上 下
2 / 11

2話

しおりを挟む
「復讐するとは言ったものの」

 私は辺りを見渡す。
 あるのは草原だけだ。

「これじゃどうしようも無いですね」

 国に入るのは禁止されているし、復讐しようにもあの王子に接触できなければ話が始まらない。

「それに、お腹も空きました」

 いつも忙しく働いていたせいで、私はろくにご飯を食べていなかった。

 取り敢えず、食料を調達することにしよう。

 そう決めた私は、早速“狩り”へと出かけることにした。


★★★


 俺、クロード・ベルトの気分は良かった。
 というのも、昨日この国の無駄なコストを減らすことが出来たからだ。

「クロード様、本当に良かったのでしょうか……?」

 王宮の執務室の椅子に座っていた俺に、大臣が心配そうに質問した。

「大臣、何の話だ?」

「聖女、アメリア・ガーデンのことです」

 アメリアの名前が出てきたことで、俺の機嫌は一気に下がった。

「そいつの話はするな。聞くだけで吐き気がする」

「聖女が祈りをやめてしまえば、この国に災厄が訪れるとの言い伝えがあります」

「ふっ、お前もそんな迷信を信じているのか? そんなばかげた話、真実な訳ないだろう。今までの聖女が自分の私利私欲を貪るために作り上げたホラ話に決まっている」

「で、ですが……、国王様は何と仰られているのですか?」

 大臣の問いかけに、俺は心の中で舌打ちをした。

(どいつもこいつも父上の話ばかり、そんなに俺の能力が心配か?)

 俺は現在、一時的に執政を任されていた。
 先日、国王である父上が病で倒れたからだ。

 俺はこれを執政能力を示すチャンスだと感じた。
 ここで俺の有用さを示せば、父上も俺に王権を譲るかもしれない。

 だから俺は頑張ったのに。

 こいつらは何度も父上の話をする。

 父上が気づけなかった聖女という無駄を排除したことで、俺の能力は父上を超えていると理解出来るはずなのに。

「父上は俺に全てを任せたんだ。黙って俺に従っていろ」

「はい、分かりました」

 大臣は何か思うところがありそうだったが黙った。
 ちょうどその時執務室に衛兵が入ってきた。

「報告です。Bランクモンスターである、〈ホワイトグリフォン〉が出現しました」

「何? Bランクモンスター?」

 Bランクモンスターなぞ、数年に一度しか出現しないのに、珍しいこともあるな。

「軍の者を向かわせて討伐させろ」

「はい、了解しました」

 衛兵が去っていく。
 俺はこの時、これを何とも感じていなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「おまえを愛している」と言い続けていたはずの夫を略奪された途端、バツイチ子持ちの新国王から「とりあえず結婚しようか?」と結婚請求された件

ぽんた
恋愛
「わからないかしら? フィリップは、もうわたしのもの。わたしが彼の妻になるの。つまり、あなたから彼をいただいたわけ。だから、あなたはもう必要なくなったの。王子妃でなくなったということよ」  その日、「おまえを愛している」と言い続けていた夫を略奪した略奪レディからそう宣言された。  そして、わたしは負け犬となったはずだった。  しかし、「とりあえず、おれと結婚しないか?」とバツイチの新国王にプロポーズされてしまった。 夫を略奪され、負け犬認定されて王宮から追い出されたたった数日の後に。 ああ、浮気者のクズな夫からやっと解放され、自由気ままな生活を送るつもりだったのに……。 今度は王妃に?  有能な夫だけでなく、尊い息子までついてきた。 ※ハッピーエンド。微ざまぁあり。タイトルそのままです。ゆるゆる設定はご容赦願います。

本物の恋、見つけましたⅡ ~今の私は地味だけど素敵な彼に夢中です~

日之影ソラ
恋愛
本物の恋を見つけたエミリアは、ゆっくり時間をかけユートと心を通わていく。 そうして念願が叶い、ユートと相思相愛になることが出来た。 ユートからプロポーズされ浮かれるエミリアだったが、二人にはまだまだ超えなくてはならない壁がたくさんある。 身分の違い、生きてきた環境の違い、価値観の違い。 様々な違いを抱えながら、一歩ずつ幸せに向かって前進していく。 何があっても関係ありません! 私とユートの恋は本物だってことを証明してみせます! 『本物の恋、見つけました』の続編です。 二章から読んでも楽しめるようになっています。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています

如月ぐるぐる
ファンタジー
公爵令嬢フランチェスカは、誕生日に婚約破棄された。 「王太子様、理由をお聞かせくださいませ」 理由はフランチェスカの先見(さきみ)の力だった。 どうやら王太子は先見の力を『魔の物』と契約したからだと思っている。 何とか信用を取り戻そうとするも、なんと王太子はフランチェスカの処刑を決定する。 両親にその報を受け、その日のうちに国を脱出する事になってしまった。 しかし当てもなく国を出たため、何をするかも決まっていない。 「丁度いいですわね、冒険者になる事としましょう」

【完結】聖女が世界を呪う時

リオール
恋愛
【聖女が世界を呪う時】 国にいいように使われている聖女が、突如いわれなき罪で処刑を言い渡される その時聖女は終わりを与える神に感謝し、自分に冷たい世界を呪う ※約一万文字のショートショートです ※他サイトでも掲載中

憧れの先輩がスライムで洗脳されていたので、「私も」スライムチンポで分からせる話

ドライパイン
大衆娯楽
日々のパトロールに励む女性警察官、山岸日菜子。彼女には憧れの先輩がいた。頼りになる、ちょっぴり年上の枝川由季巡査長。仕事やプライベートでも仲良く過ごす彼女たちだったが。 その関係が塗りつぶされていたのは、いつからだったのだろうか。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

【完結】何度時(とき)が戻っても、私を殺し続けた家族へ贈る言葉「みんな死んでください」

リオール
恋愛
「リリア、お前は要らない子だ」 「リリア、可愛いミリスの為に死んでくれ」 「リリア、お前が死んでも誰も悲しまないさ」  リリア  リリア  リリア  何度も名前を呼ばれた。  何度呼ばれても、けして目が合うことは無かった。  何度話しかけられても、彼らが見つめる視線の先はただ一人。  血の繋がらない、義理の妹ミリス。  父も母も兄も弟も。  誰も彼もが彼女を愛した。  実の娘である、妹である私ではなく。  真っ赤な他人のミリスを。  そして私は彼女の身代わりに死ぬのだ。  何度も何度も何度だって。苦しめられて殺されて。  そして、何度死んでも過去に戻る。繰り返される苦しみ、死の恐怖。私はけしてそこから逃れられない。  だけど、もういい、と思うの。  どうせ繰り返すならば、同じように生きなくて良いと思うの。  どうして貴方達だけ好き勝手生きてるの? どうして幸せになることが許されるの?  そんなこと、許さない。私が許さない。  もう何度目か数える事もしなかった時間の戻りを経て──私はようやく家族に告げる事が出来た。  最初で最後の贈り物。私から贈る、大切な言葉。 「お父様、お母様、兄弟にミリス」  みんなみんな 「死んでください」  どうぞ受け取ってくださいませ。 ※ダークシリアス基本に途中明るかったりもします ※他サイトにも掲載してます

処理中です...