私をこき使って「役立たず！」と理不尽に国を追放した王子に馬鹿にした《聖女》の力で復讐したいと思います。

4話

　俺が執政を始めて一ヶ月が過ぎた頃、城内は混乱に包まれていた。

「クロード様！　Bランクモンスターに加えて、大量のAランクモンスターが見かけられたとの報告が入りました！　このままではスタンピートが起きる可能性があります」

「なっ！　Aランクモンスターだと？！　数十年に一匹出るかどうかじゃ無かったのか？！」

　Aランクモンスターは数十人の手練の冒険者が協力してやっと倒せるレベルだ。
　そんなモンスターが大量に出るなんて普通あり得ない。

「やはり聖女様を追放したから……」

　部下の一人が不安そうに呟く。
　するとその考えはどんどんと伝染していった。

「黙れ！　Aランクモンスターには軍と冒険者で協力して対応しろ！」

　ドン！　と机を叩きつけ、周囲を黙らせる。
　部屋は静まり返り、指示を伝えた文官は部屋から出ていく。

　そしてようやく一息をつけたと思った頃、また文官が入ってきた。

「報告です！　医療施設で怪我人が溢れかえり、キャパオーバーしているとのことです！　国内からは聖女を追放したことが原因ではないかと噂が出ています」

「なんだと？！」

　とんでもない報告に、俺は歯ぎしりをした。
　なんでこんな報告が次々とやってくるんだ……！

「外から治癒魔法を使える人材を雇え！　後はそこら辺の奴が決めろ！　俺はもう休むぞ！」

　椅子から立ち上がり、自室に戻ろうとすると文官の一人が俺を引き止めた。

「で、ですがまだ決めてもらわねばならないことが……」

「黙れ！　俺はずっと働いているんだ！　少しくらい休ませろ！」

　尚も引き留めようとする文官を無視して出ていこうとすると、後ろから誰かが呟く声が聞こえた。

「働いているって、指示出してるだけだろ……」

「実際に仕事してるのは俺達のほうじゃないか……」

「俺達なんか寝る暇もないんだぞ……」

「っ！　誰だ今言ったのは！」

　後を振り返って怒鳴る。
　しかし誰も答えるものはいない。

　俺は完全にナメられているのを理解した。
　堪らず俺は部屋を飛び出す。
　廊下を歩きながら、誰のせいでこうなったのかを考えた。

「アイツだ。こうなったのも、全部あの聖女のせいだ……！　絶対に許さない！　復讐してやる……！」