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それは、ある一言から始まった。
「ナタリー、君は僕より目立ち過ぎる。男である僕より目立たないでくれないか」
私が十歳の頃、伯爵家のノーラン・パーカーと婚約してからすこし経った時に、はノーラン私に向かってこう言った。
確かに、今まで教えられてきたことにも「婦人として目立ちすぎない」こと、とあった。
だから私は自分の見た目を地味にした。
金髪は茶色に染め、化粧は落とし、前髪を伸ばし、猫背気味にした。
そのかいもあって、私はとても地味になった。
しかし、まだ満足しなかったノーランは次にこう言った。
「男の僕よりも発言するのをやめてくれ」
確かに私はノーランよりも発言することが多かった。
貴族の淑女はおしとやかでなければならない、とも教えられていたので、私は従うことにした。
徹底的に口を閉じた。
余計なことを喋らないように、質問されたこと以外には答えないようにした。
私はそうしてノーランの希望通りに自分をかえていった。
全てはノーランの為だった。
しかし、その努力は裏切られた。
「ナタリー・ウィルソン。君との婚約は今日で破棄する」
学園の庭園へと呼び出された私は、到着するやいないや婚約者のノーランからそう切り出された。
ノーランの隣には女性が座っていた。
「僕はより相応しい女性と婚約することにしたよ」
そう言ってノーランは隣に座っている女性を紹介した。
しかし、私は何も喋らずうつむいていた。
「彼女は子爵家のサンドラ・ワトソン。どうだい、君と違って美しいだろう? それに、彼女と話しているととても楽しいんだよ」
「初めまして、ノーラン様の婚約者のサンドラです!」
サンドラが元気よく私へ挨拶する。
確かにサンドラの顔は整っていた。
“今の私”とは大違いだ。
なおも私は黙って俯いている。
「君みたいに地味でブサイクで、無口で面白みもない女性は僕とは釣り合わないからね」
ノーランが見下したような笑みで私を馬鹿にする。
しかし、この時私は全く別のことを考えていた。
(婚約破棄ってことは、もう地味なメイクも、無理に黙らなくてもいいってこと……!?)
そう、私は歓喜に打ち震えていたのだ。
「ナタリー、君は僕より目立ち過ぎる。男である僕より目立たないでくれないか」
私が十歳の頃、伯爵家のノーラン・パーカーと婚約してからすこし経った時に、はノーラン私に向かってこう言った。
確かに、今まで教えられてきたことにも「婦人として目立ちすぎない」こと、とあった。
だから私は自分の見た目を地味にした。
金髪は茶色に染め、化粧は落とし、前髪を伸ばし、猫背気味にした。
そのかいもあって、私はとても地味になった。
しかし、まだ満足しなかったノーランは次にこう言った。
「男の僕よりも発言するのをやめてくれ」
確かに私はノーランよりも発言することが多かった。
貴族の淑女はおしとやかでなければならない、とも教えられていたので、私は従うことにした。
徹底的に口を閉じた。
余計なことを喋らないように、質問されたこと以外には答えないようにした。
私はそうしてノーランの希望通りに自分をかえていった。
全てはノーランの為だった。
しかし、その努力は裏切られた。
「ナタリー・ウィルソン。君との婚約は今日で破棄する」
学園の庭園へと呼び出された私は、到着するやいないや婚約者のノーランからそう切り出された。
ノーランの隣には女性が座っていた。
「僕はより相応しい女性と婚約することにしたよ」
そう言ってノーランは隣に座っている女性を紹介した。
しかし、私は何も喋らずうつむいていた。
「彼女は子爵家のサンドラ・ワトソン。どうだい、君と違って美しいだろう? それに、彼女と話しているととても楽しいんだよ」
「初めまして、ノーラン様の婚約者のサンドラです!」
サンドラが元気よく私へ挨拶する。
確かにサンドラの顔は整っていた。
“今の私”とは大違いだ。
なおも私は黙って俯いている。
「君みたいに地味でブサイクで、無口で面白みもない女性は僕とは釣り合わないからね」
ノーランが見下したような笑みで私を馬鹿にする。
しかし、この時私は全く別のことを考えていた。
(婚約破棄ってことは、もう地味なメイクも、無理に黙らなくてもいいってこと……!?)
そう、私は歓喜に打ち震えていたのだ。
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