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サミエルとの婚約破棄の経緯を両親に話すと、両親はすぐに婚約破棄について同意してくれた。
サミエルの家への抗議の手紙と、婚約破棄の手紙も同時に書き、その日にサミエルの家に送ることとなった。
そして翌日。
「おい」
振り返るとそこにサミエルがいた。
昨日婚約破棄したくせによく私に話しかけることができるな、と考えながら返事をする。
「何でしょうか」
「これ。やっとけ」
サミエルは返事をせずに私に紙を差し出してきた。
「……これはなんでしょうか」
「は? 生徒会の仕事に決まってるだろ」
サミエルはまるで私がこの生徒会の仕事をするのが当たり前だと思っているかのような表情をしていた。
私は少し苛立ちながらもサミエルに質問する。
「何故私が──」
「黙れ。口答えするな。早く受け取れ」
サミエルは私の言葉を遮り一方的に紙を押し付けてきた。
「……」
私はその紙を見下ろし……サミエルへ突き返した。
「お断りします」
「……は?」
「ですから、お断しますと言ったんです。これはあなたが自分でして下さい」
私が冷たく言い放つとサミエルは顔を真っ赤にして怒った。
「お前っ! どういうつもりだ!」
「あなたこそどういうつもりなんですか? 私がなぜ生徒会の仕事をしなければならないんです? これは貴方の仕事ですよね?」
「今まではお前がしてただろ!」
「はぁ……それは貴方が婚約者だったから、私の評判が落ちないように手伝っていただけです。ですから、婚約者でない貴方の仕事を手伝う義務は私にはありません」
「ま、まだ正式には婚約破棄してない! お前は婚約者だろ!」
「知りませんよ。それが何なんですか。もしまだ婚約者だったとして、何故貴方の仕事を手伝わなければならないんですか? もう一度聞きますけど、私に義務があるんですか?」
私は呆れてため息を吐いた。
「そもそも、生徒会の仕事は部外者に見せてはいけないはずですが? 婚約者でも無い私にこれ以上情報を漏らそうとするなら、生徒会長に報告させていただきます」
「っ! お前、俺を脅すつもりか……っ!」
別に脅してはいない。
至極当然のことをしていると思うのだが。
私はあることを思い出して、付け加える。
「ああ、それと請け負っていた貴方の仕事も全て送らせて頂きます。これ以上手元に置いておきたくないので」
パン! と乾いた音が響いた。
ついに我慢しきれなくなったサミエルが私の頬を叩いたのだ。
サミエルは荒く呼吸をしながら私を睨んでいる。
「……これで気が済みましたか?」
サミエルから返事は返ってこない。
叩いたのは衝動的なもので、本当は私の方が正しいと分かっているからだろう。
「それではさようなら」
私はサミエルに対して別れの挨拶をしてその場を後にした。
サミエルの家への抗議の手紙と、婚約破棄の手紙も同時に書き、その日にサミエルの家に送ることとなった。
そして翌日。
「おい」
振り返るとそこにサミエルがいた。
昨日婚約破棄したくせによく私に話しかけることができるな、と考えながら返事をする。
「何でしょうか」
「これ。やっとけ」
サミエルは返事をせずに私に紙を差し出してきた。
「……これはなんでしょうか」
「は? 生徒会の仕事に決まってるだろ」
サミエルはまるで私がこの生徒会の仕事をするのが当たり前だと思っているかのような表情をしていた。
私は少し苛立ちながらもサミエルに質問する。
「何故私が──」
「黙れ。口答えするな。早く受け取れ」
サミエルは私の言葉を遮り一方的に紙を押し付けてきた。
「……」
私はその紙を見下ろし……サミエルへ突き返した。
「お断りします」
「……は?」
「ですから、お断しますと言ったんです。これはあなたが自分でして下さい」
私が冷たく言い放つとサミエルは顔を真っ赤にして怒った。
「お前っ! どういうつもりだ!」
「あなたこそどういうつもりなんですか? 私がなぜ生徒会の仕事をしなければならないんです? これは貴方の仕事ですよね?」
「今まではお前がしてただろ!」
「はぁ……それは貴方が婚約者だったから、私の評判が落ちないように手伝っていただけです。ですから、婚約者でない貴方の仕事を手伝う義務は私にはありません」
「ま、まだ正式には婚約破棄してない! お前は婚約者だろ!」
「知りませんよ。それが何なんですか。もしまだ婚約者だったとして、何故貴方の仕事を手伝わなければならないんですか? もう一度聞きますけど、私に義務があるんですか?」
私は呆れてため息を吐いた。
「そもそも、生徒会の仕事は部外者に見せてはいけないはずですが? 婚約者でも無い私にこれ以上情報を漏らそうとするなら、生徒会長に報告させていただきます」
「っ! お前、俺を脅すつもりか……っ!」
別に脅してはいない。
至極当然のことをしていると思うのだが。
私はあることを思い出して、付け加える。
「ああ、それと請け負っていた貴方の仕事も全て送らせて頂きます。これ以上手元に置いておきたくないので」
パン! と乾いた音が響いた。
ついに我慢しきれなくなったサミエルが私の頬を叩いたのだ。
サミエルは荒く呼吸をしながら私を睨んでいる。
「……これで気が済みましたか?」
サミエルから返事は返ってこない。
叩いたのは衝動的なもので、本当は私の方が正しいと分かっているからだろう。
「それではさようなら」
私はサミエルに対して別れの挨拶をしてその場を後にした。
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