離縁を受け入れるが……?
※ なろうにも投稿しています。
【完結】義姉の言いなりとなる貴方など要りません
かずき りり
恋愛
今日も約束を反故される。
……約束の時間を過ぎてから。
侍女の怒りに私の怒りが収まる日々を過ごしている。
貴族の結婚なんて、所詮は政略で。
家同士を繋げる、ただの契約結婚に過ぎない。
なのに……
何もかも義姉優先。
挙句、式や私の部屋も義姉の言いなりで、義姉の望むまま。
挙句の果て、侯爵家なのだから。
そっちは子爵家なのだからと見下される始末。
そんな相手に信用や信頼が生まれるわけもなく、ただ先行きに不安しかないのだけれど……。
更に、バージンロードを義姉に歩かせろだ!?
流石にそこはお断りしますけど!?
もう、付き合いきれない。
けれど、婚約白紙を今更出来ない……
なら、新たに契約を結びましょうか。
義理や人情がないのであれば、こちらは情けをかけません。
-----------------------
※こちらの作品はカクヨムでも掲載しております。
(完)妹が全てを奪う時、私は声を失った。
青空一夏
恋愛
継母は私(エイヴリー・オマリ伯爵令嬢)から母親を奪い(私の実の母は父と継母の浮気を苦にして病気になり亡くなった)
妹は私から父親の愛を奪い、婚約者も奪った。
そればかりか、妹は私が描いた絵さえも自分が描いたと言い張った。
その絵は国王陛下に評価され、賞をいただいたものだった。
私は嘘つきよばわりされ、ショックのあまり声を失った。
誰か助けて・・・・・・そこへ私の初恋の人が現れて・・・・・・
【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。
10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。
婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。
その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。
それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー?
【作者よりみなさまへ】
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる