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3話

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「今、なんて……」

「ですから、私は半年前から先日まで、留学していたんです。聞いていませんでしたか?」

「そ、そんな……屋敷に引き篭もってたはずじゃ……!」

 レイは信じられないような表情でそう呟き、慌てて口をつぐむが、もう遅い。

 周囲の生徒も今のレイの言葉を聞いており、真実に気づいたようだ。

 レイの言っていたことは、全くの嘘であることを。

 私が引き篭もっていたなら、どちらにせよ虐めることなんて出来ないのだから。

 つまり、現在レイは私が無実であることを知っていながら、私に冤罪を着せていることになる。

 レイが私を陥れようとしていることは確定した。

 私はにっこりと笑顔でレイに質問する。

「確か、レイ様は私がその男爵令嬢のナタリーさんを虐めた、と仰っていましたよね?」

「い、いや──」

「えっと、先日まで留学していたのに、どうやってその方を虐めるのですか?」

 私は首を傾げる。
 そして何かを思い出すかのように、顎に手を当てた。

「そう言えば、レイ様は、私がナタリーさんを虐めた証拠も証言もあると言っていましたね。誰がどんな証言をして、どんな証拠があったのか、今から教えていただけませんか?」

 私はレイの逃げ道を塞いでいく。

 ついでに、レイに加担した人物も逃がすつもりは無いので、尋ねておく。

「言えない、なんてことはありませんよね? だってさっきあんなに自信満々に仰っていたんですから」

 レイが目に見えて焦り始めた。
 ナタリーもだ。

 今更自分の失策に気づいたらしい。

 ナタリーはレイの服を不安げに握った。
 愛する人に助けを求めて。
 レイもナタリーを守るように庇った。

 それを何も知らずに見ていたら、美しい愛だと思うのかも知れない。

 だけど、自分勝手な都合で私を陥れ、罪を被せようとしていたのだ。

 絶対に許したりは、しない。

 絶対に逃したりも、しない。

「どうしたんですか? 教えて下さい。あるんですよね、証言と証拠が。そう仰っていたじゃないですか」

 レイは苦い表情になりながら私を睨む。

 そして次の瞬間、とんでもない事を言い始めた。

「デ、デタラメだ! お前の話は全部嘘だ! 巧妙な偽装がされているんだ!」
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