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5話
しおりを挟む時刻は昼になった。
ロバートたちはあの後は特に何もすることは無く、私は教室から離れることはなかったので被害は拡大していない。
恐らく教科書を引き裂き、ペンダントを壊したことで一時の怒りは収まったのだろう。
昼までには学園中に今朝の出来事は広まったようで、周囲の生徒は私を遠巻きに見ていて何か干渉しようとはしてこなくなった。
王族や公爵家の問題に手を突っ込みたくないのだろう。
ロバートたち三人が私へしたことを見ているならばそれが懸命だ。
冤罪に私刑。
もし彼らの機嫌を損なったら何をされるか分からない。
私は今朝ペンダントを壊された後、別に家へと避難しても構わなかった。
しかしロバートたちに反撃するための材料を整えるために学園にまだ残っていた。
「さて、お昼の時間だけれど……」
できればロバートたち三人と遭遇するのを避けるために教室から出て行きたくはないが、私はいつも学園の食堂で昼食をとるため、お弁当を持ってきていないのだ。
そのため食堂へと行かねばならないのだが、懸念点が一つある。
ロバートたち三人の内の一人、ドミニクも同じく食堂を利用しているのだ。
朝から私と離れようとしない三人の内の一人が私の不安を察したかのように答えた。
「大丈夫ですアリス様。相手は一人です。もしものことがあっても私たちがついているので人数で有利です」
「そうね……」
ドミニクは武術は不得手だと聞く。
加えて私たちは四人もいるので、ドミニクがわざわざしかけてくることも無いだろう。
「では、行きましょうか」
私たちは食堂へと向かうことにした。
四人で教室を出て廊下を歩く。
そして食堂へとついた時──
「おっと、待ってください」
ドミニクが、食堂の前で私たちを待ち伏せしていた。
ドミニクの顔を見て、私の中でぐつぐつと煮えたぎるような怒りが生まれた。
ペンダントを壊された恨みだ。
私は不機嫌なことを隠しもせずに尋ねる。
「……何でしょうか」
「貴女がこの学園の施設を使用することは禁止されています」
「はい?」
「おや、理解できませんでしたか。ですから、貴女は食堂を利用出来ないんですよ」
ドミニクは私を小馬鹿にしたように笑う。
それに対して三人の内の一人が激怒した。
「それはおかしいです! なんの権限があって──」
「王族命令だ」
「ロバート王子……」
途中で声が挟まれる。
声の方向を見るとロバートが立っていた。
ロバートは腕を組んで尊大に私たちを見下ろしている。
「俺の命令だ。お前はこの学園の施設を利用することを禁止する」
「王族の権力を無闇矢鱈に振りかざす、と?」
「お前のような罪人に対する懲罰だ」
「おうおう、なんだ。罪人がいるのか? それならオレがとっ捕まえてやらねぇとなぁ?」
今度はレオが出てきた。
レオは肩に鞘に入った剣を担いでいた。
学園に武器は持ち込み禁止のはずなので、刃のない模造剣であるはずだが、あれで殴られれば大怪我は免れないだろう。
そして女性相手にそんな暴力を躊躇しない人物であることも今朝の段階で分かっている。
ドミニク、ロバート、レオは私たちを囲むように立っていた。
そしてじりじりと、距離を詰め始めた。
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